14日 懐かれたい懐かれない
『マリーちゃんが怖がるから帰りなさい』
と、昨日は結局追い返されました。何それ、酷ない。お化け扱いやん。あ、お化けか。
夕方、昨日追い返されたことをふと思い出して(それまで忘れてた)神社に来てみました。
「じーちゃーん。居てるー?」
「おぉ、レイ坊。来たか」
「おん。マリーちゃんどないしてる?」
「……レイ坊。ちゃんと表から入って来なさい」
え? いや、まぁ、堂々と神社の裏にある森通って来たけど。近いねんもん。
「神様、終わったの……あ、あ、あぅううう」
巫女服に箒……マリーちゃん、何でアンタ神社で働いてんの。
「よしよし。大丈夫だよ。レイ坊は無害だから」
なんやめっちゃ爺ちゃんに懐いとるし……無害って言い方が気になる。
「うぅ……」
めっちゃ涙目や! マリーちゃん、それ地味に傷つくで! うち以外にはやらんときや! いや、うちだけに涙目になるっていうのは余計傷つくけど。ああ、青い目がめっちゃうるうるってなってる! 可愛いけど! 可愛いけどやめて!
「レイ坊、せめて笑いなさい。そんな顔をしているから怖がられるんだ」
「にこ」
おい爺ちゃん。笑てんのか? その顔そむけて肩震わせてるのは、笑てるってことやんね?
「ひぃぃ……」
「レイ坊。余計怖がられているぞ」
「わかるわ!」
なんか知らんけど、作り笑いが怖いって言われるのはもうずぅうううっと前からやしな!
「やれやれ。……おや、猫だ」
「ホンマ⁉ どこっ⁉」
「ほら、マリー。笑えば怖くないだろう? レイ坊、すまんな。嘘も方便というやつだ」
「何やねん!」
ガッツリ探してもーたやないか!
「あ……居たの。猫」
マリーちゃんが指したのは、拝殿前の階段の下。
「ホンマや!」
うわぁああ黒猫やんっ! かーわーいーいー! でもミヤビには劣るな。でも可愛いぃ!
「……神様、もう怖くないの」
マリーちゃんもにっこり。あぁ、こっちも可愛いわぁ。
「じゃあ一緒に菓子でも食べようか。そこの猫もおいで、猫用の飯があるぞ」
「ニィー」
なっ……神様ずっこい! なんで猫ちゃんに言葉通じてんの⁉ うち話しかけても大した返事来ーへんで⁉
「神様、マリーさんお菓子持ってくるの」
「おぉ、頼むぞ。じゃあ私は茶を入れよう」
本殿に上がってからの二人の会話。
……うち座っててえぇんかいな。めちゃ居心地悪いんやけど。隣に猫ちゃん居るからえぇか。……いや、でも神社で胡坐は無いか。今まで普通にやってたけど。正座しとこ。
「私、マリーさん。今、あなたの後ろに居るの」
「わぁぁいっ‼ ちょっ、マリーちゃん驚かさんといてや! うぉお、びっくりしたー……」
「うふふ。昨日言ってなかったの」
急にフレンドリーやな、マリーちゃん。
「トーカに言うんとちゃうんかい……。なんで巫女してんのん?」
「カンヌシさんが、暑くて動けないの。神社を綺麗にできないの。だからマリーさん、お手伝いしたの」
「おぉ、そうか。偉いな自分」
そういや、前に爺ちゃん巫女服ならあるって言ったはったな。こんな小さいサイズの巫女服をなんでうちに勧めたんや。
……まさか神様自らリメイクしたわけやあるまいし。
「自分、最初に着てた服は?」
「神様がお洗濯してくれたの」
……そのまさかかもしれんな。なんでちょいちょい家庭的やねんあの爺ちゃん。神のくせに。
「ほら、おいで、猫」
「ニィ」
爺ちゃんずるい。なんでそんな色々なのに懐かれんねん。
「猫、猫、可愛いの~」
マリーちゃん、猫の餌食うたらあかんで。
「ほれ。茶が入ったぞ」
マリーちゃんの持ってきてくれた牡丹餅と一緒に、いただきます。この味は……コンビニやな。
しっかし、この三人の中に食べ物飲み込める奴が居ないのにお茶してるとか、色々謎いな。アンドもったいないな。いや、森の栄養になってるから別にもったいなくはない、はず。
「マリーちゃんって、これからも神社に住むんか?」
「ん、んー……。お家帰るの」
「あぁ、そうなんや。お家どこ?」
目に見えておろおろし始めたぞ。あ、そっか。昨日の電話で『私、マリーさん』言うてたやつもゴミ捨て場スタートやったもんなぁ。
「さがすの……」
「よしよし。見つかるまではここに居て良いからな」
「ニー、二ー」
「お前は前から住み着いてるだろう」
『バレたか』って言ってるみたいに、猫ちゃんは顔を洗い始めた。明日は雨かー、いや、雨か? 降るか?




