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戦場に舞う鷹

投稿前にタブ閉じてしまいました。どこ訂正したかわからない…。

 あの青く輝く〈鷹の眼〉に補足されると、背中に冷たい物が走る。

 便利すぎる固有スキルとは思ってはいたが、副次的に発生する効果もあったのは標的にされて初めて知ったな。

 うん、出来れば知りたくなかった。

 ヤバいタイミングがはっきりと分かるのは助かるが、その清涼感は夏だというのに割と何度も体験したくは無い類の物だ。


 そんな猛禽を眼に宿す姫武将は、必殺の一矢を砲撃で邪魔された腹いせにか、早くも次の矢を放とうとしている。

 そんな物理的な苦情は、是非、現在は山の上にお住まいの蘇芳の方までお願いしたい。


「まぁ、なんとも鷹らしく勤勉でしつこい事で」


 少しぐらい休んでも罰が当らないだろうに。大将はどっしり本陣で構えているべき。

 正月でテンションあがりすぎて出陣したはいいけど、気づいたら張り切りすぎて部下を置き去りにして、ぼっちで討ち死にした佐野さんて大名が昔いてだなうんぬん。

 兎に角、こちらの守矢娘みたいに大人しく飾られてやがれ。

 彼女はこちらの最初の後退の合図で、手はず通りに川向う山の上の社の本陣まで下がってもらっているので、既にこの場にいない。親父なんか線上にもいないで後方で別の仕事だ。


 そんなこちらの文句を知る由もない、戦場を大空に見立て自由に舞う鷹は、再度、獲物に爪をかけんと己の武器をこちらに向ける。今度は馬を走らせ、距離を詰めながら。

 その馬上の構えに、先程の様なエフェクトはなかった。

 先程の光学兵器的なものではなく、他の攻撃スキルでもないすぐに防御にも移れるようにか、最速の動作による最弱の攻撃を選択したのだろう。


「それでもかすっただけで俺は死んじゃうんだよな」


 先程のダンプにでも跳ねられたように周りの人間を巻き込みながら吹っ飛んでいく光景を思い出す。本来、人の重さはあんなふうにならないはずなのに。

 精度も呆れるほど正確だ、もう何年前か、少し同僚だった事もある、あの小笠原のひとりなら動くの馬の上のこの距離でも当てる事になんら問題はない。

 ご丁寧にも柵の合間を縫い、こちらへとささるコースなのは間違いないだろう。

 撃ちだされた矢が空気を裂いた。その音色は思わず耳をふさぎたくなるほどに不吉だ。

 そして、柵の間をくぐり抜けようかという瞬間。何も無い中空ではじかれ、勢いそのままに地面に突き刺さる。

 

 俺が、避けた方向に次を射かけようとでもしたのか、更なる矢を番えこちらを狙っていた弓を姫武将は下ろした。

 不審げな眼差しでこちらを睨む。


「心配しなくても、それを避けられる運動神経なんて、俺には装備されてないから」


 そちらの疑問に答えようにも、未だ、この台詞だって一人言になるだろう距離を隔てたままである。


 これはただの柵では無い。ポピュラーな陣柵とは一線を画した騎馬での攻撃を劇的なまでに軽減する〈野戦築城〉による馬防柵なのである。

 先程は『まきびし』を使った認識の差異を利用したが、ゲームのシステムの大枠はそのままで、本来の融通の利かなさは健在なのだ。


 といっても、馬の機動力を削ぐだけならポピュラーな陣柵でお釣りがくるほど十分な効果を出せるし、そもそも戦場での大量運用は織田や豊臣以外の軍ではなかなか見られない。

 そして、貴重な技能枠を削ってまで〈野戦築城やせんちくじょう〉を取得する手間や多額の銭をかける例も少ない。

 そんなマイナー技能、俺の幼なじみの家臣団に偶々、技能枠の数を持てあましている奴がいなければ知りもしなかった。

 だが、所詮は騎馬系攻撃に対して硬いだけなので、本来は他の防御と組み合わせたり射撃部隊を動員したりして単体運用はしない。

 更に、今回は馬の防御にのみ極端にステータスを振ってもらうように注文を出してある。

 従って、歩兵にまとわりつかれたらあっというまに、斬り落とされ突破されてしまうだろう。

 蘇芳の砲撃による後ろの混乱が収まるまでの時間稼ぎがせいぜいだ。

 そういえば、4発目の援護砲撃がないとなると、もう砲身の耐久が限界なのだろう。突貫工事の弊害だな。


 背中に武装用のハードポイントでもついているのか。慣れた動作で黒塗りの大弓を収めると手綱を固く握り直し、全力で駆けてくる。


 足元を逃げているこちらの兵など意に介さず、蹴散らしながら、更に速度を上げてこちらとの距離を詰めてくる。

 そして、馬防柵の10メートルほど手前、疾走する馬が一回り小さくなったかと錯覚した。

 四足を折りたたみ、ぎゅっと筋肉を凝縮させ、バネの様に力を溜めていたのだ。

 そのエネルギーを一気にはじけさせ、黒い馬影は力強く、そして高く跳躍した。

 馬の腹で頭上の日の光を遮られるのが分かった。軽く俺の頭上を超えるような、ふざけた高さ。

 馬という生き物はこんな機動はしないと思ったのは果たして何度目か、ぜってー、中身インパラかなんかと差し替えられているはずだ。


 その狙いは単純だった、跳躍し数百キロを超える馬体重と強靭な前足で、馬防柵を蹴り倒そうとしたのだ。

 まだ、一般的には普及しきっていない蹄鉄が木枠にめり込むメキリとした音がした。しかし、僅かにしなっただけで、その構造は揺るぎもしない。


「おいおい」


 4、5メートルは軽く跳んでやがりますよ。

 依然、馬体は柵を倒し込もうと空中に留まっている、その時、こちらを冷たく見下ろす目と、俺の目があった。あってしまった。

 なんというか、並みのホラーより怖いんですけど。夜道で追いかけられたらちびる自信があるレベル。青い眼だけが爛々と輝いて猛スピードでけたたましい足音を響かせながら命置いてけーとストーキングしてくるとか怖すぎる。

 妖怪・野馬追のまおいとでも命名しようか。


 しかし、長い体感時間ではあったが、実際はそれも一瞬のことだったのだろう。馬防柵の上部に突き刺さっっていた化物じみた主従は、やはり重力には逆らえず、突撃した慣性からも解放されてやがて地面に戻ってくる。

 ドスンと言う重量感のある音と共に、二、三度その場で軽く跳ねて体勢を立て直している、馬がたたらを踏む珍しい光景だ。

 しかし、矢の曲打ちが怖かったので、ちょっと高めに作ってもらっておいて良かった。一瞬ビビったぜ。


「…面妖」


 ぼそりと、そんな一言だけ残すと、輝きを失い元の灰褐色になった双眸は、スミレ色の長い前髪に印象が隠れてしまう。そして小笠原湖雪は諦めたように背を向けた。


 戦場にいるのかも忘れたのかまるで散歩をするかのような足取り。こちらの兵は慌てて馬から離れる。

 そのままゆったりと、小笠原湖雪は十メートル程の距離をとった。

 そこで、なぜか再びこちらに向き直る。


 そして、今度は加速せずに二、三歩助走をつけると、先程よりも柵側でふわりと大きな放物線を描くようにジャンプした。

 勢いはないが、あっさりと先程の高さほどに到達する。

 先程の暴力的な一撃とは真反対の、馬の背中に翼でも得たような見惚れてしまうほどに、優美な跳躍だった。

 まさか飛び越えようとでも言うのか、それでも、まだ柵の高さは2、3メートルほど余裕がある。不可能だ。


「え?」


 そこで、へとえの中間の情けない音を上げたのは俺の喉であった。


 ゆっくりと着地に向かうはずのその馬の巨体は、何も無い空中を踏み台にして、先程と同じ軌道で跳び上がった。


「に、2段ジャンプ」


 単体でならともかく、馬に乗ってとか、そんなスキルが存在するって聞いた事もねえぞ。

 茫然とつぶやく俺の目の前に、跳び上がった時と同じように音もなく降り立つ。


「そなた、うちの軍師と同じ事ようなことを申すな。では、迷わず行くがよい」


 誰かと比べ気安げに話す鷹。自然と腰から刀を抜く、数多の甲州武者を切りおろし、のちに〈甲破〉と名前を変えた小笠原重代じゅうだいの太刀〈千代鶴〉。


 そのまま、ゆっくりと振り下ろされる白刃の輝きを、俺はただ見送ることしかできなかった。


あれれ?すすまないぞ。このシュチュエーションで、迷わず行くがよいは「アスタラビスタ、ベイビー」とルビがふりたくなります。


重代は先祖伝来のという意味です。源氏と云えば重代の宝重。源氏と云えば大丈夫、ファ○通の攻略本だよ。絶許。


ちなみにスキルはクリエーションで作ればあるの精神が息づいています。使用には装備品に宿らせるとか、付き捨ての札にしたりとか方法は様々です。ただし燃費は悪い。

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