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13日 私、マリーさん……

 電話ってさ、なんで急に鳴るんやろうね。突然鳴られたらびっくりするやん。怖いやん。

 テーブルに大の字になって寝っ転がってたのを叱られるかのような気分になるやん。あ、コレ正直なうちの気持ち。

 トーカカエエイト、まとめてコウチ家三姉弟は学校。お父さんはお仕事。お母さんはお買い物に行っていて家には誰も居ません。いや、正確には猫のミヤビ(確定。昨日エイトが呼んだ)が居るけどな。昼寝中。いや、どっちにしても電話取れへん。

 じーっと待つこと数十秒。

『ただいま留守にしております。ピーッという発信音の後に、お名前とご用件を……』長いので省略。

 そしてピーッと鳴ったら、電話をかけてきた向こうの人は言いました。

『私、マリーさん』

 あれ? マリーさん? メリーさんやなくて?

『今、ゴミ捨て場に居るの』

 プツッていう音怖いわぁ。女の人の声も怖いわぁ。

 何⁉ ゴミ捨て場って! ガチやん! ガチのやつやん!

 数分後、

『私、マリーさん。今、あなたの学校の前に居るの』

 学校ってどの学校や。小学校か? 中学か? 高校か? ってか、誰狙てんねん。トーカか、カエか、エイトか?

 その数分後。

『私、マリーさん。今、お池の前に居るの』

 ……あれ? いや、池っていうたら学校よりは近いけどもや。どの学校からも、池の前は通らんで? 通ったら遠回りやで?

 さらにその数分後。

『私、マリーさん。今、あなたの家の前に居るの』

 っぎゃぁああ! 怖いわ! そして来るまでが早いわ!

 あれ? またかかってきた。

『私、マリーさん。今、二階に居るの』

 え?

『私、マリーさん。今、三階に居るの』

 あれ? この家二回までしかないで?

『私、マリーさん。今、あなたの部屋の前に……』

「もしもし? 電番か家間違えたはりません? アンタ今どこ居んの」

『え? 団地の、4棟の、404号室……』

「不吉やなおい。いや、それ家ちゃうで? 誰ん家行こうとしてたん?」

『コウチさん家……ぐすっ、コウチトーカさんの家……』

 こっちかい! この家かい! トーカ、自分何してん!

「あぁ、泣くな泣くな。連れて来たるから、池の橋の真ん中辺で待っといて」

『うん……』

 プツッ、ツー、ツー、

「……何しとんねんうちぃい! アホか! わざわざメリーさん家に案内したるとか、アホか! いや、被害はトーカくらいにしか無いやろけど! それはそれで気分悪いやん! うちのせいやもん!」

 すー、はー。

 ……あ、メリーさん違うかった。マリーさんやった。

 泣いてる女の子放置するわけにもいかんしなぁ。一応橋まで来たけど……。あぁ、あの子やな、マリーさん。クラシックロリータなんか着て、可愛いなぁ。でも持ってるのはスマホなんやな……ゴミ捨て場から来たけど別に人形やないんやな……

「あー、マリーさん?」

「う、ん……え? 男の人……?」

「あ、いや、ちゃうから。うち女やから。これでも」

 大きな目がうるっとなって、あ、ちょっとまってや? いや、がばって頭下げるんやのーて。

「ごめんなさいぃ!」

 ごめんなさいでもなくて!

「え? ちょ、なんで怖がんの⁉」

「あうあうあ、ごめんなさいぃ~!」

「なんで逃げんねん!」

 ちょ、待ってーや! 自分、転ぶで?

「うん? どうした、お嬢ちゃん。……と、レイ坊」

 お? あ、神社来とったんか。なんで爺ちゃん居るんか一瞬考えてもーたやん。

「知らんよ! 急に逃げよったんやから!」

「よしよし、怖いお兄ちゃんだね」

「おい爺ちゃん。誰が怖いお兄ちゃんやねん」

 怖ないわ。お兄ちゃんでもないわ。

「金平糖食べるかい?」

「好きやな自分!」

 また砂糖菓子かい!

「レイ坊、何があった?」

「知らん。トーカがマリーさん……あぁ、その子な。トーカが呼んだみたいやねんけど、その子迷子になっててな? ほんで、案内したろ思うて橋に呼んだんやけど、なんやうちのコト見て怖がり始めたんよ」

「見かけが原因だな」

 バッサリひどいな!

「シャツのボタンをもう少し上まで止めて、ズボンの中にちゃんと入れなさい」

「学校の先生か」

「いいや、今の気分はお祖父ちゃんだ。孫が可愛くて」

 孫かその子。

「ほんで、マリーちゃんは結局トーカに何がしたかったん?」

「お遊びしたかったの……」

 マリーちゃん、爺ちゃんの背後に完全に隠れてお話するのやめへん?

「話しかけてくれたから……。マリー、人間になってトーカちゃんに会いに行くの」

「……アンタ、ホンマは何者なん?」

「お人形……」

 …………トーカ、アンタお人形とお話ししてたんか?

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