7日 お客様、て
「……おう、どしたん爺ちゃん。そんな、世界終わりそな顔して」
「ああ……レイか」
「頭えらい事なってんで。結うたるわ」
何でこんな髪好き勝手しとんねん。神としての威厳皆無か。髪くくってる紐すら迷子やろコレ。どこ行ったー? あ、居った。
「悪いなぁ」
「えぇねんて、別に。どしたん、そんな急にしみじみと」
「いいや……いつも通りさ」
いや全然いつも通りちゃうやん。目ぇがもういっちゃってるもん。どこ見てんの? めっちゃ遠いところ見てるやん。鏡の奥の壁のさらに向こう見てる勢いやろ。……神棚の鏡ってこんな使い方するもんやったっけ。
「おーい、爺ちゃーん?」
……返事ない。
肩叩いてみた。たしか、倒れてる人を見つけたら肩叩いてみるのがえぇねん! たしか! 覚えてないけど! そんで別に爺ちゃん倒れてへんけど。
「爺ちゃぁあああん‼」
「はっ!」
「うぉわ、急に動かんといてぇな。髪くずれたやん」
まだくくってへんかったのにー。あとくくるだけやったのにー。
「あ。悪いな」
「えぇよー、別に。どしたんさ。ホンマ爺ちゃんおかしいで?」
「おかしくない」
「いやおかしいやん。なんで胸張ってんねん。っていうか、普段胸張ってへんかったやんおかしいやん?」
おし、でけた。
「ありがとう」
あれ、おーい、返事が返って来てないんやけどー? あっれー、ちょー、爺ちゃーん? どこ行くーん?
「行っちゃった……」
「……最近忙しくされてますからね」
「お、アケヤマさん? あれ、マリーちゃんどしたん」
ずっとアケヤマさんの後ろに隠れて。人見知りの三歳児か。アケヤマさんはお母さんか。あ、ごめ、似合うとか思っちゃったわ。
「いえ……ちょっとね」
いや、ちょっとってレベルちゃうやん。マリーちゃんめっちゃビビってるもん。にこりともせぇへんもん。手ぇ震えてるもん。
「爺様、怖い人と、お喋りしてたの」
…………ぬ? 怖い人?
「怖い人、顔無いの。骨なの。黒いバサバサなの」
顔無くて、骨で、黒いバサバサ? ……うん? 黒いバサバサ言うたらカラスやけど、人って言うてるし。骨? 骨格標本? いやいや。これはないな。
「…………それで、ジーン君と仲良しなの」
うん、誰やそれ。仲良し言われても分からんわ。で、結局そいつは人なんか? 骨なんか? スケルトン? 骸骨? え、ちょ、やめてな?
「なぁ、アケヤマさん、結局どんなんなん?」
「……さあ? 僕もお会いしたことはありませんから」
えーっと、骨と、黒いバサバサと、ほか何やったっけ? ……んー……? あれ、うち、前に爺ちゃんのお客と会った事なかったっけ? とりあ、一日中そこの森でカチコチなってへんかったっけ?
……あ、ちょっと背筋寒なってきた。逃げよかな。




