二人の決意
「「クッソ野郎がァァァ――――ッ!!」」
一思いに叫び、頭が大分スッキリした。……考えると危なすぎるな。急に笑い始めたかと思えば、次は激しい怒号を散らす男二名。
後ろを振り返ると、案の定ミーナとリンちゃんの表情は「何やってんだコイツ等」を物語っていた。可愛い顔が台無しだぜ二人とも。
でもまあ。それよりも先に、二人には言わなきゃいけない事があるな。冬馬も同じ気持ちみたいだし。
「ミーナ、リンちゃん」
「な、何かしら?」
リンちゃんは小首を傾げて返事をしてくれた。可愛いなこのコ。
「守れなくてごめん。恐い思いをさせて……ごめん。俺たちまだまだ弱かった。皆を守るなんて……簡単に言いすぎてた」
「折角ミーナちゃんの護衛も任されて、パパさんにも認めて貰えたのに……不甲斐ねえ。結果的にゼルの救出は出来たけど、スッキリしねえ形になっちまったし……」
各々自らの思いを吐露する。何だか小さい時、父さんに悪事がばれた時みたいな気持ちだ。
「だから……俺たちは今よりもっと腕を磨く。次はアイツに負けねぇ! つーかもう誰にも負けねぇ!!」
「あァそうだとも。俺たちを生かした事を後悔させる勢いで特訓してやんよぉ!」
「おおっし! 気持ちもスッキリして何だか燃えてきたぜ! 今から訓練場に行って特訓を――」
「待ちなさいお馬鹿二人」
気持ちが高ぶってきたところにズビシッといった勢いで、ミーナからチョップを貰う俺たち。まだ魔力が使えないから、身体強化が出来ず、モロに痛みが走った。
「痛っ、どうしたんだよミーナ?」
「どうしたじゃないでしょう。自分たちだけ勝手に色々話した挙句、私たちには何も言わせないで話を終わろうとしてたのかしら?」
うっ。自分の行動を振り返ったらまさにその通り過ぎて何も言えない。
俺と冬馬の反応を見て、小さくため息をついたミーナ。
「先ず大前提に。私はアナタ達に守ってもらうだけの女で居るつもりは無いわ。多分レイアやアリア、リンだってその筈よ。けれどそれは、守って貰うのが嫌だとか、そんなお高い理由なんかじゃないの。……みんなで戦おうって、そういう事なのよ。だから……その、ね……」
最後の言葉をハッキリ話さず、口元をモゴモゴさせながら、リンちゃんを盾にして隠れるミーナ。仕方ないといった様子でリンちゃんがミーナの言葉を引き継いだが、
「……つまり、ミーナはだいごのことがだ――」
「ちょっとリン! 違うでしょッ!? みんなで強くなろうって言おうとして……たじゃな、い……」
リンちゃんに嵌められるような形で結局自分で言いきった。その時の表情たるや否や。写真撮って国王様にでも見せようものなら、いくらでも稼げそうだ。
こほんっ、と一つ咳払いを挟んだミーナが再びリンちゃんの前へ出る。その頬は未だ紅に染まっていた。
「アナタ達二人だけが今よりずっと強くなったとしても、今回のゼルのように人質にでもされては意味がないの。……私も、そうだったように。――だからこそ、みんなで強くなりましょう」
言い切って微笑を魅せるミーナ。まだミーナの頬は紅く染まっていたが、その微笑と頬の紅色が重なり合い、儚げな魅力が完成されていた。
思わず見惚れていた俺だったが、顔を逸らす事で照れた表情を隠すことに見事成功……した筈だ。
「大護お前、顔真っ赤だな」
「……うるへ」
ダメだった。
「……そろそろ、たろ兄ちゃんのとこ、行きたい。人も、煩くなってきた」
「あぁ、そうだったな。そういやあのヤロウ……ポイ捨てして行ったゴミに、太朗の居場所が書いてあるとか言ってやがったなぁ」
「あ、あぁそうだったな。えーっと……これか」
魔力も戻り始めたところでざわついていた人たちが、いつの間にか俺たちを囲うような状態でこちらを見ていた。うーわ。やっばい状態やでこれ。
「そこの君たち! 一体ここで何をしていたのかね?」
民衆を掻き分けるようにして出てきたのは二人の衛兵。マズイな……色々と物も壊しちまってるし、かといって現況のあのヤロウは既にどっか行ったし。
色々考えている最中に、ミーナが一歩前に出る。
「お騒がしてしまい申し訳有りません皆様。私はメリト王国第十五代目皇女、ミーナ=メリト=フィアンマと申します。この度は大変お騒がせしてしまい、申し訳有りませんでした。街の修繕費は後日国より送らせていただきますので、探りを入れないでいただけると有りがたいです。どうかご理解お願いいたします」
透き通った声でそう民衆へ訴えかける。急な皇女様の登場により、民衆の皆さんの声はざわざわからわいわい。そして最終的にはわーっ! というような歓迎ムードへと変わっていった。スゲェ、皇女スゲェ。
「これで大丈夫よ。さぁ、ゼルの所に行きましょう」
「王族やべぇ、つーかミーナちゃんマジパねぇ」
「今別の理由で盛り上がってるのはあれとして……良かったのか? 国王様に相談も無しにあんな事言って?」
「ふふっ、いいのよ。普段私の言った事を守ってくれないお父様への罰にもなるのだから」
女は恐い……そして娘は強い。全国のお父さん、頑張ってっ。
「それで? 居場所はどこと書いてあるのかしら?」
「あぁ。えっと……街の宿屋の二階、だそうだぞ」
「そ。じゃあ向かいましょうか」
その後俺たちは宿屋に無事に到着するが、部屋自体に何か罠があるんじゃないかと疑りをかけたが、結局何事もなく、疲れ切った様子のゼルを回収する事が出来た。
何が起きたのかを聞こうとしたが、再開に喜びすぎたリンちゃん渾身のタックルハグをゼルがまともにくらった影響で深い眠りについてしまい、その場では聞く事が出来なかった。
そのまま帰るのももったいないという話になり、そのまま空上都市で観光がてら一泊していく事となった。




