迎撃に勤しむ者・中編
メーサ視点
シャドーウルフの一匹が怪我して帰って来たの。
スーさんが回復薬で必死に治療しているから平気だと思うけど、メーサは怒りプンプンなの。
大切なマしゅターのダンジョンで初めて出た怪我人なの。
「あ~、メーサお嬢おら結構怪我してるんですが……」
後ろからゴンラがボソッと言ってきたけど無視なの無視。
ゴンラは怪我してるのが当たり前だから気にしたら負けなの。
メーサが無視したらゴンラがガックリと肩を落としたの、それをスラりん達がプルプル体を震わせて必死に慰めているの。
うん、いつもの光景なの!
そんな光景を見ていると大好きなマしゅターから通話が入って来たの。
「メーサそっちの様子はどう?」
「大丈夫なの、メーサ達は準備万端なの!」
私の答えに、密林で隠れていた眷族の蛇達も声を上げて同意するの。
今朝、お腹一杯カウフロッグを食べたからみんな元気一杯なの。特に昨日進化したジャジャなんかは尻尾をビッタンビッタン振って気合を表してるの。
「そいつは良かった。
でもごめん少しだけ作戦変えるよ」
「む?」
事前に聞いていた作戦だと、最初に来た侵入者の時みたいにスラりんを囮にして敵を分断してから各個撃破するはずだったの。
「多分だけど、今回の侵入者が相手だとスラりんだけじゃ分断できない」
今まで見た様子だと侵入者達はかなり慎重らしいの。
「だから今回はシャドーウルフが持って帰って来た彼等の剣を囮に使う」
その言葉にメーサはシャドーウルフが持って帰って来た剣を見るの。
その剣は、彼等が傷つきながらもそれでも必死になって戦力を削った大事な証なの。
「多分慎重な彼らでも剣が見えたら、罠だとわかっていても取り返そうとするはずだ。
その気持ちを利用する」
そう言ってマしゅターは新しい作戦を伝えたの。
スラりん達を一定ごとに落として集中力を削ぎ、注意を逸らす。
剣まである程度近づいたら、木の上に隠れていたホッピングスネーク達が一斉に飛びかかる。
剣の視角にウットカゲを隠しておき奇襲をさせる。
混乱が生じたすきに一気にみんなで仕留める。
大まかに言ってこんな作戦だったの。
「正直いきなりの作戦変更で多分今言ったみたいに上手く事が運ぶとは思えない。
だから上手く作戦がいかなかった場合、すぐにメーサがフォローに入ってくれ」
「わかったの。
メーサ、いっぱいいっぱい頑張るからマしゅターは安心して見てて欲しいの」
ここはメーサの腕の見せ所なの。
頑張って活躍して、あとでいっぱいいっぱいマしゅターの褒めながら頭撫でてもらうの!!
そんな事を思っていたら、突然メーサとマしゅターの通話にスーさんが混じって来たの。
「主殿、申し訳ないがその作戦に拙者らも加えてもらえないでござろうか」
頭を下げながらスーさんが懸命にマしゅターにお願いするの。
「先程の戦闘で不覚にも我が眷族が傷を負ってしまったでござるよ。
ぜひとも、その汚名返上の機会を」
「汚名返上って……、別に俺はさっきの戦闘を悪いとは思ってないよ。
むしろ魔狼達は良く戦っていたし、成果だってちゃんと上げているじゃないか」
「確かに彼等の武器を取り上げたでござる。
しかし、仲間が傷を負ってしまったのを見てそのまま黙って見ているなどできないでござる!」
拳を強く握りしめながらスーさんが訴えるの。
仲間思いが人一番強いスーさんだから、眷族が傷ついた姿を見てじっとしていられないの。
でもそれは――、
「駄目だ」
マしゅターがスーさんの意見を却下するの。
「主殿!!」
「スーラ、お前はこれからも仲間が傷ついたらそのたびに仇打ちに走るつもりか?
お前が仲間を思う気持ちはわかる。
だがな、そのためにお前らが怪我をする可能性を俺は見過ごせない」
そうマしゅターの言う通り、今後誰も傷つかないなんてありえないの。
スーさんには自覚してもらわないといけないの。
眷族の主として、仲間が傷つく覚悟を、
そして、マしゅターの臣下としての重さを。
「さっき告げた作戦は、今考える中で一番安全でリスクが少ないものだ。
わかってくれるなスーラ」
「……是」
穏やかな声でマしゅターがそう告げるけど、やっぱり少しスーさんは納得できないみたいなの。
ふぅ、しかたない。
ここはメーサが一肌脱ぐとするの。
「マしゅターお願いがあるの」
「お願い?」
「うん、さっき言った作戦で剣の視角にウットカゲを潜ませておくって言ったの。
でも剣の視角に隠れられるウットカゲは多分一匹だけなの、だからさらにウットカゲの注意を逸らすためにも、もう一つ罠を張っておきたいの」
「へ~、どんな罠だい?」
どうやらマしゅターは私の考えている事に予想がついているみたいなの。
それでもワザと聞いてくるってことは、多分そう言うことなの。
「剣の影から突然敵が現れたら吃驚すると思うの」
メーサの言葉にスーさんがハッとした顔でこちらを見るの
「確かにいきなり影から敵が現れたら吃驚するだろうな」
「でしょう。
しかも、上手く行けば影から出てきたものが、一番止めを刺せる可能性があるの」
「あぁ、そうだな。
だがそいつは逆に言えば一番危険な所にいることにもなるな。
そんな危ない役を引き受ける奴がいるかな?」
「任せるでござるよ!!」
スーさんが大声を上げるの。
「その役目、某の眷族が一番適任でございます」
「任せていいのかい?」
「相方が怪我した事でもう一人のシャドーウルフは気合が入ってござる。
間違いなくその役目立派に果たしてご覧見せましょう」
「わかった。
スーラ、君の眷族の活躍に期待する」
「是!!」
そうして、マしゅターとの通話が終わったの。
メーサは早速マしゅターの作戦を実行するために色々動くの。
「メーサ殿、ご助言ありがとうございます」
そんなメーサにスーさんが頭を下げるの。
もう、そんなに頭下げなくていいのに。
「気にしないでいいの。
メーサはこう見えてこのダンジョンではスーさんの先輩なの。
後輩の面倒をみるのも先輩の仕事なんだから」
そう言ってエッヘンと胸を張ります。
…………少し残念なのはそうやって胸を張っても、あの無表情メイドより胸が無いことがはっきりすることなの。
メーサはまだ成長期が来てないだけだから嫉妬はしないの。
でもいつかあの胸は垂れればいいのと思ってしまうの。
胸を張ったメーサを見て、スーさんは少しだけ顔が綻びます。
うん、大丈夫。
その顔を見てそう感じ、メーサは仕事に取り掛かるの。
マしゅターの敵になる邪魔者は綺麗に殺さないといけないの。
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