第9話 胸に隠していた想い
「なにか、言いたいことはありますか?」
心さんに聞かれる。言いたいことなんて特にない。どうせもうバレちゃってるし、私は今から殺されるんだ。
「ないよ。それより早く殺したら?」
みんなはそれに合わせて早く殺すように勧める。そう、これでいいんだ。私の死なんか軽いもの。誰からも好かれてない私には、そんな死がお似合いなんだ。なんて思ってたのに、
「なる。話を聞かせてくれないか?」
静ちゃんは簡単に私を殺してくれない。
「しずちゃんは意地悪だよね。昔からさ…」
「…?」
「いいよ、説明してあげるよ。」
私はさっきあった出来事を話す。
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「俺が2人きりで話してくるからみんなはそれぞれの個室に行っててくれ。」
「りょうかい!」
静ちゃんは個室を出て行く。その後、心さんも出て行って私と遠藤妹と瑠衣子が個室に残った。すると峰が、
「少し、3人で話したいことがあるので簡易食堂で軽食しませんか?」
「まあ、いいけど」
「はい。」
私たち3人は峰のお願いを聞き入れ、簡易食堂に向かった。
簡易食堂に着くと峰は語り出した。
「私は、お姉様のことが大好きです。昔からお姉様と沢山殺しをして、楽しく過ごしてました。それなのに…ある日を境にお姉様はしずさんに夢中になってしまっていた。だから私は…」
峰はカバンからナイフを取りだし…
「お姉様としずさんを会わせた貴方が許せないんですよ。なるさん。」
「なるほど…ね。」
峰はナイフを私の胸に突き付ける。
「でも、みねも分かってるでしょ、私も殺人犯だって。」
「分かってますよ。相打ちだって構わないです。私は貴方を頃せればそれで…」
峰が急に倒れた。周りには血が飛び散っている。
「…君も殺人犯だもんね、そこで殺しちゃうか。」
瑠衣子は峰を刺し殺した。
「まあ、計画に邪魔だと思ったので。」
「ふーん。まあいいや、じゃあ追放されてね。」
「それはどうですかね…」
「ん?」
瑠衣子は1つの映像を私に見せつけた。その映像に映っていた静ちゃんは、とても悲しそうで、苦しそうだった。そう、5歳の頃の静ちゃんだ。
静ちゃんから話は聞いたことがあった。5歳の頃に、母親が宗教にハマり、それが嫌だったので殺してしまった…と。
「…。その映像がどうしたってわけ?」
「貴方が死んだら…私が責任をもって、しずさんを幸せにしてあげますよ。実際貴方はもう彼女から信用されてませんしね。」
「なるほどね。君、洗脳されてから随分イキイキしてるね。」
「そうですかね?洗脳される前からのギャップでもあるんじゃないですか?」
「どうせ…私にはもうしずちゃんをどうにかすることは出来ないし、頼んだよ。」
「はい。」
瑠衣子は不気味な笑顔で応える。これでいいんだ。私のこの行動で、静ちゃんが幸せになるなら…。
幸か不幸か、心さんが戻ってきたタイミングで峰は力尽きたらしい。
キンコンカンコン
「死人が現れました。死人が現れました。」
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私は瑠衣子との会話以外を全て話した。殺されるのは瑠衣子じゃなくて、私であるべきだから…。
「これで終わりだよ。分かってくれたかな?しずちゃん。」
「なる…。中学と高校ではあんなに優しかったのに。」
「人間は…いつか変わっちゃうんだよ。」
教室にしばらくの静寂が訪れる。ここにいる人達は、何かしら校則違反をしてるんだから、人の心がある人なんか居ない。だからこそとっとと殺して欲しいのにな…
「ちょっと待ってよ、」
静ちゃんが話し出す。
「ねえりさ。殺人犯ってりさとなるとこころさんじゃなかったの?」
「…」
里紗が質問に答えることはなかった。でも、申し訳なさそうな顔はしていた。
「それより、しずちゃんもう言うことは無い?もう死にたいんだけど。」
「なる…」
私はもう既に1回死んでいる身だ、恐怖も悲しみも何も生まれない。最後の最後に静ちゃんに嫌われることも出来たし、心残りなんか何も…
「では、そろそろ処刑しますね。」
レイナはそう言うと、私の頭に銃を突き付ける。
「みんな、ばいばい。頑張ってね。」
私はそのまま目をつぶり、銃が撃たれ……
ドン
誰かに抱きつかれる。思わず目を開けてしまった。目の前には、震える全身で私を包む静ちゃんがいた。
「なんでよ…。悲しくならないように、必死に嫌われてきたのに…」
目から涙のようなものが流れてくる。泣いたのなんて、赤ちゃんの時以来だ…
「なる!私…普段なるのこと適当にあしらってきたけど、親友として大好きだったよ。」
やめて…
「中学の時も、毎日なると過ごせて楽しかったし!」
やめて…
「高校の修学旅行だって、なると行きたかった……」
やめて…
「無邪気に私に話しかけてくれて…少しめんどくさかったけど、私なんかのために付き合ってくれて…」
「やめてよ!」
心の声が漏れてしまった。でももう、1度出た感情は止めることは出来ない。
「私だって悲しいよ!しずちゃんとの別れが悲しくならないように、嫌われるようにしてきたのに…。これじゃあ…意味ないじゃんか……」
もう自分がなんて言っているかも分からない。それくらい、か細く、でも力強い声で、叫んでいた。
「もう、自分でも知ってると思うけど、もう1人のしずちゃんにも嫌われないように…たくさん頑張ってきて…」
何言ってるんだろう。そんなこと言っても静ちゃんが理解できるわけないのにな…
「もう1人の私がなんて思ってるかなんか知らない…。でも少なくとも、今の私は…なるのこと、大好きだよ…」
「うぅぅぅ」
涙が止まらない。ごめんね静ちゃん。ごめんねもう1人の静ちゃん。ごめんね静ちゃんの妹さん。ごめんね今まで殺してきた人たち。
「しずちゃん。今まで…ありがとうね…」
パァン
銃声が聞こえたと同時に体の力が抜けていく。最後に自分の気持ちを静ちゃんに言えて…本当に……良かっ…た…………な………
「なる!目を開けてよ!なる!」
静ちゃんが……私を…呼んでくれている……
「ありがとう……大好…き…だ……よ………」
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鳴が再び喋ることも、目を開けることもなかった…。
涙でよく見えないが、鳴は笑っていた。
「なる…ごめんね。私がもっと早く、もう1人の自分に気づけていれば…」
周りの音なんか何も聞こえない。私はただ、冷たくなっていく鳴を抱きしめてあげることしか出来なかった…
「今までありがとう…。私がそっちに行くまで、待っててね。」
無責任な事は言えない。私は今まで鳴に冷たく接してきた。でも、これだけは言わせてね
「鳴。大好きだよ。」




