りんごシェアハウスに一人……。
夢ちゃんの家に泊まらせてもらったその翌日、私と夢ちゃんは黒川さんに車で送ってもらい、腰を痛めた杉田さんのご自宅にお見舞いに行った。
「それでね? 救急車の中では、里見くんが付き添ってくれて、「大丈夫ですよ。もうすぐ病院着きますからね」って話しかけてくれてたのよ。彼、とっても優しくて頼もしかったわ〜」
「そ、そうなんですね。浩史郎先輩が、杉田さんの側にいてくれてよかった。大変な時に何も出来なくてすみません……」
「ま、まぁ、里見先輩 も、偶には役に立つことがあるのね。ごめんなさい。杉田さんにはよくして頂いたのに、私もお力になれなくて……」
布団で安静にしていたけど、杉田さんは華やいだ様子で病院に運ばれた時の事を語り、思ったより元気そうで私も夢ちゃんもホッとしたけれど、杉田さんの一大事に役に立つどころかその事を知りもしなかった事に申し訳なさを感じていた。
でも、杉田さんはそんな私達に笑顔で手をブンブンと振った。
「いえいえ、そんなそんな! 不注意でケガをした私が悪いのだから、お嬢さん方は気にしないで? こうして、お見舞いに来て下さっただけで、充分嬉しいわ。
寧ろ、管理人を任されたばかりでお休みしてしまってごめんなさい。出来るだけ復帰するから、その時はまた宜しくお願いしますね」
「あっ。はい! こちらこそ宜しくお願いします。その時は、重い物持ったりとか、お手伝い出来る事あったら言って下さい」
「ふふ。ありがとう」
私が、せめて今後は出来る限り杉田さんのフォローが出来ればと思い手伝いを申し出ると、杉田さんは目尻に皺を寄せて礼を言ってくれる。
そして、夢ちゃんは……。
「私は、祖父から家に帰るように言われまして、少し早めですがシェアハウスでの滞在を終える事になりました。杉田さん、今までお世話になりました」
と、礼儀正しく最後の挨拶をしたので、杉田さんは哀しげな表情になった。
「あら、宇多川さんは夏休みいっぱいの滞在とお聞きしていたのに、もう? 寂しくなるわね……。もしかして、管理人が不在になるからお家の方に反対されたのかしら?」
杉田さんがシュンとしてしまったので、夢ちゃんは慌てて否定した。
「いえ、そのせいではないです! ただ、私が合宿で不手際を起こしてしまったので……」
「あらら。そう言えば、昨日は里見くんも合宿だった筈なのに帰って来てたわよね? 私はそれで助かったのだけれど、あなた方、何かあったの?」
「えーと、それは、その……」
夢ちゃんと私を交互に見遣る杉田さんに聞かれ、私が言葉に詰まっていると……。
「まぁ、言いにくいのなら今、私に言わなくても言いけれど……。もし、あなた方の間に何か拗れてしまった事があるなら、きちんと腹を割って話し合った方がいいわよ?」
杉田さんはそう言い、片目を瞑った。
「だって、あなた達三人とてもバランスの取れたいい関係だったじゃない。離れてしまうなんて勿体ないわ」
「「杉田さん……」」
杉田さんの言葉は胸に刺さり、私は夢ちゃんと顔を見合わせたのだった。
✽
それから、私は帰宅の為、夢ちゃんは残していた荷物を取りに行く為、シェアハウスに戻る事になった。
置いていた荷物をまとめると、夢ちゃんはシェアハウスに残る事になる私を心配していた。
「里見先輩が戻って来たら、りんごに強く当たるんじゃないかと心配だわ。何なら、あいつと話す時、私と通話状態にして置いて? 何かあったらすぐ駆けつけるから!」
「いやぁ、夢ちゃん、心配し過ぎだよ……」
私を案じてくれる夢ちゃんの言葉を有り難く思いながらも、私は苦笑いだった。
夢ちゃんを見送り、一人残った私が、ソファーに座って、リビングを見渡すと、いやに静かで、広々としているように思えた。
一昨日までは、浩史郎先輩、管理人の杉田さん、夢ちゃん、ボディーガードの黒川さんがいて、とても賑やかで楽しかったのに……。
『一方的に松平に迫られたにしても、すぐ拒絶しろよ! 《《君は俺の許嫁だろう》》!?』
合宿での、浩史郎先輩の怒った顔が目に浮かぶ。
浩史郎先輩には、あれから何度も電話をしたけど繋がらなかった。
あんな険悪な状態で別れてしまったままで、ちゃんと話したいのに……。
もしかして、浩史郎先輩ももう帰って来ないなんて事……ないよね?
そんな不安にかられ、ギュッと身を縮めた時……。
チャララーチャララー……♪
「!」
携帯電話が鳴り響き、急いで確認すると、画面には『浩史郎先輩』と表示されていた……!
*あとがき*
いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。




