11日 欠け行く
のーぼってー、くーだってー、また昇るーけどまた下るー。
作詞作曲 ハヤシ レイ 『引っ張られる歌』ってのを、今作った。
あんね、コウチ家の台所を中心にして、空高ーく昇ったり、地面深ーくまで下ったりしてんねん。ほら、一定距離コウチ家から離れたら引き戻されるって言うのを利用して。すごいで。どんな高速エレベーターでもこんな景色見れへんで。景色って言っても、残像しか見えへんねんけど。光の筋がいっぱい見える程度。わけわからん。
……体あったら酔ってるわ。そろそろやめよ。
というわけで、落ち着いた場所はコウチ家の屋上。屋上というか、単純に屋根の上。コウチ家のお父さんのみ『屋上』って呼んでる。たまにここにキャンプ用の椅子持ってきたりしてやな。ほんで、ワンカップ片手に月見酒。風流なんだかそうでないんだか。杯やったらかっこいいと思うで。うん。
っていうのを、本人の隣で思ったりする。
今日の月は三日月か? それにしちゃちょっと太いような。っていうか、太いわ。もうちょい痩せろ月。食事制限や食事制限。もしくは太れ。満月なってまえ。
……本気でどうでもえぇな。
お父さんの座る椅子の隣に腰を下ろして、景色を眺めてみた。ここ結構高いところにあるから、隣町の様子も見えんねん。車とか走ってる。どこぞの会社の看板が見える。
あと、小さい小さい光の粒が天に昇る光景が、見えたような見えないような。
「あー」
何や。……お父さん寝てはる。今の寝言か?
「お腹いっぱい……」
なんっちゅーベタな寝言を。ちょい、お父さん、その夢の中にうちも入れてぇや。
「無理……」
「なんで会話んなっとんねん‼」
え? あ、『もう食べられない』の意味で、『無理』? そうならそうと早く言いよし。
「おっ、レーイ!」
ダイ爺生きてたらめっちゃ近所迷惑やな、とか真っ先に思ってしまってごめんな。
「おー、何ここ、普通に眺めいいじゃん?」
『いいじゃん』とか言うた癖に、お隣さんの屋根に移ってみるっていうな。
「ここもいいな。レイも来いよ」
「おー」
…………あ、そうや。そうやん!
「おいレイ、なんでそんな遠くに座るんだ」
「ダイ爺とは二m以上離れることにしてんねん」
「何、その勝手かつ俺が傷つくルール」
「近づいたら変なことされるやん」
「うわぁ俺変態みたいな言い方だな」
いや、だって、突進したとたん抱き寄せるって、これ、変態技ちゃう? 変態で合ってるくない? うちがおかしいの? うちが厳しいの?
「まーいいや。レイ元気ならそれで」
「どしたん、しみじみと」
「リノ居なくなって、レイまで居なくなられちゃ悲しいからなーとか」
………………………………………………………………えと。
「彼女?」
「は? え。は、はぁああああああああ⁉」
すごい勢いで迫って来た。え、何、怖い。目がガチや‼
「おいレイ。正直に答えろ。リノは知ってるよな? リノの事は、知ってるよな?」
「え、え、え?」
何、どゆこと?
「おい、眠気は?」
「ないない」
「……怖ぇなぁ……どんだけ忘れっぽいんだお前は」
なんでそんな非難されなあかんねん。
「……なあレイ、自分が死んだ理由覚えてるか?」
「え……? ……いや、全然」
あれ? この学ランって、うちのちゃうよな? 誰のやったんやろ、元々は。
「まあ、死んだ理由は俺もほとんど覚えてねぇしなぁ……そんなもんなのかなぁ」
え、何。何か気持ち悪い。何なんやろ。なんでこんな忘れっぽいんやろ。
……なんでや。




