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許嫁=猫…ではない  作者: 東音


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107/110

問題は山積みに……。

「はぁっ。どうしたものか……」


 度重なる修羅場を繰り広げ、りんご、宇多川、西園寺と同様、軟式テニス部の合宿を途中帰宅する事になった俺は、シェアハウスの戸口の前でため息をついた。


 宇多川のりんごへのキスには衝撃を受けたが、正直怒りはそこまで強くなかった。

 彼女は以前から、りんごを男子から守る為なら手段を問わないところがあった。

 今回の行動も、恋愛感情というより、友情を煮詰めて拗らせたものに近いのだろう。


 だけど、松平は違う。明確にりんごに好意を抱いて、キスをしようとして、少なくとも俺の目からはりんごがそれを拒否する意思が見られず、俺にはそれが許せなかった。


 まぁ、宇多川にも簡単にされていたから、単に驚いて動けなかっただけかもしれないが、今までの関係=飼い主と猫ではそれを追求する事が出来ないだろう。


 俺とりんごの許婚関係が西園寺にバレた以上、風紀委員のシェアハウスに関しての審査も危うい。それどころか、場合によっては、りんごもしくはりんごの家族が、西園寺によって危険な目に遭わされる事もあり得るだろう。


『一週間待ちます。それまでに、私達の元へ里見様が一人で釈明にいらして下さいな』


 居心地がよいままに、今の関係を続けて来たが、全てをハッキリさせなきゃいけない時が来ているのだ。


 取り敢えず、今の状況を管理人の杉田さん、理事長である俺の母親には伝えて置かなければならないな。


 ガチャッ。


「今帰りました」


「……。……。」


 意を決してシェアハウスの中に入り、人の気配のするキッチンへ向かった。


「杉田さん、本当なら、明日帰宅するところすみません。訳あって、途中帰宅する事になりまして……」


 キッチンでしゃがみ込んでいる杉田さんに、気まずい思いで事情を説明しようとした時……。


「うっ……。ううっ……」


 !??


 脂汗を流して呻いている杉田さんは明らかに様子がおかしく、彼女に問い掛けた。


「どうしました? どこか痛いんですか?」


「あっ、さ、里見くん……。 ううっ……。ごめん…なさいねっ。キッチンの整理をしようと……したら、腰やっちゃったみたいで……」


「……!」


 見れば、彼女の足元に、重そうな米びつが横倒しになっている。


「病院に行きましょう!」


 すぐに救急車を呼び、杉田さんに付き添って俺も病院に向かう事になった。


        ✽ 


 それから、1時間後──。


「いやぁ、里見くん、この度は母が迷惑かけまして、本当にすみませんでした」 

「いえ、症状が比較的軽いものでよかったですね」


 あれから連絡を取って、飛んできた杉田さんの息子さん(以前のシェアハウスの管理人でもある)と俺は、ぎっくり腰の処置を受けて休んでいる杉田さんを見遣りながら話をしていた。


(一応母、りんご、宇多川には杉田さんの状態についてはメールで知らせていた)


「ただ、安静が必要という事なんで、家で休ませますわ。その間、シェアハウスを空けてしまう事になり、大変申し訳ないんですが……」


「ああ。それは仕方ないですよ。完治するまで家でゆっくり過ごして下さい。母と他のシェアハウスの住人には俺が伝えて置きますんで……」


 すまなそうに言う杉田さんに俺はそう言い平気な顔を保っていたが、病院を出たところで疲労がピークを迎え、その場に座り込んだ。


「ったく、今日はなんて日だよ……!」


 杉田さんが管理人として来てくれたおかげで、ようやくシェアハウスの体裁が整って来たのが、振り出しに戻ってしまった。


 以前は管理人不在でもなんとかやっていけていたので、生活そのものは大丈夫だろうが、風紀委員に知られるとマズイ不安要素が増えた事に変わりはない。


 チャラリラチャラリラ……♪


「!」


 そこへ携帯が鳴り、画面を見れば母からの着信があった。


 母はかなり心配していたが、症状がそれ程はひどいものでないと伝えると、安堵していた。

 杉田さんの今後と管理人がしばらく不在になる状況についても相談した。


『しばらく私がシェアハウスに顔を出すようにするわ。

 浩史郎。今日はお疲れ様だったわね。ちょうどあなたがいてくれて助かっ……、あら? あなた、確か明日まで部活の合宿だったんじゃ……?』


「っ……。色々あって、途中帰宅する事になった。りんごは宇多川と一緒に宇多川の家に行っている」


『ええ? 一体何があったの?』


 驚く母に、気まずい思いで合宿のいざこざをなるべくぼかして説明すると、母はため息をついた。


『だから、森野さんと早く気持ちを通じ合わせなさいと言っていたのに……! 実は、許婚の件がお義父様の耳にも届いたようで、勝手に話を進めた事に激怒していらっしゃるのよ。あなたも説明の為に呼び出される事になるだろうから、覚悟しておいてね?』


「げっ。嘘だろ!」


 厳格な父方の祖父を思い浮かべ、思わず叫ぶ。


 何も解決しないままに問題だけが新たに山積みになっていく事にげんなりし、電話を終えても俺はしばらく立ち上がれなかったのだった……。



*あとがき*


 いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m


 今後ともどうかよろしくお願いします。

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