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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
学園の日常
62/148

ガールズトーク


 男子禁制。世の中にはそう言われる空間がいくつも存在する。軽いものなら教室の一角。重いものなら女湯といった具合に。今まさに、その空間が広げられている部屋があった。今回の空間は、一見すると軽い部類に値するものだが、当の本人達からすると、男子が聞いたら万死に値する(らしい)ものであった。



「まさかあのにぶちんダイゴにあんな事言われるなんて思ってなかったよー」



 部屋に備え付けられたベッドへ、仰向けに寝そべりながらそう呟いたレイア。昼休みの際のやり取りを思い出しつつ、先程くらったデコピンの威力を思い出し、顔を多少歪めながら、立派に育った自身の胸に枕を抱く。



「そういう事だったんだね。食堂を出ていく二人を見てびっくりしちゃった」



 昼休みに食堂を出ていく友人たちを見て、大慌てで昼食を食べた結果、多少の恥をかく事となったものの、一人の友人と急接近を果たすこととなったアリア。端から見ると筒抜けな彼女の想いだが、当の本人と、その想いを向けられている友人Dは気が付いていない。



「ふふー、びっくりして着いて来た結果、いい思いができてよかったねーアーリアーっ」

「ふえっ! そ、そんな事……」



 レイアにそう言われ、小さい身体をさらに小さくしていくアリア。同時に小さな身体とはアンバランスな双丘が、これ見よがしに主張される。



「おぉ。見事なモノですなー。ねっ、ミーナ」

「そこで私に振るのは些か困るのだけれど……それより、これは所謂ガールズトークかしら? やるのはいいんだけど、何で私の部屋なの?」



 何故か今回の場所の提供者となったミーナ。自身の部屋で行われる事になったガールズトークに不満な表情を見せているように見えるが、内心では気持ちが高揚していた。王族故に、今までその様な場所などなかったに等しいからだ。



「固い事言わないでよーミーナ。女子三人だけで集まれる機会なんてなかったんだしさー。……それとも本当にダメだった?」

「……そういう事では、ないけれど……」



 寧ろちょっと嬉しい。その言葉は飲み込んで、椅子から自身のベッドに移動して腰を降ろす。



「それで、何を話していたの?」

「おっ、やっぱりミーナも気になっちゃう?」

「いや、気になるって訳ではないのだけれ――」

「ダイゴがアリアの口元を拭いてくれた話」



 ミーナの動きがピタリと止まる。同時にミーナの脳内では様々な考えがよぎったが、辿り着いたものは、いつも通り何か勘違いを生むような言い方をしたのではないかという事だった。



「レイアちゃん! あれは、その……ダイゴくんが自分から言ってきたから、甘えちゃおっかなって思っただけで……」



 ミーナの冷静な思考もピタリと止まる。女の子の口元を? 自分から拭こうと言ってきた? あの男は何を考えて……。自分に対してあんな事まで言ってたくせ――



「あらー、珍しくミーナがフリーズしてる。そんなにアリアの事が羨ましかったのかな?」



 ワザとらしくアリアの双丘目掛けて肘を押し付けるレイア。俗に言うこのこのーというやつ。



「レイアちゃんだってトウマくんに好きって言われたって顔真っ赤っかにしてたのにっ!」

「ちょっとぉー!? 何でアリアがそんな事知ってるの!?」

「レイアちゃん今朝自分で言ってたよ? トーマが……トーマが……えへへって。凄く小声だったし近くにいた人にしか聞こえてないと思うけど」



 自分の醜態を聞きベッドに顔を埋めて叫ぶレイア。「それ私のベッドなんだけど」というミーナの呼びかけにも反応を見せず、兎に角何かを叫んでいる。顔はベッドに埋められて見えないが、見えている耳まで真っ赤なところをみると本当の話だろうとミーナは解釈した。



「その話の方が面白そうだわ。アリア、もっと詳しく話してもらえるかしら?」

「わああああミーナダメだってそういうノリはぁ!」

「あら、いいじゃないレイア。ガールズトークってこういうモノじゃないかしら?」

「そうだと思うけどぉ……」



 まさか自分が標的になると思ってなかったレイア。「今日はミーナとアリアの話をしようとしたのに……」と空しく呟いた一言は、二人の耳にもばっちり届いたが、聞こえないフリをして、レイアと冬馬の話で場が盛り上がる。一人を除いて――






「――つまりレイアちゃんはトウマくんの事が大好きって事なの!」

「そ、そうなのね。ありがとう……よく分かったわ」



 レイアと冬馬の話――ほぼレイアの想いがどれだけ強いかという話だったが――を聞いたミーナだったが、アリアがあまりにも熱を持って話すため、聞いているだけで疲れが出たのだ。その話のついでに、大護の口元ふきふき事件に関しても詳細を知り、少し安堵したと同時に、大護に八つ当たりする事に決めた。



「もう……やめて……」



 すっかりしおらしくなってしまったレイア。ペタリと座る姿を見ると、普段の活発な姿が嘘のように思えてくる。



「でね! レイアちゃんとトウマくんをくっつける為にいい作戦があるのっ!」

「いい作戦って何かしら?」



 「じゃーん!」と言いながらアリアがミーナへ見せたのは一枚のポスター。それはメリト王国で行われる催し物……地球で言う祭りのようなものの宣伝ポスターだった。



「これに二人っきりで行かせて、ラブラブになってもらうんだよー!」

「ら、らぶらぶ……」



 アリアの言葉で始まった『レイアとトウマ、くっつけ大作戦』だったが、ミーナの興味はすでに作戦から離れていた。



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