26日 頑張れダイ爺
「おー、ダイ爺やん」
「レイ!」
「何してんのん、こんな所で」
こんな所、イコール……住宅街にいっぱいある屋根のうちの一つの上。眺めは悪くない。空が広いわ、うん。
「いや……ボール落しちまって。どこ行ったかなって」
「坂の上でボール遊びとか、アホちゃう」
「誰がアホだ。ほら、アレよ。ドリブルジョギング。アレやってたら、いきなり犬が吠えるもんだからびっくりして……」
ほんで、ボールから手を離したらコロコロコローっといっちゃってんな。やっぱ阿保やん。
「で、そのボール探してんの」
「そうそう」
「その辺のドブにでも挟まっとんちゃうん」
「いや、それはもう綺麗に真っ直ぐコロコロゴロゴロギュインギュイン……」
「擬音おかしいやろ」
「いや、だから、コロコロ転がってってオバサンにぶつかってジャガイモゴロゴロってなってジャガイモがバイクの車輪に挟まってギュインギュイ……」
「ボールどこ行ってん!」
「見失ったって事だよ! 察しろ!」
無茶言うな! コロコロゴロゴロギュインギュインで、ボール見失ったって分かった奴いるか⁉ 居らんやろ⁉
「まあ、何だ。ここまで事情聞いちゃったからにはな、手伝うしかねぇだろ」
「お前手伝ってもらう側やろが。なんで上からやねん」
「俺年上じゃん?」
「知らんがな」
「いや知ってるだろお前」
あれ、そやったっけ。
「で?」
「手伝って、ボール探し」
おてて合わせて上目使い。男やっても可愛ないねん。やめろや。
「俺の子のポーズやめて欲しかったら手伝え」
まさかの脅し⁉
「あ、マリーちゃーん」
「レイ兄様! こんにちはなの」
「ちょっとさ、スマホ貸してくれん?」
「どうぞなの。……コレ、レイ兄様の知り合いなの……?」
コレ呼ばわりされたぞダイ爺。ってか、可愛い女の子の前でもそのポーズキープとか凄いなお前。
えーっと、これがカメラやんね。はい、チーズ。
「はっはー馬鹿め。幽霊は普通写真にゃ写らねぇんだよっ!」
「写ったで」
「嘘⁉」
「マリーちゃん、つひったーとか、何かそんなんでネット流せへん?」
「流せるの。流したの」
ええ子や。よー分かってる。
「そんだけ。ありがとぉなー」
「さようなら、なの」
「……いや、いやいやいやいや。いやいやいやいやいやいや! 流れたっつってもあれだろ、妖怪的な何かそっち系のネットワーク的な奴の方だろ?」
「あやふやすぎるやろ」
「妖怪的な誰かとかなかなかスマホなんか持ってねーだろ」
「あ」
「あ?」
小学校の前で、小っこい妖怪とアパートのお兄ちゃんが話してはる。あの小さい子スマホ持ってたんやなぁ……それはともかく、そのスマホ見せた途端お兄ちゃんドン引き。あ……コレは……
「まあ、何? ドンマイ!」
「原因お前だろ!」
「キモいポーズで脅そうとしたのが悪い」
「いやでも、肖像権とかそういううんたらたらってのが……」
「全然わかってへんやん」
「落ち込んどく」
「おー、頑張れ」
落ち込むのに何を頑張る事があるんやろ。いや、頑張れ言うたんうちやけど。
「ってか、ボールえぇのん?」
「…………やべ」
「まず、アレやな。ドブさらいから始めるのがえぇと思うわ」
「ドブに落ちてる前提で話すなよ……」
……いや、ドブに落ちてた方が早く見つかると思うで。近いところで止まっといてくれてるから。




