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えーと、原稿用紙換算でまた十枚超えたので再分割入ります。申し訳ない。


サブタイトルは、あげまきと読みます。分割する予定なかったのでタイトル考えてなかったの時に出てくる源氏物語です。変更の可能性が非常に高いのが特徴です。

「なななななな」


 俺の言語中枢が誤作動しました。


「あ、すみません。わたしとしたことが言い間違えました」


 何をどう間違えたら、そうなるのか論理的にご教授願いたい気もするが、間違えましたで済ませられるのならそれで良い。


「では、お着物を脱がさせて頂きますね」


 ふむふむ、言い方が変わって受動態になったのか。

 うん、むしろ、状況悪化!

 いや、良く考えてみるとふりだしに戻ったのか。先程、脚絆をストレージに入れた時にそんなこと言ってた気がするな。


 兎も角。


「そりゃ、やりたいことやれとは言ったけど、エッチなのは感心しません」


 ふたりきりとはいえ隣いるし、年齢らしく清く正しいお付き合いしないと駄目じゃないかと愚考します。レーディングがR−15指定だし。どきどき。


「どうされましたか?見たこと無いくらい嬉しそうですが」


 とりあえず、嘘吐いてみました。自分すら騙せないあからさまなのだけど。


 とまぁ、一応、動揺はしてみたが、どうせオチはあるはずなので、分からない事は訊いてみますか。夫婦の約束七ヶ条目が出来た記念に。


 そもさん。


「いきなり脱げと、その心は?」


「はい、足の事と、あとこの間逗留しました木曽谷では長雨の為に陰干しでしたから、ずっと気になっていたんです。明日も晴れでしょうからこの機会に一度しっかり洗濯して、火熨斗ひのしを当てさせて頂きますね」


 主婦的な意味の脱衣かよ!

 ちなみに火熨斗は炭火を使う昔のアイロンである。俺のストレージに入っている。というか持たされた。


「そんなことか」


 がっかりしたような、ほっとしたような。


「そんなことかって何をおっしゃっているのですか。それは妻の務めですっ!わたしのヨシさまにはいつも素敵でいてほしいので」


 ぽんぷんと肩を怒らせている。彼女にとっては譲れないポイントなんだろう。

 まぁ、俺のところを蓬に置き換えてみると納得。あー、たしかに、隣の子がより可愛ければ優越感を感じるな。

 蓬の場合は純粋な好意だけど、男って生き物はそこに作意が入るから駄目だよな、と思わなくもない。 まぁ、作意であって作為でないのは幸いとかなんとか。


「えーと、畳の上ではお脱がせにくいですので、何かお座り頂ける所は…」


 左右を見回して、部屋の隅に目を止める。

 とてとて、と駆け寄り、よいしょよいしょ、と小柄な体に一抱えもある木製の物を運んでくる。


「それは脇息きょうそく?」


 将棋などの対局の場でよく見る、肘かけ。

「いえ、こちらに引き出しが付いてますので種別的には寄懸よりかかりになります」」


「へー」


 現代じゃ脇息なんてほぼ使わないからな。種別なんてわからん。


「用途は変わりませんが女性が使う物ですね。社殿の方が気を使って頂いたのでしょう、うふふ」


「?」


「いえ、先程の話が早速出来ましたね」


「ああ、なるほど」


 出来ない事や分からない事を補いあってこその夫婦ってのね。


「ではでは、少々お行儀は悪いですけど、おかけ下さい」


 蓬は膝立ちで座ると。両手で、ぱんぱんと、肘を置く部分を厚く綿で覆った所を叩く。

 何だかその仕草が愛らしくて、ボーと見てしまう。


「もー、はやくー。意地悪しないでください」


 先程の感情のアップダウンの残滓か、いつもよりやや、おかんむりラインが下がり目なのだろう。

 大人しく従っておくのが吉かな。


 目の前のそれを蓬側に跨いで、座ろうとした時。


「いてぇ」


 足まで伸びた髪の毛をうっかり尻の下に引いてしまい。首が変な方向に曲がる。

 未だに三回に一回はやってしまうんだよなこれ。


 頭の後ろを気まり悪げに掻いた。改めて、髪を払い座り直す。指に引っかからず絹の様に黒紗は背を流れた。


「かっこつかないな」


「髪切るかな」


 座ると名滝のように足元の畳に流れる、それに視線に向ける。


 とんとん、と肩を軽やかに叩かれる。


「ん?」


 顔を挙げると、可愛らしい小さな手がちょこんと方に乗っていた。


「駄目ですから」


 肩に置かれた手より、妙なプレッシャーが生じる。


「…だって邪魔だし」


「絶対に駄目ですよ」


「え――――」


「駄目だとお伝えしました」


 押し問答もさせてもらえない。もはや、一文字分しか発言力はなかった。

 言論の弾圧。自由は死んだのか。語尾にハートマーク付けてるように言われると、何も言えやしないな。

 ためいき。わかったよという返事の代わりに吐く。

 蓬は勝ったとばかりに両こぶしを胸の前で「よしっ」と軽く握り勝利宣言。


「えへー。では、わたしはわたしにできることを一杯やって差し上げます」


 ささやかな胸元を張って居られる所、申し訳ないですが。


「え、いっぱいはちょっと」


 困ると苦笑。

 頑張りすぎるとあなた空回りするし。

 気遣いさんで世話焼きさん、かつ他人を喜んでもらうのが好きな人種なので、スイッチ入ると、例えるなら飼い猫を可愛がり過ぎて、ストレスフルに疲れ差す状況が発生させてしまう怖れもあるわけで。


 でも、楽しそうな顔を拝見いたしておりますと、俺の心的ダメージくらいなんかどうでもいいやーと止める為の言葉は胃の下までストンと落ちてしまう。


「…お手柔らかに」


 それだけを辛うじてなけなしの防衛本能はそう伝えた。


「はいっ」


 にこーっ。


「ところで、足っていつから気づいていたの?」


 山歩きによる深刻なダメージ。騙し騙し、隠し隠しの行軍をおこなったつもりだったが。気付きつつ、あるラインを越えるまで、意思を尊重するのは、なんとも彼女らしい。

 桶二つに布が沢山も手元に運んでくる。部屋に入ったときに視界の隅に気になったあれだ。

 立ちあがって手伝おうとしたら、めっ!大人しくしてくださいって叱られた。

 俺は帰るなりおやつを要求でもした欠食児童か。


 そんな俺の微妙な表情などお構いなしに作業を続けながら先程の話に戻る。


「もー、あたりまえです。嫁の様子の変化が分からなくて妻がつとまりませんよ」


 その括りまだ生きているのねー。字面だけみるとさっぱりわけがわからないよ。


「姿勢ですよ」


 こちらの変化とは何ぞと不思議そうな顔に、ふふんと鼻を鳴らして親指を立てる。


「ヨシさまの姿勢や動作は私の知る方の中で一番お綺麗なんですよ。それを見ているのも好きですから、変化があれば一目でわかります」


 自分ではわからんなー。見ようにも客観的にしか見えないものなので、いまいちだ。俺が蓬さんの素晴らしくいい感じな臀部を自然に追ってしまうようなものだろうか。

 そうだな、背が平均より惜しくも辛うじてちょっとだけ高くはないから。やや、フォローするためにも、いつも姿勢はよくと心掛けてはいる。 あと、苦笑いするしかないが実家がそういう所だった所為だな。

 

 運ばれたもの中、片方の桶から湯気がたっている。よくみると水面がほのかな青を帯びている。


「なにこれ?」


「先程、治癒効果のある術をかけて頂きました。『陰陽師おんみょうじ』である蘇芳さまに頼んだのですが、属性が同じ『水』であるカリンさまのほうがよいとお聞きしまして、カリンさまに」


 いつの間に。会合始まるまでに間があった時かな。こっちは蓬の様子の変化や不安定さに全く気付いてなかったのに。若干暗い気持ちになった。これは凹む。


「ああ、カリンは大概の事は出来るな」


 技能スキル枠が俺の知る限り三番目に多い十五枠。ちなみにニュービー状態の俺は三つ。蓬さんが四つ。貴志は空き枠入れて六つだったかな?トッププレーヤーでも十くらいじゃないかな。とにかく『青いの』は破格に多い。


 ちなみに一番多いのは、NPC大名細川幽斎ほそかわゆうさい。驚異の三十二枠である。


 この時代より今に伝わる和歌が最も多く残されている古今伝授をも受けた当代一の教養人。

 学問、茶道、料理、囲碁、猿楽、蹴鞠なども全て名人級に修めた才人だ。

 チャームポイントは、経歴に似合わずパワーキャラなところ、街中で突進してきた暴れ牛を素手で投げ飛ばしたりもできる凄い人。

 戦働きも素晴らしい。

 怪力の上に武芸百般。剣は、剣聖・塚原卜伝つかはらぼくでんに学び、弓は小笠原おがさわら流と並ぶ日置へき流、ともに皆伝。

 史実では細川を配下にした者は天下を制すともで言われた何でも出来る万能選手、文化人オブ文化人である。


 ただし、息子の育成だけは下手。宇野勝並みの歴史に残る大失策をかました。


「はーい、ばんざいして下さいねー」


 思索にふけっていたので、言われるままに反射的に手を挙げてしまってから赤面したが時すでに遅し。


 千早を一気に抜き取ると素早くたたむ。早い、手慣れている。残像が見えた程だ(嘘)。


 蓬はそのまま後ろに回ると緋袴の帯を弛め空間をつくる。腰回りを圧迫したものから解放され一息つく。

 左右の足袋の金具も外され、足が外気に触れる。


「よかった、あちらこちら擦りきれて真っ赤ですが、酷い事にはなってませんね。皮がむけていらっしゃるのも親指と土ふまずの上あたりだけです」


 袖捲りをして、どこからか取りだした紐で自らの左右の袖をくくると、湯気の出ていない方の桶に真っ白な布を潜らせ軽く絞る。


「痛かったら言って下さいね」


 そうは言うが、はーい、がまんですよー、ってにこやかに言うタイプなんだよな。

 

「っ」


 一瞬ひりっとした痛みを感じたが、しばらくするとほどよい冷たさが心地よくなってくる。


「カリンさまがかけて下さった術凄いですね。治癒効果だけではなく、保温効果、洗浄効果に加え美肌効果もあるとか」


 一本でOK系のコンタクトの保存液のすごい版なのだろうか。

 真面目に考えると、効能的には術と言うより薬草製作に近いのだろう。速攻性の無い回復剤の一種かな。体力は減って無いのでゲージはピクリともしないが、減っていればバーがおそろしくゆっくり動いているはずだ。

 材料がいらない代わりに術力を消費するタイプだと思うので、戦闘の面だけで考えると、回復効率がこの上なく悪い、はっきりいえば役立たずの完全に趣味の域のものだ。

だが、そう言ったものにこそ情熱を傾ける人もPC。NPCを問わず多くいるのがこのゲーム。

『青いの』も凝り性な洒落者なので、自分用の研究しているんだろうなと思う。


 断続的な刺激にも慣れてくると、妙にくすぐったい。此処で変な反応すると、多分悪ノリされるので堪える。

 目を閉じ平静を装う。


 すると、鼻歌が聞こえた。

 耳慣れたメロディー。貴志が機嫌のいい時にこっちでもよく歌っている時期外れの流行歌。

 アイドルの佐園六花さえんりっかがソロで出したシングル。冬の別れの唄。

 軽快なメロディに乗った歌詞が、うらはらに切なくて泣けるとか貴志が言ってた。興味なさげにふーんて答えたら、その日のおやつを出すまで不機嫌になったのを覚えている。


「楽しそうだね」


「はいっ、とっても」


 じゃぶじゃぶと、布を水に浸しては、丁寧に丁寧に、水晶でも磨く様に足を拭っていく。

 初めは傷口。次は爪。指の股やくるぶしまで。畳に足を付けるのが申し訳なく思えるほど優しくたっぷり時間をかけて磨きあげられていく。


「はい、ひとまずここまでです」


 誇らしげに手の甲で汗を拭う。自分の為に真剣な顔で頑張ってくれているのを、この距離で見ていたら、なんだか温かいものを覚えた。


「では次ですね。あ、ヨシさま私の荷物出してくれませんか」


 こくんと頷くと、数種類の袋をストレージから取り出す。


「そちらのですね」


 藍色のひときわ大きいものを渡す。手を入れると、何種類もの野草を取り出す。

 テキパキ作業していたと思ったら、急にしゅんとうなだれてしまう。


「体の治癒力を高めるものでしたが、そういえば調合の道具は持ちだしてないので…あの…その、お口の中で混ぜ合わせる事しかできないです」


 なん…ですと。


「わたしの口の中に入ってしまったものを塗る事になるのですが…その…お嫌ですよね」


 いえ、とんでもない、我々の業界ではご褒美です。


「気にしないで、俺の為にやってくれる蓬の何を厭う事があるだろうか。いや無い」


 すごい力強い反語表現になってしまったが、まだフラットな自分を装えているだろうか。


「いやです。ちょっとまた、きゅんとしてしまいました。ヨシさま、お優しいから好きです」


 膝の上で丸めた手に、そっと自分の手を嬉しそうに重ねてくる。

 えへへ、と座る高さの違いから自然に上目遣いになる

 慾望剥き出しの自分に、ちょっと、いやかなりの罪悪感を覚えたが、気にしない事にする。


「では、後ろ向きますので見ないでくださいね」


「夫婦に隠し事ナンテイラナイヨー」


 と、真摯に紳士的な振る舞いを心がけて、二三問答を交わし無事説得成功。


 数種類の葉を細かく裂いて重ねると、意を決したように口に入れた。


「はむっ」


 食事とかで数限りなく見ているはずの光景でも、注視してみると、また違った感想が生まれてくる。主に桃色方向に。

 音をたてないように、念入りにかみ合わせて、細かく砕く。

 もごもごと動く頬の仕草は舌を使って混ぜているのだなと興味深げに見つめていた。

 じーとみてると、耳まで真っ赤にして後ろを向いてしまった。


 本人わかってないが、邪悪な気配には気付かれてしまったのだろう。

 しばらくそうして背中を眺めていた後、今度は湯に浸していた方の布を軽く絞ると包む。

 布でつつんだ部分がが鮮やかな緑に染まっていた。


「すごいですよね。こうしますと舌がピリッとして、一刻くらい舌が緑になっちゃうんですよ」


「どんな色になるの?」


 おずおずと舌を出す。真ん中あたりがかき氷のメロンを食べたようになっている。


 よし、今日一番のえっちぃ絵頂きました。心の中でガッツポーズ。

 やったよ、エイドリアン。


「へー」


「では、おみ足、失礼します」


 俺の右足の踵を、自分の膝上まで誘導しようと、触れた時。


「ひゃぅ」


 ずっと触られたのが、一度時間置いたから、肌が敏感になってたらしい。くすぐったい電流でも流されたような違和感が背筋をかける。


 更に、その一瞬後。今度は冷たい悪寒が遅れて背中を走る。


 目の前の蓬。うつむいた表情はここからだと、前髪に隠れていて半分も見えない。

 ただ、口元が三日月状に禍々しくまがって、目に怪しい炎が灯ったのは分かった。


 あえて、言葉にするならこうだろう。あらあら、興味深いおもちゃをみつけちゃいましたよー、と。


「まて、話せば分かる」


 青年将校にそう諭した首相が、問答無用と射殺されたのは史実だったか逸話だっただろうか。果たして思いだせない。


「い・や・で・す☆離すものですか」


 じ、字が違いますですぞ。

ところで、ガンバと神戸が降格したわけですが、金も人も強すぎるので勘弁してほしい。ガンバはリーグ最多得点で降格とか、もう少しJ2の気持ちも考えて。


一応、脈絡のある話にいきますと。神戸の10番は大久保嘉人というのですが、うちのの名前をもらった元ネタです。字が目出度いのと、切れると見境なく噛みつくイメージからですね。どうでもいい話でした。

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