第3章 30幕 奔走
「あれが……グランツ……」
「そうです、もはや彼は闇の眷属となり果ててしまった、止めるにはその命を絶つしかありませんわ。手伝って頂けますでしょうか?」
困った表情でイデアはクレンを見る。
「当たり前だよ! ここまで来れたのは二人のおかげ、今度はボクが力になる番!」
剣を構え、再度肉体強化の詠唱を始めるクレン。
「ありがとう……ございますわ」
イデアはクレンに本当に感謝していた、理由はどうであれここまで導いてくれた事に。
そして死ぬかも知れない戦いをあっさり承諾してくれる優しさに。
恐らくこの戦いが終わればイデアもフォーゴも消えるだろう。
そんな気がしていた。
「終わらせ……ましょうね」
誰に言うわけでもなくぽつりとつぶやいたイデアは自分にも強化の術を施す。
イデアは大きく息を吸い込み、
「行きますわよっ!」
「うん! がんばろうねっ! レミはそこで待っていて? 全部終わったら沢山お話しようね、レミに聞かせてあげたい事いっぱいあるからさっ!」
言い終わるとイデアとクレンは風となりグランツとの最後の戦いへ身を投じていった。
「そらそらそら! どうした? これでもゆっくり攻撃してやっているのだぞ? 軽く避けてくれないと面白くないじゃないか!」
グランツの激しい攻撃がフォーゴを襲う。
魔者と化したグランツのスピードは桁違いだった。
今のフォーゴは強化の術を三段階まで上げている、それでも攻撃を捌くので精一杯だった。
「しゃらくせぇっ! こちとら負けられねぇんだよ!」
咆哮と共にフォーゴは肉体強化をもう一段階引きあげ、グランツの剣を弾き返し懐に潜り込む。
「ほう? だがまだ!」
肌がむき出しになっている腹部めがけて剣を下から切り上げる。
それを弾かれた剣とは逆の剣で防ぐグランツ。
「こちとらまだまだあああ!」
防がれた刃はそのままに刀身を横に滑らせ、剣を握るグランツの手へと切っ先を向ける。
ドムッ!!
「ぐっふっっ」
グランツの反対の腕がフォーゴの脇にめり込んでいた。
剣を弾かれたグランツは、そのまま武器を拳に変え、がら空きだったフォーゴの脇腹へ叩きこんだのだった。
フォーゴはそのまま吹き飛ばされ階段の下へ転がっていった。
ゴロゴロと受け身を取りつつ転がり、床に叩き付けられる衝撃はなんとか殺せたフォーゴだったが今の一撃はフォーゴの体に響いていた。
意識を剣先に集中しすぎていた為、脇がおろそかになってしまったのだ。
「あぁ……俺の悪い癖だなぁ、カスチゴにも同じような事やられたぜ……」
思い切り膝蹴りを叩き込まれたのを思い出し苦笑いを浮かべるフォーゴ。
脇に負ったダメージを治療魔法で癒しながらどのように攻めるか決めかねていた。
「大丈夫? 結構ふっとんだけど」
「私達も参戦致しますわ!」
床に転がるフォーゴの横にクレンとイデアが立っていた。




