思わぬ雲行き 《森野林檎視点》
部員の飲み物を買いに来た松平部長の手伝い(持ち運び要員)として、私は談話室を出てすぐの自販機前にいた。
顧問の先生から飲み物代を預かっていたという松平部長と、何を買う悩んだけれど、結局無難に、全員同じスポーツドリンクになった。
ドコン……!
「えーと、これで、部員全員分あるか?」
「えーと……。1、2、3……ハイ。全員分確かにあります」
松平部長に最後のペットボトルを渡され、全部のペットボトルを数えると、私は頷いた。
「えーと……。男子用がグリーン、女子がオレンジにしますかね……」
二つの色違いのエコバッグに、ペットボトルを女子用、男子用とペットボトルを分けて行っていると……。
「すまなかったな。森野……。お前は、部長なのに、パシリをさせられている俺を見かねて手伝いに来てくれたんだろう?」
「え?」
気付くと、熱血な松平部長が背中を丸めて座り込んでいた。
「談話室で、率先して女子だけで里見を囲んで話し始める七瀬に、いつもなら「副部長の仕事しろ!」って怒るところなんだが、今日は何故か強く出れなくてな……。男子部員からも文句を言われてしまった」
「松平部長……」
松平部長は、深刻な表情で俯いている。
私が手伝おうと思ったのは、まさに、男子部員が不満に思うハーレム作りに協力してしまった罪悪感からなのだけど、言われて見れば、松平部長も、確かにいつもの勢いがないように感じられた。
「あの、松平部長も何かあったんですか? あっ。男子浴場に不審者が出たって聞きましたけど、もしかしてそのせいで……」
質問しながら不審者(西園寺先輩)の事思い出したけれど、松平部長は首を横に振った。
「いや、それもショックではあったが違う! 七瀬を責められなかったのは、その……。お、俺にも気になる相手……がいて、談話室でその人と話してみたいと心のどこかで思ってしまっていたから……だと思う……」
「え! 松平部長に気になる人が!」
言いにくそうにポツリポツリと話す松平部長に、私は目を剥いた。
「それって、テニス部女子って事ですよね?」
「あ、ああ……//」
……!!
なんと、女子だけじゃなく、まさか、松平部長まで恋の花が咲いていたとは……!
私はゴクリと息を呑み、追及してみる事にした。
「ちなみに、どなたか聞いても? あっ……!☠ も、もしや、浩史郎先輩の周りを囲んでいた女の子の中にいます……か?」
そうだったら、気になる相手が浩史郎先輩にハートな視線を送っている辛い場面を見せてしまった事になり、私の罪悪感はマシマシになる……。
「いや、その中にはいない!」
「あっ。そうなんですね」
きっぱりと答えられて、ホッとした。
「あれ、でも、それならかなり絞られますね〜。夢ちゃんは、運動神経抜群で誰よりも可愛いですし、西園先輩も(西園寺先輩なので)実は美人でテニスの腕前も凄いですし、どちらに惹かれるのも分かりますけど……」
私は残りの二人を思い浮かべ、ううむと考えていると、松平部長は大声で叫んだ。
「いや、違う! 俺は、その、森野、お前が気になっているんだ!!」
「へ」
一瞬思考が停止して顔を上げると、とても真剣な松平部長の顔がそこにあった。
「テニスの練習もいつも一生懸命真面目に取り組んで、俺のようなものにも気遣い、優しくしてくれる。お前のような奴が側にいてくれたら、どんなにいいかと何度も考えた。
森野、俺と付き合ってくれないかっ?」
「……!!!」
ゴトッ!
ゴロゴロッ……。
これ以上ないぐらいのハッキリとした告白に、私は動揺してスポドリの入ったエコバッグを取り落とし、床にペットボトルをぶちまけてしまった。
「あっ。ご、ごめんなさっ……」
慌てて拾おうとして、松平部長が先に腰を浮かす。
「あ、ああ。俺が拾うよ。ハイ。森野……、……!!」
「あ、ありがとございます。松平部長……、……!!」
ペットボトルを渡され、見上げると松平部長の顔が至近距離にあった。
「も、森野ぉっ……//」
「ひっ??!☠」
何故か、唇を尖らせた松平部長の顔がゆっくり近付いてくる。
私は突然の事にフリーズしてしまい、動けず、もう少しで唇と唇が触れ合うという時……。
一瞬、浩史郎先輩の顔が浮かんだ。
何故か分からないけれど、このままだと浩史郎先輩と離れてしまいそうな強烈な予感がして……。
「っ……!」
松平先輩を押し戻そうと、思い切り手を突き出したところ……。
「何をやってるんだ!!」
「「!!」」
松平先輩と私が驚いて振り向くと、今思い浮かべた当人・浩史郎先輩が、怒りを漲らせてそこに立っていた……!
*あとがき*
いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。




