扇動者
俺の周りで大きなざわめきが生まれた。
「そ、それはいったいどういう意味でしょうか、桜殿。武田が我らを見捨てるという事ですか」
その場にいた全員に、風の早さで伝播する。
俺は何も答えない。
ざわめきが鎮まるまで、笑みを崩さず。正面だけを見つめていた。
場のイニシアチブを取るための小細工だ。出典はあまり宜しくないちょび髭の怪人なわけだが。能力だけで言ううならアジテーションにかけては人類史上指折りだろう。
無音に近くなった時。はじめて口を開く。
しかし、最初の一音を言う前に、声がかぶさってきた。
「…それは諏訪に選択せよ。という意味でしょうか」
唇にあてられた指を離し。こちらに視線で問う。
いきなり梯子を外されてしまったわけだが。
表情に出さす。寧ろ乗っかっていく。
「さすが信真殿。話がお早い」
内心、全力で舌打ち。
「ど、どういうことだ信真」
親が娘の肩を両手でつかみ問いただす。
この場面の絵だけ切り取ったら、実に危なく見えるな眉目秀麗な生徒に迫る社会科教師、とかどうでもいい事が思い浮かんだ。
「諏訪は武田に対して役目を果たせと、桜さまは御申しです」
「な、なぜだ。わ、我々は武田に忠実であったぞ」
守矢親子は諏訪における親武田筆頭だ。武田の支配の最大の協力者である。
西諏訪衆の矢島満清という禰宜が諏訪大社にいたが、そいつは反武田派で主導権を争っていた。諏訪の惣領家とその地位を狙う梟雄・高遠頼継との二重の争いに介入する形で武田は諏訪に踏み込んだ訳だ。
現時点で、手元にある諏訪姫と大祝。そして、諏訪大社には最大限に譲歩しているはずだ。
敗者の将を娶るなんて綱渡りしているしな。だからこそ、民に対しては便宜を図っているだろう。
諏訪大社の税制保障など、かなり配慮したはず。攻めとる事より治める事がやっかいだからな。
「御館様は姫君でも扱うように、征した諏訪にあらゆるものをたまはしました」
緑の髪を僅かに揺らす。依然、唇に人差し指の腹を当てたまま、言葉を訥々とつなぐ。
「我らはいつしか権利の上に胡坐をかき義務を怠ってしまったのでしょう」
当初の予定と進む方向が違うが、飲み込み早くて楽だわこれ。
「そ、それは、必要以上の武装を解除することで、武田に逆らう意思はないと示そうとしたからで。た、民の中には、反感を持つ者も多くいまして」
諏訪姫は慕われていたみたいだしな。
前者は娘に、そしきて後者は俺にいいわけをする。まぁ、分かってはいるわけだ。
「たしかに、戦後すぐはそれでもよかったのでしょう。ですが、あれから已に六年――――」
だから、自分すら騙せない誤魔化しをやっても何にもならない。
猶予はあった。それだけあれば小学生だってエロ本買える年齢になる。
「――――勝者の当然の権利として、必要以上の搾取をするどころか、諏訪の利権を出来る限りあなた方に残し、更には裁量権を与えた」
目を伏せる。
「それをあなた方は貪っただけだったのでしょう。町は肥太り。人は失う事に臆病だ。この状況になって慌てふためいているのがいい証拠です」
この期になって、軍備を固めもせず、根回しもせず、いざ切羽詰まったら、頭自ら動かなくてはならないとかナンセンスすぎる。挙句の果てに山賊に絡まれ死ぬところだったとか何のコントだ。
「大体、自国の防衛を他国に頼るなんて、この戦国ではあってはならない事です。此度、御館様には兵を動かすつもりは毛頭あません」
「ふざけるな!」
「俺達を何だと思っている!」
そんな声がまわりから上がる。
「で、ですが、我らはもう武田の一部で」
最後まで言わせず、被せる。
「諏訪は諏訪ですよ」
今回の話は議論でも交渉でも討論でも会議でもない。提案も要求も必要ない。反論や対案なんて出番は無い。只のあおりだ。それ以前に調整する利害なんてものはそもそもこちらには無いわけで。
だから、歴史の正しい方向にむけ、その気にさせればいい。
あるべき姿を思い出させればいい。
「では、我々だけでどうすればいいのです」
武田は兵は出さない。いや、出せないのだろう。
いまから、準備しても、一月はかかるはずだ。
従って、答えは簡単。
「あなた方は選択しなければならない。選択肢は実に分かりやすい」
指を二本立てる。ぶいなのだー。
「目の前の敵と戦うか、敵に従うか」
転生モノや異世界モノあとデスゲームもの。作品は数あれど、肝は主に一つに集約すると思っている。 主人公を肯定する事。詰まる所、読み手の全能感に訴えかける事。
そして、その全能感を刺激するのは、主に三つだと思う。能力。技術。情報。
能力は言うまでもなく、俺TUEEEEEであり優遇措置だ。
ところが、実際に巻き込まれてみると、優遇どころかマイナスにしか矢印がないのは、どこかの神様にもの申したいところではある。現実はかくも厳しい。まぁ、それは置いといて。
二つめは中世から近世への技術シフトが大きなウェイトを占める。
青銅器は鉄器にどうやっても勝てないから。
このゲームでも割と重要な要素だ。ゲーム期間ごとにリセットはされるが一定のアイテムは能力同様引き継げるので、種もみやオーバーテクノロジーじみた何かを作成して残しておくと、わりと影響力がある。培ってきたノウハウも有用だ。
そして最後に情報。ケン・グリムウッドやハインラインやデロリアンのあれらを持ち出すまでもなく、歴史を知っているというアドバンテージであり、それをひけらかす事による全能感はたまらない。
まさにその結果を知っているから、神の視点の話ができる。歴史の正解が分かればそこに追従すれば間違いないわけだからな。
全部を引っぺがされた俺の状態で、唯一にして最大の武器はまさしくこれだろう。
だが、歴史的視点有するのは俺一人ではない。これは忘れてはならない。多くのプレーヤー達だ。
全ての思惑が歴史をゆがめて、思い通りになりようがない。
一応、大まかな流れは分かっても、個別の細かいところまで知っている人は少ないとは思うけど。
貴志なんて、未だに信長が統一して織田幕府が開かれたものだと思っている。
筋肉推薦あって良かったな相棒。
話を戻そう、今はゲーム開始時で、どうやら他のプレーヤーは諏訪の中枢にはいなさそうだ。敵は知らんが。
これは限りなく年表どおりに進む要素が揃っているという事だ。
ただし、武田にはわんさかいるのは間違いない。実際に知り合いの範囲のプレーヤーが現状何人も所属していることが『文』により確認できている。
実際に顔を突き合わせてはいないので情報は少ないが、援軍で武田がしゃしゃり出てくると不確定要素が増えて面倒になるくらいだ。
まぁ、この時期の戦争イベに参加しようなんてもの好きは人としてあり得ない。
デスゲームな以上、さくせんは『いのちだいじに』以外には普通考えまい。
できるだけ、史実に沿わせる事がこれからの俺たちのアドバンテージを得るための助けにはなる。今回の巻き込まれっぽい事態の目標もとりあえず史実通り開戦に持ち込む事だろうな。
「…小官らを、試す御積りでしょうか」
高く通る声で真っ直ぐに問う守矢娘。
「では、仮に武田に叛を翻すという選択肢を選んだ場合。御使者さまはどうなると御思いで」
使者から死者になるじゃないかなぁ。うん、なんだかイマイチ切れの悪い冗談だ。
「実際に、我らのために兵を動かそうとしない。武田にいら立っている者もこれだけいらっしゃいます。それら各部会の代表が彼らです」
周りの十四、五人を示すように、長い袖の両手を持ち上げる。
まぁ、立場的にこちらから言われ放題にされているわけにはいかないし、守矢親子には諏訪を預かる者として武田に兵を出させる責任がある。
面子の話ではない。兵が動かなきゃ、民の怒りの矛先は自分達にになるだけだからな。ケツに火のついた中間管理職として当然だ。
「それも宜しでしょう」
だから、俺は肯定してみた。
さすがに驚く守矢娘。どういうつもりだ、と言外に伝える。
武田派であるはずの俺たちは小笠原を退けるという利害は一致している。
敵に従うという選択肢を俺が仄めかしただけでも裏切りに等しいのに、まさかそれを肯定するとは思わなかっただろう。
「またこのそっ首を差し出し、地べたに這いつくばって許しを請えばいい」
人差し指と中指を立て、顔の右から首をなぞり、袷に刺し入れる様に見せつける。
左の鎖骨をなぞるように、ゆっくりと艶やかに見える様に。最後に首元にかかる長い髪を払う。
「庇護者を売り安全を買うことなんて一度おやりになったのですから、やり方はご存じでしょう」
未練も負い目もあるんだよ。なんてね。失笑が口の端から零れる。
それまで押し黙っていた、怒号が群衆から飛ぶ。
「何て奴だ!」「おのれ!」「うわっ、性格悪っ」
殺気といえるくらいに膨れ上がる。瘡蓋にもなってない傷に塩をこれでもかと塗りつけ得たからな。
というか、最後の幼なじみ、後で校舎裏な。
「挑発はおやめ下さい。諏訪が武田を離れる事を望むはずなど御座いませんでしょう」
「いえ、そうでもないです。また、改めて取ればいいだけですから」
クスリ
「諏訪姫、いや御寮人ですね。あなた方が捨てた大義が手中にあるわけです。そして、大祝である満隣殿も手元に置いています」
できるだけ穏やかに告げる。我が子に子守歌でも聞かせる様に。
「名分があれば、次の武田に一切の容赦は御座いませんよ」
群衆の温度が下がった。圧倒的な武の力を忘れるには6年は短い。
「今一度は手心なく、迷いなく正しく蹂躙するのみですね」
満面の笑顔でそう伝える。
気味悪そうに人々がこちらを見る。最早、先程の怒りはどこかに置き忘れている。
誰もが一月もかからず武田に打ち破られた日を思い出しているはずだ。
武田からすれば、確かに諏訪が力を持ったまま武田の一部になるのがベストだが今のまま甘やかすより、高遠頼継と同じように既得の権利は縮小し最良を増やす事でも、武田にとって割と悪くないのだ。
「まあ、御安心ください。それはあなた方、民には関係の無い話です」
蕩ける様な声で謳う。鞭振るった後は飴ちゃんも用意しないとね。
「案じる事など御座いません。例え敗れても、また武田に頭を下げれば良いだけです。それ以上はありません。何者だろうと、民を滅ぼし尽くす事は出来ないし、する必要も御座いません」
自分の体に傷を付け、体力を奪うものようなだからな。そんな生命線を間引く様な愚者はいないだろう。
まぁ、一応、歴史には例外が常にあるわけで、張献忠とか近い所の年表で言うとポルポト派とか。
権力の一本化しようとして内訌を起こすレベルをはるかに超えた血の粛清がある。理屈では説明できないそんな人畜さんたちもいなくもない。
あ、そういえば武田の晴信君は信濃侵攻の二手めで諏訪から、東信を攻める際、笠原氏の佐久郡志賀城で撫で切り(皆殺し)行ったばかりですけどねー。老若男女容赦なしとかんとか、わりと危ない子です。
ちなみに、一応俺の見解は、笠原のバックボーンである上野の山内上杉の援軍の軍勢を壊滅させて晒し、城内の戦意を奪ったものを拡大喧伝されただけだと思うけどな。いずれにせよ、やるときにはやりすぎるきらいがあります。
「上手く武田を撃退出来れば良し。失敗しても、あなた方を代弁する担保がまた一つ減るだけで済みます」
にっこり。さて担保とは何のことでしょうか。
正解は目の前に。
担保親はびくっとなるが、担保娘は眉ひとつ動かさない。どうでもいいが担保娘ってエロいな。
「あなた方は、最も愛し慈しんだ姫を売った。それが未だに心に瑕瑾となっていますか。それがどうした事ですか」
宇宙で最強の台詞をアレンジしてみる。
「恥知らずであればいい。傲岸であればいい。不遜であればいい。厚顔であれ。不躾であれ。傲慢であれ。その場で風見鶏の様に己の利益を演じれば良い。一人一人が己を守る主であれ。おめでとう、それであなた方は武田の民です」
「となると、我らより、先に飛ぶのはあなたの首でもよいと仰いますか」
禰宜娘が口をはさむ。ちょっとむっとしているのが可愛いと言えなくもない。
「先ほど申し上げましたわ、肯定です。私の役目も果たせたという事です故。武田にとって死は誉れ。後に残る者に栄誉が形として与えられます」
死んだら褒美出るよ、という戦国らしい法が武田にはある。
犬死はない。誉れを残し黄泉路に行ける。故に死を恐れぬ価値観が甲斐にはあるのだ。
ただし、そのシステムのせいで、年老いたモノがじゃそろそろ参陣するよ→討ち死→子孫は出世のコンボをするので肝心の財政があぼんになるのは別の話。
甲斐はホンマに修羅の国やでー。
「意味無い話は、止めましょう。今の安全のために降伏したとして、対武田の最前線になるのは諏訪です。それゆえのその言動なのでしょう。それに桜様がおっしゃられた通り末姫様は武田に嫁がれている」
おお、保身に走る所から再開ですな。日本人はそうでないと。
姫の名前に群衆もその身を慮って罵声の矛先を治める。
「はい、生意気を申し上げました。まぁ、首になるのは私も出来れば勘弁していただきたい。まだ経験はありませんが、あまり気持ちいいものではないかとなぜか思っておりますので」
やりすぎましたが口で打ちのめすのが目的ではない、頑なになられても意味がない。
「先程の二つの選択肢は訂正します。頼真殿の言葉を借りるならば、今血を流すか、後で血を流すかですね」
「そして、私ども武田は僭越ながら前者をお勧め致します」
「頼真殿は、諏訪を武田の一部と仰られましたが、御館様の望みは諏訪が武田を支える一柱となる事です」
結局の所、親武田派、守矢親子の落とし所は開戦以外にないわけで。援軍の兵を引っ張り出せるかどうかが争点なので、それは個別で詰めれば良い話だ。
いや、そんな権限どこにもないけどねー。
というわけで、此処で話すべきは、頭より周りの有象無象とだけなわけで。
「今が時の曲がり角です。変革期であり、混乱期であり、革新期であり、小氷期です。人も、富も、糧食も、地位も、名誉も、土地も、富も望むばかりではいっこうに増えはしない。奪うか、奪われるか選ぶしかない」
「時代は変わる中、いつまでも元の形ではいられない。弱い所から啄ばまれる」
「このまま、諏訪は舐められたままでいいのですか。奪われるだけでよいのですか」
私が代わりに言葉として紡ぎましょう。
「小笠原勢のゆっくりした行軍を見てお分かりになりませんか。武威で圧力を当てていけば、跪き頭を擦りつけ大事な者を差し出して許しをこう何とも情けない方々」
「なんだと!」「ふざけるな!」
再び群衆が叫ぶ。
「私が言っているのではありません。今ここに迫る彼らが言っているんです」
飼いならされた狗とは矛を交えるまでもないと。
「それはあなた方の性根にあります。あなた方の庇護者たる諏訪はそのような弱さとは無縁でしたはず」
中興の祖、四大将・頼満に始まり。悲劇の主・頼重を経て。
そして、武田の最後の将星にして最期の主、諏訪四郎勝頼。
譜代の家臣が裏切る中、その勝頼に殉じた忠節の士・頼豊。
再起をはかり家を残した・頼忠。後の世に語られるべき武将が五代も続く。
江戸期に暗君が出て一時期ピンチになるオチはあるが幕末まで家を全うした。
「あなた方を大切に思い、この地を守るために神代より矛を取ってきた。大和の時代も、源平の争乱も、南北朝の大乱も、民のために戦ってきた」
千年どころでは無い、その長い長い幾星霜の刻。
「この地を愛し、民のために身を粉にして尽くした。だからこそ長い時を経ても、その行く末である諏訪御寮人をこれほどまでにあなた方は気にかけているのでしょう」
一人一人の目を見ていく。
「そして、まだ諏訪の志は死んでいません。少なくとも一人、戦闘で傷だらけになって必死で戦っている。そんな人物を知っています」
「…この、守矢様達の事か」
群衆の一人が言う。自分達の目に見える今の庇護者の名を。
「諏訪御寮人ですよ。貴方達の末姫様です」
だから、そのフェイタルな名を告げた。
ぎくりと全ての者が動きを止める。
「敗軍の将の娘を娶る事、家中の反発は想像以上です。彼女は敵地の針のむしろにいまも座り続けています」
その痛みの上の、安寧を知らなかったわけではあるまい。その矛先を武田にだけ向けただけで。
「なんのため。あなた方を、諏訪の地を守るためです」
今回の守矢の吊るし上げだって、ようは自分達の正当化のために、
「御館様は勝者の権利として、姫をかどわかしたのではない。己をも差し出す。その覚悟に負けたんですよ」
一人一人に対し強い視線をぶつける。
「妻になるとは母になる事。その子には此処を治める必然性があります。諏訪の子を諏訪に返す。武田の重臣たちには面白いわけもない」
奪った利権を分配せず返すなんて骨折り損以外の何物でもない。
「その過酷を知っていますか。己の父を殺した男に身を捧げるその屈辱が分かりますか」
歯ぎしりの音が聞こえる。拳を握る音が聞こえる。爪が白く掌に食い込む音が聞こえる。
「今まさに、兵を出さない御館様を疑念に思う者をいるかもしれません。武田に恨みも鬱屈も忸怩たるものもあることでしょう」
「だからどうした。御寮人の覚悟に比べると何とも浅ましい事」
我知らず自分の声で一番冷やかな音になった。いかんなぁ、自分の気持ちがいくらか載ってしまった。
「なのにあなた方民は、いつから武田に屈したのですか。小笠原や仁科の軍勢など、物の数ではない。少なくとも武田晴信自身はあなた方をそう評しています。この程度この姫の民には堪えもしないと」
姫の行為に価値を認めた。武田の勝利は最後の最後で足元を掬われたのだ。
「しかしながら、どうでしょう。いまあなた方を見ると、その判断は正しいか、疑問にも思えます。だから、私は御館様に代わりあなた方、諏訪の全てに問います」
出来る限りの声をあげる。
「古い血を持ちたる誇りある山の民よ!」
大和と争ったものたちの末裔。負けて血を流せど、従い土を食めども、頭を擦るりつけても、己の神を捨てる事など考えもしなかった。
この国の一番荒くて熱い祭りを今に伝える者達。
「あなた方は今の自分を誇れるか!」
一人の民の前で問う。守矢娘のオマージュだ。
圧倒されたように呆然とするだけの男に再度問う。
「どうした!誇れるか!」
否、違うと返事が零れる。
「誇りたる御柱祭を前祭に引き続き、本祭まで中止に追い込まれて、父祖に子孫に胸を張れますか」
別の一人の前で問う。否と応う。
一人一人、視線を交わす。正しく、俺の目を見返す者はいなかった。
最後に、全員に呼びかけた。
「では、あなた方。この私の顔の前で己の性根を問うてみなさい」
諏訪姫の似姿。自分達は正しいとまだ目をそむける事ができるか。
「自分たちだけでは無理だから助けて下さいとそれでも言えますか」
最後だけ、子供に諭すように優しく問うた。
押し黙る群衆のなかに確かにざわめきが生まれた。
そいじゃ、もうひと押ししとくかね。
「古来より、日本最強たる源氏の武者に対してであれ、諏訪の地は従う事はあっても、屈した事はあったか」
その時々で武を示し、権利を勝ち取ってきた歴史がこの地には堆積されている。
「いつまで、彼女一人に戦わせるつもりか。彼女を支えようという者は一人もいないのか!」
「小さい身一つにいつまですがるつもりだ。助けてくれる誰かをいつまで探して頼る気だ。戦って、勝って誇りを取り戻せ。祖先に出来て今出来ないわけがないだろ。結果を出せば、あなた方のかつて差し出した物もきっと取り戻せる」
いけね。口調がつい地になっちまってる。
まぁ、善い。ねだるな勝ち取れさすれば与えられんだな。これは至言だと思う。
疑念はあるだろう。全てが納得いったわけでもないだろう。所詮詭弁だ。穴もあれば、話を逸らしてもいる。根回しの無い状況で弁舌振るうなんて、負け戦も同然の失策であり恥にも似てる。
「さあ、己の足で立ち上がる者は一人もいないのか!」
だが、それでも火は付いただろう。未だ消せもせず燻ぶる物が彼らには確かにあるから。
「ここにいるぞ!」
喚声にも似た歓声が上がった。後に続く者もいる。それだけで俺の初陣はそれなりだったといえるだろう。
大きなうねりがここに生まれた。ここにいるのは各部会の代表、この後爆発となって町全部に広がるだろう。
あとはここから、守矢親子に協力しつつ安全にかつ多く利益を引き出すとしますか。
こういったもの書くの何気に初です。今後練習あるのみかなーと。
武田さんとこの目先の利益しか眼に入らない風見鶏外交は半端ないです。
28日。修正&サブタイトル。もうチョイ筆入れ直します。




