幕間 神々の様子
神々が住む地の片隅、神の目を逃れるような場所に三人の神が集まっていた。
「いよいよプロジェクトが始まるね。
本当に今から楽しみで、わくわくするよ」
「そうですわね。これからどんなことが起きるのか私も楽しみですわ」
「ふん、どうなろうと我のすることは決まっている」
三者三様で話を続ける。
一人は子供。
一人は美女。
一人は騎士。
見た目も姿もまるで違う三人だが彼らには共通点があった。
いやこの場合彼等を共通して呼ぶ呼び方があると言った方が正しい。
【神界の三大問題児】
それが彼らだ。
「そう言えば聞きましたよ。
トリクちゃん早速悪戯したらしいですね?」
「悪戯って言うほどのことじゃないよ。
少しだけからかっただけなんだけど、他の神たちが大騒ぎしただけなんだよ」
「お前がからかうといつも問題が大きくなる。
少しは自嘲しろこの馬鹿が!」
「アハハ、馬鹿はひどいな~。
そう言うジエン兄さんこそ、いつも問題を大きくしてるじゃないか」
「我は偉大なる父から与えられた職務を忠実に実行してるだけだ」
「その職務の仕方に問題があるのでは?
もう少し周りのことを考えて融通を利かせることも大事よ?」
「融通だと?
そんなものは必要ないだろう。
大切なのは正義か悪か、正しいか正しくないか、勝つか負けるかなどの二つの一つの答えだけだ。
半端な答えなど必要ない!」
審判の神であるジエンはそう断言する。
その融通の利かない性格、真面目を通り過ぎて硬いと言われる考えのせいで、丸く収まる問題が破裂すると言われる神だ。
彼の逸話にはこんなものがある。
仲が悪い二つの国が戦争を始めた。
戦争は長く続き、泥沼の体をなしてきた頃、傷つき疲労した民達は戦争を止めるようと王たちに訴えた。
国力が落ち、食べ物を生み出す生産者も減ってきたきたことでこのままでは戦争どころではなく国が滅ぶと判断した王達は、民の声を聞き届け戦争を止めることにした。
だがそれを審判の神ジエンは認めなかった。
『お前らは我に祈ったであろう。
ならば我はお前らの願いを聞き届けるだけだ。
戦争を止めることなど許さん。
どちらかが滅びるまで戦い続けろ!』
王達は戦争が始まる前に審判の神ジエンに祈っていたのだ。
相手側を滅ぼすと、我等の国こそが正しいと証明すると。
審判の神ジエンの言葉を聞いても、もう各国は戦争をしたくなかった。
誰も武器を手に取らず、変わりにお互いの手を取り仲良くしようという流れになっていた。
このままいけばもう誰も傷つかず平和になる。
そう平和になるはずだった―――、
『お前らは我に祈っておきながら、我の声を無視するのだな。
ならば審判の神であるジエンが裁きを下す。
中途半端な結末など必要ない。
どちらかが滅びることが嫌なら、両国とも共に滅びよ!』
そう言って二つの国に住む全ての民を殺し、国を滅ぼした。
このことから、以後審判の神ジエンに祈る場合命を賭けて祈る必要があると知られるようになった。
「相変わらず固いね~ジエン兄さんは」
「固いかどうかはわからんが我は我だ。変わることなど無い」
「………ホント、何千年生きているのに変わらないことで。
そう言えばラブ姉さんの方はどうなの?噂ではちょくちょくDDMになった人達を見てるようだけど?」
「えぇその通りよ。
なかなか面白い考えをする子たちが多いから見ていて面白いは。
妹達がはしゃぐのも頷けるわね。
私も見てるだけじゃなくて、少し手を貸そうかしら?」
「それは止めろ。
お主に自覚は無いだろうが、お主が手を貸したときトリク以上の被害が出るのだぞ。
もっと自分の力を自覚しろ!」
「自覚って言われても……、私の加護は誰もが皆持っている『愛』よ?」
愛の神ラブが不思議そうに首をかしげる。
「アハハハハハハハ、本当にラブ姉さんは面白いや。
無自覚から引き起こすから、本当に厄介で面白いことが起きるんだよね」
昔、一人の男がとある女性に恋をした。
男は女性への愛を成就するために愛の神ラブに願った。
愛の神ラブは男の真摯な願いに感激し、加護を与えた。
その加護の力により、男は苦労を乗り越え女性と結ばれることになった。
これは愛の女神ラブの有名な神話の一つである。
「でもそれは男から見たらの話なんだよね。
もっと視野を広げて物事を話すとかなり面白い話になるんだよね」
「どこが面白い!
あれは最悪、いや災厄だったろう」
昔、一人の男がとある女性に恋をした。
女性はその国の姫であり、男はその国の陰で物乞いや盗みをしながらこそこそ生きる生活をしていた。
そんな男がその女性を見たのは、食べ物を探すために路地裏を歩いていた時だった。
普段行きもしない大通りからにぎわいの声が聞こえ、顔をそちらに向けるとそこには満面の笑みを浮かべ、民衆に手を振る女性の姿があった。
男はその笑顔に一目惚れをした。
女性が結婚を祝うパレードのために大通りにいたのだと知りもせずに……。
男は女性に合いたくて城に向かったが、門番は男など相手にせずに追い払う。
あきらめず何度も何度も行くが、そのたびに追い返されしまいには気狂いだと言われ、剣を向けられてしまう。
男は城に入るかとができず途方に暮れてしまうが、それでも彼女への思いは止まらない。
だから男は祈った。
何もない男は、神に祈るしかできなかったから、一心不乱に祈った。
そしてその願いを愛の神ラブは聞き届け、加護を授けた。
それから加護をえた男は再び城に向かった。
城の入り口で門番が再び剣を向けてきたが、それを気にも留めずゴミのように殺して城に入って行った。
男が女性のもとに向かう途中、次々と兵士達が武器を手に男の進路を塞ごうとするが、男は邪魔だと言わんばかりに進路を塞ぐものを殺していく。
そして女性のもとに辿りついた男は、彼女の目の前でそこにいた全てのものを殺した。
彼女の父でり厳しくも慈悲に溢れていた国王も、いつも優しかった母である王妃も、次期国王であり慕っていた兄の皇太子も、可愛がってくれたおじい様のような宰相も、常にそばで守ってくれた幼馴染の近衛騎士達も、そして……長年の思い合いついに結ばれることになった最愛の夫も全て殺された。
目の前で大好きな人達が殺されるのを見て彼女の精神は壊れた。
ただうつろに笑うだけになった彼女を男は愛おしそうに抱きしめる。
二人は二度と離れることはない愛で結ばれた。
国の中枢がいなくなったことにより、やがて滅びることになった。
男と女性がその後どうなったのか知る者はいない。
愛の神の加護【運命の赤い糸】運命の赤い糸に結ばれた相手のためならば、幾多の障害も乗り越えられる力を発揮させる。
「あんなありもしない赤い糸を真実だと思いこんだ狂信者のせいで国が一つ滅んだのだぞ!」
「ほんと面白いよね人間って、思い込みだけであの加護の力を十二分に発揮するんだから」
そう二人の言う通り、【運命の赤い糸】は意味の無い加護であった。
何せ運命の赤い糸などこの世には無い。
それは人々が創り上げた一種の都市伝説の様な話なのだから。
それを男は思い込みの力だけで覆した。
「あら?思い込みなんかじゃないですよ。
あれこそ愛の力なんですよ」
愛の神ラブ、彼女は愛のためならば全てのことが許されると考えている。
三者三様のそれぞれの考えで動くため、問題が増えていく。
人魔戦争の時もそうだった。
審判の神ジエンは一度始まった戦争の勝者をはっきり決めるために動いた。
愛の神ラブは戦場に出る愛しい人を思う人々のために動いた。
悪戯の神トリクは人々が困る顔を長く見たいために動いた。
言葉にすればそれだけ、だがそれぞれの神の力は強く戦争は酷く悲惨なものになっていった。
「今回のプロジェクトはクラウンだけじゃなくて、父上にも釘を刺されているからね。
最初は様子見かな?」
「ふん、あんな魔王の小僧の言葉など我は聞くつもりはないが、さすがに父上殿の言葉は聞くべきだからな」
「そうね。
さすがに今度父上を怒らせたら怖いですからね」
ラブの言葉に言った本人も含め三人が身を震わせる。
人魔戦争の後父上である創造神ライフに罰を受けた恐怖が今も残っているのだ。
身を震わせながら、それでもトリクは笑顔で言う。
「まぁ、それでも僕はできる範囲で好きなように動くけどね」
「我も同じだ。我に祈った者がいるならば我も動くのみ」
「私も同じよ。愛に制限はないのだから」
彼等は神界三大問題児。
止まることも、止めることも誰にもできない。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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明日から新章に入るので楽しみにしていてください。




