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【第三話】一難去ってまた一難

_____________________________________


村を出発し、ちょっとした草原を抜け山道に作られた歩道を歩きながら進んでいく。

今日は日の照りが強く木陰も歩道にないため、

イラは干し柿みたいな顔をしている。

出発してから30分はあんなに意気揚々と魔術や種族の話を自慢げに語っていたのに。

白髪で色白肌だから余計に太陽の熱を吸収しているのだろうか。


「おい、大丈夫か?」

「だ、だいじょぶ……だぜ。」

「もうすぐ木陰があるから、そこで一旦休憩するか。」


遠目に木が見えたのを確認し、イラにそれを伝える。

さすがに2時間ばかりこの熱に当てられていては堪ったものじゃない。

自分も中々につらい状況であることに間違いではない。


「だいじょぶだいじょぶ……。じっちゃんがいうにはもうすぐ、なんだろ……。

あ、あとすこしならがんば、れる……。」

「それならそれでいいが……。」


こいつ本当に大丈夫か、と思いながらも歩を進める。

確かに村長の話からすると、言っていたトンネルには、

もうそろそろ到着するはずだ。

何か隣でどうして私は白いんだ、ってボソボソと呪文が聞こえ始めたので、

早くに到着したいはところなんだが。


「ん?あれは?」


イラの呪文から少し歩いたところになにやら看板らしきものを発見した。

看板に近づいてみると、看板の奥にはトンネルの入り口らしきものがあった。


「おいイラ、トンネルに到着したぞ、大丈夫か?」

「かみがなくなりそうだったぞ……じっちゃんみたいに。」

「村長の髪の話はやめて差し上げなさい。」


この近辺からは木陰も多くなっており、涼むこともできる。

とりあえず、目的地には到着したので、一旦休息を取るとしよう。

_____________________________________


大体20分ぐらい休息を取ったのだろうか。

イラは完全に復活して、錆びて読めない看板を眺めてみたり、

木の周りをぐるぐる回っていたりウロチョロしている。

しばらくして、イラがピタリと止まり動かなくなった。


「どうかしたのか?」

「なーなー、なんだかこえがきこえないか?」

「……熱で頭でもやられたのか?」

「ちがうわい!ちゃんときいてみ!」


本当に熱で頭がやられたのだろうか、このちびっ子は。

まったく聞こえないが、仕方なく言われた通りに聞き耳を立ててみると、


「ぐすっ――――ふぇ――。」

「泣いている?」

「な?きこえただろう?」


ドヤドヤみたいな顔をこちらに向けてきて腹が立つので、とにかくスルーをする。

しかしどこから聞こえてくるのだろうか。

もう少し集中して聞いてみる。


「どうして僕が――――。ぐすっ――――。」


トンネルの入り口付近の岩の方から聞こえてきた。

若干高めの、少女の声のようだ。


「こっちだ、イラ。」


場所がわかり次第、別方向にいたイラをこっちに呼ぶ。

聞こえてくる内容が内容なので、急ぎ足で声の主のところに行ってみることにした。

声の主までたどり着くと、岩陰から様子を窺うように覗いてみるとそこには、

泣いている碧の髪の獣人の少女がいた。


「なんかいたか?」

「馬鹿、声を落とせ!」

「だ、誰っ!?」


少女の存在を確認するや否や、イラが普段通りの声でしゃべってしまい、

それに対しての自分の声でこちらの存在を気づかれてしまった。

少女は驚きの声を上げ、こちらの方を凝視している。

しょうがないので弁解するために、岩から体を出してみると、


「ひっ……うわああああああああああああああああん!!!」

「えっ?」

「は、はぇー……。」


体を出した瞬間、少女は目で追うのも精一杯の速度でトンネルの中に逃げていった。

あまりにも一瞬の出来事に自分もイラも呆然と立ち尽くしてしまう。


「まぁ、いいことあるさ!」

「言うな、何も言うな。」


肩にポンッと手を置いてくるイラのせいで余計にみじめさを感じてしまうが、

あの子がトンネルの中に入っていったのは気がかりだ。


「あの子が一人で入っていったのは心配だな。」

「んー、まー、そーだなー。」

「後を追ってみるか?」

「らじゃまる!」


そして、自分たちもあの子の後を追うように、

トンネルの中に吸い込まれていった。

_____________________________________


――トンネル内。


「あっ、あれはなんだ!?」

「あっ、おい!勝手に動き回るな!」


何やら珍しいものでも見つけたのか、颯爽と走っていくイラ。

自分も松明に火を灯しながら、後に続く。

しかし、目的のものを見つけたのか、急に立ち止まりボーっと立ち尽くしてる。


「ほぇー……。」


と声を出しているイラが眺めているものを確認すると、


「これは……線路にトロッコか。ずいぶん使われていないようだな。」

「なんだハク!しっているのか!きおくがないくせに!」

「……ここは昔、炭鉱だったんだな。だが、何かしらで廃坑になって、

魔モノの巣窟になっているようだ。」


ところどころにつるはしやらスコップが落ちている。

しかし、線路も道具も何十年前かのもので、かなり錆びている。


「ほえー。まぁよくわからんが、とにかくふるーいばしょだってことだな!」

「もうそれでいいよ。」


そういえば、以前から疑問に思っていたことがある。

自分の名前など忘れていたのに対して、

森で目覚めたときはポーションのことや剣の振り方を知っていた。

例外として魔モノや魔術、種族については知らなかったが。

つまり、どうやら自分は『記憶はないが、知識はある』ようだ――――。


「つまりはこういうことか……。」


再び本が光り始めた。

今度はどのようなことが書かれて描かれているのだろうか。

大きな城の絵の次のページに捲ってみるとそこには、こう綴られていた。


“その王国に一人の青年が住んでおりました。”


「一人の青年……?」

「んー?またほんがひかったのかー?」


イラに本を見せてみる。


「???」


イラが何言ってんだこの本みたいな顔でこっちを見てくるので、

とにかく無視し、あの子を探すために歩き始める。

_____________________________________


「いないなー。」


結構進んだのだろうか。

階段を降り地下一階に行き、そこからまた地下へ潜った。

現在は地下二階だろう。なかなかこの廃坑は広いようだ。

道中、骨の魔モノやネズミの魔モノなどが襲ってきたが、

イラの魔術と自分の剣でなんとか対処できた。

しかし、イラの魔術だけで対処できないところを見ると、

ここの魔モノは森の魔モノよりかなり強いようだ。


ある程度、進むと先陣を切ってガンガン歩いていたイラがピタッと止まった。

何かを見つけたのだろうか。


「むっ!なんだか、このさきにけはいをかんじるぞ!」

「気配?何のだ?」

「そんなのいってみないとわからん!とにかくひだりだ!」

「左か?行ってみるか。」


分かれ道でイラが突然左に気配を感じたらしいので、行ってみる。

道中、イラの直感力に幾度となく助けられてきた。

こうやって廃坑を難なく進めるのはイラのおかげといって過言ではない。

左に曲がった瞬間、微かだが聞いたことがあるような声が聞こえた。


「――――がな――――言うんだ。ぐすっ」


いた、あの子だ。

イラの直感の凄さに心の奥底で微塵に褒めながら、

今度は脅かさないように声をかけようとしたとき。


「ひっ!だ、だれ!?」


こちらの直感力もイラに負けていないようだ。


「やっ、すまない。脅かすつもりはないし、危害も加えない。

ただ――――。」

「き、君たちもどうせ【猟兵旅団】の一員なんでしょ!?」


猟兵旅団っていったい何のことだろうか。

それにこの子、手足が震えておりかなり怯えているようだ。


「んー?りょーへーなんちゃらってなんぞー。」


イラがひょこっと自分の影から顔を出し、話しかける。


「ひっ!も、もう一人……逃げるしかないよね……。」

「んー?なにぼそぼそいって――――。」


イラが言おうとした瞬間、脱兎の如く自分たちの横を通り過ぎていった。

またもや逃げられてしまったのだ。

そんなことより、気になることを言っていたな。


「猟兵旅団……か。」

「そいつらにおわれてるのか?」


あの怯え方、セリフからそう考えるのが妥当だろう。

とにかく、このまま誤解されるのもあれなので、追いかけて弁明するとしよう。


「まぁ、イラちゃんがけはいおぼえたからへーきへーき!」


とにかく、今はイラに任せるか。

_____________________________________


「おい、とまれハク。」

「ん?どうかしたのか?」

「なんだかいやなけはいをかんじる……。あのこじゃない。」


イラが珍しく深刻な顔を浮かべている。

魔モノか、あるいは猟兵旅団とかいうやつらだろうか。

とにかく、準備を整えてから気配のもとへ近寄ってみる。


「あ?誰だ、そこにいるのは。」


低い男の声で、かなり殺気を籠った声だ。

近づいた瞬間、こちらの気配を察知したのかこちらに向けて殺気を放ってくる。

さっきの子が言っていた、猟兵旅団の人だろうか。

弓を背負い、剣を帯刀して狩人のような格好をしている。


「待った、俺たちはただの旅の者だ。その殺気を静めてくれ。」


このままではヤられかねないので、素直に物陰から出て名乗った。


「チッ、別のガキどもか。今はお前たちにかまってる暇はねぇ。」


こっちを一瞥すると舌打ちをし、また何かを探しに歩いて行った。

おそらく、あいつにあの子は追われているのだろうか。

あいつがどこかへ行くと緊迫した状況は解かれた。


「あれはかなりヤバいやつだな……。」


最初に口に出したのはイラの方だった。

イラが冷や汗を流している、イラの直感がヤバい奴と察知したのだろう。

ああいうやつもいるのかと世界の広さを感じてしまった。


「あんなやつにおわれてるのか、あのこは!」

「あれは俺らでどうにかなる問題じゃないぞ。」

「なにいってんだハク!じっちゃんたちにたすけられたことをわすれたのか!」


そうだ、自分たちは心優しい人たちのおかげで、

こうやって旅に出ることができているんだ。

あの男のヤバさに気後れして、村長たちの気持ちを忘れてしまっていた。

自分も村長たちに恩返しのつもりで誰かの助けにならないと。


「そうだな。急ぐとしようか。」

「いいかおになったぞハク!らじゃまる!」

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しばらく歩き、階段を上り、歩きと繰り返し今は一階にいるようだ。

もうすぐ出口だろうが、結局ここまであの子もあの男もいなかった。

一体あの子はどこへ行ったのだろうか、捕まったのか。

と考えた瞬間――――。


「うわああああああああああああああああ!!」


「あのこだ!こっちだハク!」

「あぁ、急ぐぞ。」


出口付近からあの子の叫び声が轟いた。

あの男に襲われているのだろうか、イラと走って叫び声のほうへ向かう。


「だいじょうぶか!……なっ!?」


あの子のところへたどり着くや否や、イラが驚愕の顔を浮かべている。

イラの目線の先を見てみると、そこには大きな魔モノにあの子が襲われていた。

一つ目で黒い悪魔の羽を生やしたまるでデーモンのような魔モノだ。

あの子もデーモンの攻撃を辛うじて交わしているが、それで精いっぱいのようだ。


「行くぞ、イラ。準備はいいか!」

「らじゃまる!いつでもいいぞ!」


戦闘開始――――。

_____________________________________


「くぅ……つ、つよい。」


あの子から魔モノを惹きつけたはいいが、この魔モノの一撃一撃が重く、

また剣もイラの魔術も通用しない。

ターゲットはあの子からこちらに移ったのはいいものの、これほどとは。

しかも、魔モノも闇の魔術を使ってくるため、避けることに専念せざるを得ない。

30分ぐらいの攻防が続いただろうか、

魔術の大量使用でそろそろイラの体力も限界を迎えているだろう。

まさに絶体絶命のピンチである。


「どうするか……。」

「ハク……わた、しに……かんがえ、ある……。」


打開策を考えていると、イラが魔術を唱えるのをやめ、こちらに耳打ちしてきた。

かなり息遣いが荒い、大分消耗しているようだ。


「考え?」

「ごふんだ、ごふんだけ、やつを、ひきつけてくれ……。」


イラがこちらに真剣な眼差しを向けてくる。

何か策があるのだろうか。


「……わかった。やってみよう。」


そういうと、イラは何か目を閉じ、集中し始めた。

考えていてもしょうがないので、ここはイラにかけてみる。


「来いよ、化物!こっちだ!」


魔モノを自分に惹きつけ、イラから遠ざける。

その間、イラがぶつぶつと何かを唱えているのが聞こえた。

何か魔術を発動するつもりだろうか。

とにかく、魔モノの魔術を避けて避けて避けまくるが、

魔モノも逃げることを許さないように魔術と攻撃を繰り返してくる。

攻防をしているうちにやはり全ては避けられずに何発かもらってしまった。


「くっ、まだか!イラ!」


さすがにもう持たない、このままでは俺だけではなく、イラまでやられてしまう。


「おまたせだ!よくやったハク!

我は光の代理者、穿て!聖なる光の槍!“スターライトランス”!!」


イラが魔術を発動すると、魔モノに大きな光の槍が次々に刺さっていく。

魔術も剣も効かなかった魔モノが、うめき声を上げながらもがいている。


「どうだ……!」


そして、全ての槍が刺さり終わるともがき苦しみながら魔モノは消滅した。


「な、なんとかなったな。ん?」

「ふにゅぅ~。」

「お、おいイラ!」


どうやら、ガス欠のようで倒れてしまった。

頭から湯気が出て、目が移ろになって気を失っている。


「よく頑張ったよお前は。ん?」


イラをほめながら、背中に担ぐ。

その時に周囲を確認してみるが、どうやらあの子はいないようだ。


「俺たちが戦っている間に逃げたか。当初の目的は達成できたしまぁ、いいか。」


自分も魔モノにやられ、傷が多いが歩けないほどではない。

イラを担ぎながら、廃坑を抜ける。

_____________________________________


無事に廃坑を抜けると、草原と共に遠くに海が広がっていた。

そして、海の場所に次の目的地である、港町アクアヴェイルがあった。


「ここが港町アクアヴェイルか。」


あの後、難なくアクアヴェイルに到達できた。

イラは相変わらず気を失っている。

アクアヴェイルはハルフィードと比べてそこそこ大きく、人口も家も多い。

また港町もあってか船乗りみたいな恰好の人が多いように感じた。

とにかく今は疲れを癒すために宿屋を探すと、簡単に見つけることができた。

宿屋に入るために扉を開けると、宿屋の主人と誰か女性が話しているのが見えた。


「――――本当にうれしい限りです!」

「いえ、泊っただけですので……いい宿でした。」

「あなた様のようなお方が――――。」

「?」


宿屋の主人と話している人は水色の長い髪の女性だった。

どこかで見たことがある女性に首をかしげてボーっと見つめてしまう。

また、その女性はとても整った顔立ちで、絶世の美女と表現でき、

一度見たなら忘れることができないほど、可憐で優雅なオーラを纏っていた。


「それでは、主人。ごきげんよう。」

「はい!またお越しくださいませ!」


主人と話を終えた女性は扉の方に向かって歩いてきた。

扉の前でボーっと女性を眺めている自分に気が付いたのか、くすっと笑う。


「どうかいたしましたか?」


そして、こちらに近づいてきて声をかけられた。

それに対し、いきなり声を掛けられ、びっくりしてしまう。


「い、いや、何でもないです。」


拍子抜けされたような返事をしてしまい恥ずかしくなり顔が赤くなる。


「そう……それでは、ごきげんよう。」


そう言い微笑みながら女性は、自分の隣を抜けて宿屋を出ていった。


「おい、ハク。なにびじんにみとれてるんだ。」

「なっ!?お前、起きてたのか!」


あの女性のことを考えているといきなり後ろから声が聞こえ、驚いた。

いつの間にかイラが目を覚ましていたらしい。


「とびらあけたときからなー!」


と言いながら、背中からピョンっと降りた。

背中から降りた後はこちらを見ながらニシシと笑い、宿屋の主人の方へ歩いていく。


「起きてるなら早く言えよ……。」


なんだか変な誤解を生んでしまったような気がする。

これは後で弁解しておくとして、今は宿屋で手続きを済ませ、

ついでに馬車のことを聞くことにした。


「へい、いらっしゃい!」

「泊りたいんですが、部屋は空いていますか?」

「あぁ、空いているとも!料金は先払いだ。」


ハルフィードより宿賃は高いがこれが普通の値段だろう。

むしろハルフィードが安すぎるのではないだろうか。


「それと、主人。ここでグランマルス行の馬車が出ていると聞いたんですが……。」

「あー、兄ちゃん、グランマルスに行きたいのか?」

「?そうですが。」


なんだか宿屋の主人がばつが悪そうな顔をしている。

何か問題でもあったのだろうか。


「残念だな、今馬車は出てないんだ。」

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