その日、世界が動き出す(前編)
話の展開の都合のため二話に分けました。
後編は本日中にあげます
その日いつものように太陽が昇り、いつものように沈んでいく。
誰もがそう思っていた。
昨日と変わらない今日が、日常がこの日も始まる。
誰もがそう思っていた。
だが、そんな日常が唐突に終わりを告げた。
家族がそろい、みんなで朝食を食べようとしたときに、
散歩の帰りに近所の人と出会い、立ち話をしているときに、
日課である稽古で汗を流しているときに、
夜の商売がようやく終わり、これからひと眠りしようとしたときに、
どんな行動をとっていようが関係なく
とある北方にある大国の王に、
夢に向かって進むため学び舎に通う学生に、
大陸一と言われる商人に、
薄汚れた服を着て街の片隅で物乞いをしている乞食に、
ありとあらゆる身分に関係なく
最も脆弱で数が人一番多い人間達に、
魔力が集まる場所を拠点にしている妖精達に、
太古から住まう最強種族と名高い龍達に、
多種多様な種族がいる獣の血を誇りとする獣人達に、
世界中にいるあらゆる種族に関係なく
男に、
女に、
子供に、
老人に、
老若男女関係なく
この世界、ライフに住むありとあらゆる者達に平等に
神の中の神、あらゆる神の父、大神、そう呼ばれる存在。
創造神ライフが全てに声をかける。
それはまさに『神託』
≪私の声が届く全てのものに告げる。
この日、この時より世界が新しく動き出す。
過去、あらゆる種族と戦いを引き起こし、我等が封印した魔族達が封印を破り再びこの世界に戦乱を巻き起こそうとしている。
我等神は地上の争いには直接手を出してはならぬと決めている。
だがこのまま黙って見ていたならば、魔族達が起こす戦乱で多くの種族の命が失うことになるだろう。
そのような事だけは、黙って見ておれぬ。
よって、ここに言葉を下す。
平和を愛する者よ、
戦う意思を持つ者よ、
守りたいものがある者よ、
向上心を持つ者よ、
魔族が地上に出てくるのを阻止せよ。
魔族達は封印が変化してできた場所、ダンジョンとなった場所から地上に出てこようとしている。
魔族を再び封印するためにはダンジョンを攻略する必要がある。
魔族と戦うと意志を持つものは、我等神々は加護を与えよう。
ダンジョンを攻略し魔族の侵攻を阻止した者には、褒美として我等神々が望む与えよう。
我等は常に見守っている。
頑張るものに我等神々は助力を惜しみはしない。
この世界に生きとし生きる全ての者達よ、世界の平和のため、魔族の地上に出てくるのを防ぐためにも、ダンジョンを攻略するのだ!!≫
大神ライフの神託が終わる。
終わった後には、それまであった音という音が消えたような静寂に辺りは包まれていた。
誰も何も言わない。
誰も何も行動できない。
大神から直接下された神託に驚き、混乱してしまう。
それからどれくらい静寂が続いたのだろう。
ゆっくり、ゆっくりと人々の中に大神の言葉『神託』が頭に浸透していき、その言葉の意味を理解していく。
理解した瞬間、それまで辺りを包んでいた静寂が破られる。
失っていた音を取り戻すかのように、世界はありとあらゆる爆発したかのような音で彩られていく。
歓喜、感激、喜色満面。
悲鳴、悲嘆、哀愁絶後。
感涙、血涙、大海滂沱。
絶叫、絶句、心言現出。
怒号、憤怒、血気怒張。
咆哮、嘆息、呼気体現。
悪態、罵倒、悪鬼反感。
爆笑、冷笑、福福笑笑。
ありとあらゆる感情の声が世界に溢れ出る。
誰もが口を開かずにはおれない、そんな感情に支配される。
ある者は見も知らない隣にいる誰かと拳を合わせあい、
ある者は神の言葉を聞くことができたとその場膝をつき泣き崩れ、
ある者は心を支配する感情を思うまま天に向かって叫び、
ある者はこれからの事を思い家族を抱き寄せ力一杯その身を抱きしめ合う、
誰もが生まれたばかりの赤子みたいに心のままに自然に体が動く。
それほど衝撃が『神託』にはあったのだ。
この日、大神から神託が下され世界が動いた日を『転換日』と呼ぶことになる。
神託を聞いた全てのものがこの日を境に昨日と変わったのだ。
悪魔が企画し、異世界から来たものが仕上げたプロジェクトがいよいよ始まる。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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後編すぐにあげますので楽しみにしていてください