青林檎
四分割のラストになります。よし、やっと話が進められるというのが正直な所。
普通のとそうじゃないのを書いて、どちらをあげるか迷った結果、そうじゃない方でいきました。
指先ですっと、右の甲をなぞる。
むず痒い感覚に肩がびくっと跳ねる。
「ふふふ、ここが宜しいのでしょうか」
笑顔が、完全にカオスルートに入ってらっしゃる。
「おおっと、物凄い遠くに用事を思い出した!」
跳ねるように立ち上がる。蹂躙されてなるものか。
蓬さんを回避しつつ、初速から全力で逃走しようと、踏み出した右の親指に力を込める。
「っあ」
途端に足裏が痛み、走るどころではない。その隙に、「えいっ」長衣の袖を掴まれて、逃走失敗。逃さんお前だけはーとかなんとか。
「ほら、まだ治療の途中ですから、動いてはめっです!」
叱られた。俺の所為かよ。理不尽だ。不条理だ。理屈に合わない。
しぶしぶ脇息に腰を下ろす。今度は髪を払っておく事も忘れない。
「はい。いい子ですね」
屈辱のなでなで。この子、時折わざとやっているんじゃないかと思わなくもない。
すると、蓬が拘束を弛めたからか、座り直すと袴がずり落ちてきた。
「あらら、少し、袴の裾上げて頂いて宜しいでしょうか」
膝上の布地を、掴むと、ふくらはぎ辺りまで捲ってみる。
それを座りながら、ニコニコで見ていた蓬さんだったが、ふいに顔が耳まで真っ赤になってしまった。
「こら。なぜ、赤くなったし」
「あっ、えー、そ、その。なんだか、い、いけない事してしまっているようで」
言われてから気付く。これは巷でたくしあげとうたわれる行為である。
「すけべ」
直截的な言葉に、慌てて視線を逸らす我が妹背。
それでも、こちらにちらちら視線を向けては、俺のジト目に目を伏せたりを繰り返す。むっつりさんめ。
遂には居た堪れなくなったのか、自己弁明を始めてしまう。
「し、仕方ないですよ。だって、赤い袴の裾から覗く足首は、より白く見えまして扇情的なんですよ、ね?」
同意を求められても、凄く困る。
というか、いまや貴重な本来の体とほぼ変わらない部位なのに、地味に凹まされる。
両足を、脇息の隅に上げて、すすすと、裾でつま先から隠す。
赤い緞帳は指先まで降り、唯一の観客に演目の終わりを告げる。
「あー、あっ、あーっ…」
夏の最後の花火でも見送る様な、悲鳴に似た声を挙げる俺の嫁。
しょんぼりしたあと、視線を俺の目にようやく合わせる。
「仕方ないんです。普段見えない所が垣間見えますのって、すごいんです」
二時間ドラマの犯人みたいに、聞いてない事情を語られた。
一応、それは肯定してもいい。
本人にはナイショだけど、足洗ってもらっている間、ちょっと斜め上から見下ろすアングルを堪能させていただきました。
両手を動かす度に見えそうで見えないのが実に優美。
「あっ」
名残惜しげに注視していた事で、蓬はある事に気付いた。
「袴の裾、濡れてしまってますね」
そうならないよう気をつけて丁寧に洗われ拭われていたが、それでもいくらか水気を帯びてしまっていた。
「ごめんなさい。本当は、脱いで頂くべきだったんですが」
軽く握った拳を口元に添え、目を伏せる。
「その…やっぱり下のお着物は恥ずかしくて」
「えー」
不満そうに声をあげる。しらじらしい程の前科がある。
鎖骨かぷってやられたし、朝起きたら胸揉まれた事だってあった。
いまさら、どの口がおっしゃっているのかと、正しい抗議をしてみる。
「そ、それは、時と場合で違うんです。本当に違うんです」
目を><にして憤る。
これまでの俺に対するあんなこんなの能動的な乱行に心当たりはあるらしく、頬を真っ赤にしながら、明らかに勢いで誤魔化そうとしています。
純情なのか、大胆なのか、どうも計りかねるんだよなこの娘さま。
まぁ、どんな人間も首尾一貫した生き物ではない。特にこの年頃なんて、自分も固まってないのが当たり前。本人の言質通りいつだって感情の天秤は揺れ動くものなのでしょう。
一応、蓬さんの生態観察をライフワークとしている俺の見解としては。
少女らしい潔癖さと、人品の貞実さを基調としつつも、そういったものを嫌ったり、忌避したりはしてはいない。人並みの興味と関心がある。
むしろ、多感な他の情と同じく、比熱の高いものだ。ありがたいことに。
ただ、先程の言動からも分かるのが、そういう自分の姿を見られる事がとても耐えがたいと思っていることが問題なのだ。特に俺に。
蓬さんの持っている自身の理想とする嫁像とずれるらしい。
変な所も真面目なんだよな。もうちょっと肩の力抜きなよと言いたくなる。寧ろ、すでにさっき言った。
年齢よりはるかに大人びているが理性と感情の折り合いをつけるのが、今日のこれまでを見ている通り上手くないのだ。一朝一夕でも直るものでもない。俺に出来るのは伝え続ける事だけだろう。
ちなみにそういう所は、基本Sっ娘の彼女が油断している時や、火のついた時の脇の甘さに繋がるので、匙加減は間違えないようにしないと最強の敵を産み出してしまう。
加えて、そういう機微らしきものが分かった所で、こういった色事の交渉はどうすれば正解か結局よく分からないんだよな俺。
恋愛ごとにも作法があるらしいしがここまでの人生無縁もいい所だ。それはどこで学んでるんだろうな皆。
ただ、上手く切り抜けないと今後のパワーバランスがなし崩し的に大変になるのは確定的に明らかなので。
恥ずかしい以前に、辱められているのはこっちだからと主張しておくとする。
「もういいですよっ!事務的にやりますから」
あー、すねちゃった。鎮火失敗。どうにも不器用にも程がある、完全に経験不足を露呈。
先程の楽しげなのとは一転、ぷんぷん頬を膨らませて、ポンポンと薬草を包んだ布地をこちらの足に当てていく。
本人も理不尽と分っているだろうに、理解の無い伴侶に呆れるポーズを辞めない。後で凹む姿をたびたび見ているが、その強情さは微笑ましい。
と、笑っていられたのはほんのわずか。
先程の貴重品扱いから、少し乱れた手並み。それに影響されて、乱れた袴で手元がブラインドになるのが気に障ったらしい。
「もう、袴邪魔です。嘉さまが協力的でないので、事務的に脱がします」
おい、こら。まちたまえ。
制止する暇もなく、体当たりでもするようにこちらの腰が抱き込まれ、ひょいっと持ちあげられる。
不利になると実力行使とか、あなたは俺の幼なじみですか。
「うわっ」
こちらが驚いている間に、反対の手で、腰元の帯を、素早く解かれる。
なんとか逃げようと、じたばたするが。そもそも馬力が違うので、手遅れ。
所詮、もやしっ子なんて、一次産業従事者には収穫されるだけの代物なのだと。
ズリ下がる袴を、押さえようとするもの、体ごと懐に入られて、如何ともしがたく。
重力に惹かれ、緋袴が畳の上に広がった。
秋と共に森が色づくように鮮やかな赤が目に眩しい。自分のでなかったら、見惚れていただろうが、そんな余裕はなかった。
揉み合う間に、白衣の前もはだけて、体の正面を覆うのは薄手の襦袢だけになった。
やりとげたという笑顔を浮かべながら、脇息の上に着陸させる。
肩は半分むき出しで、鎖骨の下まで露わになっている。
裾は乱れに乱れ、右の膝頭が丸々顔を出してしまった。下手すれば腿までめくれ上がってもおかしくない。
慌てて色々な所を隠そうとするが、薄い生地一枚分は夏でも心もとない。
「とても綺麗ですから、そのままでもよろしいのに」
大きい目を細めて、ためいきをつく。憧憬や羨望と諦念で三つが込められた視線。
「わたしの腕と比べますと、こんなにも肌の色が違って…嫌になります」
整えた裾を申し訳程度にめくると、右手を俺の左のふくらはぎに添える。薄らと小麦色の肌と比べられた。
「いいなぁ…ううっ」
「蓬の肌だってもともと白いじゃないか。季節が変わればこれくらいにはなるんじゃないか」
袷の内側からみえる肌の色は新雪よりも、柔らかそうであった。
「きゃっ!あ、あのど、どこを見てるんですか」
ヤバいばれた。無意識にガン見してしまっていた。
「もしかして、ずっと見てたんですか」
胸元の布地を集めて、こちらの視線を遮ろうとする。
「ソンナコトナイヨ」
もしかしなくともそうなので、否定してみた。
「ううっ…」
なぜか、後ろ暗い犯行が、たったいま確信されたみたいです。なんでだろう。
目の端にみるみる、涙がたまっていく。耳の中まで真っ赤だ。
「先程、暴れなさるから薬草こぼれてしまいましたし、なんでそんなひどい事ばかりするんですか…」
取っ組みあった時に蓬が両手を使っていたのを思い出す。いつの間にか布に包まれた中身が畳に散らばってしまっていた。
というか、完璧に俺の所為になってる!
それでも、思い返すとぐちぐちと上げ足を取ったのが原因と言えなくもないので、困ったなと、頭の 後ろを掻こうとしたが、次の一言で指が止まる。
「ごめん、集めるの手伝うから許して」
「いいです。もう、わたしだっていじわるしちゃいますから」
そういって、また邪悪に笑う。
「ほら、効能はこちらに残っておりますので」
べっと、先程の様に舌を出す。中ほどが緑色に染まっている。
「ね」
後は分かるでしょ、と頬にかかる髪を掻きあげる動作が言外に何をしでかすかを伝える。
「動いちゃ、いや、ですよ」
俺ではなく脇息の上の足に、そう話掛ける。頬ずりするような距離、温かな呼吸がそのたび傷をなぞる。
俺の頬が瞬間的に加熱した。
そして、こちらが押しとどめる前に、始めてしまう。
四つん這いになって、更に目線を下げると、赤い舌先を伸ばす。
脇息に乗せられた足の先。一部分だけ、国を跨ぐ旅で痛み赤くなった敏感な場所。
そこを選び、少し躊躇したかのようにこちらを見上げた後、ゆっくり口づけた。
初めは、まるで騎士が貴婦人の手の甲にするような清廉な動作だった。
「…ちゅ」
生々しい水音がした。
その音に、やっている本人の方が驚いた。続けるかどうか、躊躇ったようが、もはや後には引けなかったのだろう。
こちらを挑発するように、体を小刻みに揺らしながら、患部の周りを丁寧に拭う。
そうやって何度か、優しく舐ったのち、名残惜しげに口を離す。
「あ…はっ……真っ白い足が、こんなにも赤く擦り切れてしまって可哀想です」
こちらを気遣う言葉さえ吐息さえ、刺激に代わり背中の神経をくすぐる。
普段では考えられない、清楚な彼女の淫らな行動に、全身が慄いた。
全身の毛穴から汗が噴き出るかと思うぐらい体温が上がる。
「蓬さん、やばいって、これ」
死ぬほどくすぐったいし、何より絵的に非常にまずい。
「な、なにがですか、わたしは正しく治療を行っているだけですよ」
すっとぼける。
「でも、その汚いから」
好きな人にそんな事をさせてしまう罪悪感から、止めようとする。
初めは、ちょっとした嫌がらせのつもりでしかなかった。
「だいじょうぶです。先程、心をこめて、洗わせていただきましたから」
「や、やめ――――」
「んっ」
今度はおそるおそる、つかず離れずの距離で、僅かに乾いた舌で幹部をなぞるだけ。
「――――っ」
言いかけた言葉は悲鳴を飲み込むので精いっぱいだった。
「動いてはいやです、いじわるしないで…んっ」
恥ずかしいと言ったその口でこんな事をする、そんな彼女に心ごと奪われてしまった。
その事を伝えたら、今度こそ蓬は泣くだろう。
だから、なんでもないと平静を装おうと努力してはみる。
そして、そのことまで、察しの良い彼女は間違いなく気付いている。
約束するまでもない、隠せない隠し事でしかない。
しかし、彼女は何も言わない。
熱心に、手を使わぬ愛撫を繰り返すだけ。
むしろ、彼女があれほど厭うていた、俺から見られている事さえも、次第に熱に変えていくのが分かった。
頑なだった胸元も、見せつけるかの様に、しどけなくはだけて、まるで挑発しているかのようだ。
さっきまで燃えていた羞恥の火は、より大きい炎の前に、いまはどこかもわからなかった。
人は複雑怪奇だ。結局、その時々、どの面の何を選ぶのか感情任せ。理でしか動けない俺にはたまらなく眩しく見える。
触れられるたびに、臍の下が熱くなるような未知の感覚。
膝を固く閉じ、自分の体を抱きしめる様に力を込めた。
「ダメです。力を抜いて下さい、ね」
内から外へと腿を撫でられ、そう諭される。
顔をあげた蓬の首から胸元に一筋汗の玉が流れる。
だめだ。扇情的な光景に目を奪われた。
すぐに行為を再開する。
こんなにも頑張ってくれている嫁の姿がこんなにも可愛い。それだけでいい、文句あるか。
体温が離れてしまうことを残念に感じた。そんな彼女に興奮していたんだ。
「これで終わりです」
薄手の布を軽く巻いて幹部を保護している。あっという間に両足ともに完了する。
名残惜しげに、じっと、つま先を見ている。
一分以上も経っただろうか。迷いつつも意を決したように声を発す。
「あ、あの!」
「は、はい!」
釣られて大きな声で返事をする。
「……ふ、ふくらはぎとかもお疲れでしょうから、治療を続けてよろしいでしゅか」
そんな必要は全くない。
先程とおなじ、蓬の自身すらごまかせない言葉だった。
でも、今度の俺は、否定する事なく、不平の声をあげる事なく。後ろ暗い取引にサインをした。
蓬の枷の一つが外れ落ちる音が聞こえた。
遠慮なく、襦袢の裾を大胆にめくりあげる。
そして右足を手に取ると。
いとおしげに、二本の腕で抱き込むように、撫であげる。
上下に膝から下を何度も視線を巡らせて。
「あ…おいしそう」
うっとりと恐ろしい事をのたまう。
かぷっ
そのまま吸い寄せられるように歯を立てる。
「ん…はぁっ…痛く…ありませんか」
小さく頷く。
自分が噛んだ痕を見ている。言葉は気遣いでも、瞳はその証を肌に残せた事を喜んでいた。
腰を小刻みに揺らしながら、嬉しそうにそこを舌で何度もなぞり、最後に強く吸う。
これは自分の所有物と、マーキングでもするように。
最後に唇を押しあて、二度動かす。
す
き
音はない。でも、確かにそう見えた。ぞくっ、としたものが背中を貫いた。
「んっ…あ…」
自分のでない声が漏れでる。
その声に蓬が腿をすり合わせる様に、きゅっと自身の膝をかき抱く。
ぶるっと、小さく身を震わせると、はぁと、強く深呼吸をした。
「あは…っ…嬉しい…感じて下さってるんですね」
稚い笑みだった。母に褒められた幼子の様な。
しかし、その奥の濃く貪欲な気配に、今度はこちらがぶるっと、身を震わせる。
「もっと声を聞かせて下さい…んっ」
なけなしの矜持で、首を振る。
「そうですか…では、もっと愛して差し上げますね」
感情が高ぶったのか、瞳を潤ませながら、獰猛な笑顔。
怯えは、俺は腰が抜けたように、脇息の後ろに転げ落ちてしまう。
それを見た蓬は、助け起こすでもなく。むしろ、全体重でのしかかり、肩を押さえつける。
顔から首筋まで、ゆっくり撫でると。見下ろしながら、こう宣言する。
「嘉さまがいけないんですよ。わたしをこんなに誘惑なさるから」
鎖骨の間に、優しく爪を立てる。
「…あは…ぁ…欲情してしまいました」
妖しい笑み。またよく知らない貌だった。
女の子は誰もがこうなのだろうか。なんで、十からいくらも数えない年でも、もう女の貌がすることが。
こちらの、表情に何を見たのか満足したように、まだ脇息の上に投げ出された足に、熱い愛撫を再開する。
「はぁ…触れるたびに、…はむっ…んっ…嬉しそうに全身で反応して下さるんですね」
これからおこることに未知の怖さとそして期待に、音を立てないよう唾を呑んだ。
「…やだ…可愛い。ね…もっと、わたしを感じて下さい…はんっ…」
今まで、舌や唇で濡らした所を一つずつ、正確に狂いなく指でなぞるアフターサービスをしていく。
どこを自分が撫でて、それが俺がどんな反応をもたらしたか彼女は全て覚えているのだろう。
反応が大きかった所を念入りに何度も指を往復させた。
そうしながら、誰も触れてない新しい大地に口づけを繰り返していった。
柔らかい口内。南国の果肉を思わせる暖かく柔らかいものが俺の肌をついばむ。
感覚だけをダイレクトに伝えるVR技術。現実で与えられる感覚以上のものが脳になだれ込んでくる。送り込まれ続ける多幸感に狂ってしまうのではないかと不安になるほどに。
常に何かと触れあう固い皮膚におおわれた足ではなく。柔らかく鎧うものの無い剥き出しの弱い部分。
赤く擦り切れた所を治療していたはずが、いつのまにか色々な所に赤い爪痕を残してしまっている。
「まだ、上の方もやります…ね」
いいでしょうかと。必ず同意をもとめる。それは彼女が、恐れていることの表れ。
その時の俺は、揺れる蓬の体を見ているだけで、頭の中がおかしくなりそうで。
自分が変な行動を起こさないよう戒めをかけようと、長い白衣の袖で、顔を覆う。
それでも、首は浅ましくも勝手にうなずいた。
結果として、人体の七割以上の情報源占める視覚を切り捨てた事は失敗だった。
粘度ある水音と、他人の高い体温が、混じりけのない無しに質量でもって襲ってくる。
噛み破られそうなほど強く歯を立てたり、赤子をあやすよりも甘く啄ばんだり。
ついこないだまで手をつなぐのもやっとだったふたりからすれば、何もかも目新しく、思い至った事を次々に試しているらしい。
そして、こちらの微細な反応を正確に汲み取り、よりよいものを学習していく。
建前は治療。そこから逸脱しないように。もっと、という蓬の言葉に頷く事と、こちらから蓬に手を触れないという暗黙の了解の上の行為。
これは泡沫の時間だ。ふたつの約束を破れば、今にも終わってしまう時間と、ふたりとも分かっていた。
要は、こんな事をしていても、俺たちは臆病だった。ここから先に進む事が怖くてたまらない。
だから、騙し騙し、ゆるやかな拷問のような時間を過ごすしかない。
ふくらはぎの後には、膝、腿裏と、もっと上、もっと上と同意を得るたびに、愛でる場所を変えていく。
より深く、より強く、より愛しく、より情熱的に体温を重ねた。
遂には、腿の内側付け根の拳一つ半程下にたどり着く。
そこには決定的な所を覆い隠すものがある。
貴志のレア防具『白梅』の布のお零れでしたててもらった、トランクス。
ゴムが無いので、輪っか状に布を縫ってそこに細紐を通し、臍下で縛っている。
それを解くために、手をかける。他の衣服にやったように素早い手つきではなく、こちらをじらすように。いつまでたっても完了しなかった。
温かい湿った舌先や、甘く肉を噛まれる感覚の期待はいつまでも叶えられなかった。
何故今になってそんなじらすのかと。袖の目隠しを取り、蓬の方を見てみる。
目が合う。にやりとチャシャ猫の様に笑うと、指先を繊細に動かし始める。
彼女は同意を待っていたんだろう。あくまで貞淑な自分と主張したいという策略にはまった事に気づく。
臍まで、細い指先を差しこむうと、見せつける様に襦袢を掻きわける。
そして、こちらのお腹に、頬を重ねた。
「…あはっ、あったかい」
振動がお腹をとおし体の中に響く。
そのまま顔を下に動かし、歯で見せつける様に元『白梅』を数センチめくり。逆に裾の方に指を這わせる。
優位性を示威する。こちらの無様さをとくと見せつけてから。続きを哀願して下さいと要求する。
そうしたら、あなたの想いを満たして上げましょうという交換条件を提案する。腰紐は未だ結ばれたままだった。
その屈辱に、熱は引き、慌てて足を閉じようとすると、引き返すのはダメですとばかりに指でなぞっていたところに口づける。
このままだと、伴侶の顔を強く挟んでしまうので、観念して力を抜く。
よくできました。と一文字一文字口の形をつくる。
その口でもっと触れてほしいと、願ったのを悟られないように目を逸らした。
蓬の諧謔心を満たすにはそれで充分だった。
脇息の上に上半身を投げだすと、膝を立てさせて折り込み自分の肩に乗せる。
そのまま赤く怪しく光る舌で、布に覆われていない、小指のつま先を可愛がりつつ。
右手の指は腰紐をすでに解いていた。そして、指をかけて――――
「ヨシー、ボク来たよー」
――――馬鹿が、ノックも無しに入ってきた。
「って!、ヨシが蓬ちゃんに変なプレイ強要してるぞ!」
だから、プレイゆーな。
という訳でサービス回&ドクターストップ。
セーフ…だよね。きっと大丈夫。
頑張ったこのタイミングなら言える。評価いただけると、凄く嬉しくてやる気が出ます。




