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※プロローグ※

 


 それは、学校の行事でバスで移動中、友達とスマホゲームをしていて浮かれている僕らに突然襲いかかって来た。

 揺れる車内、窓が割れる音、女子の叫び声、なにかが潰れる音、色んな音が聞こえてくるけど、全てに共通するのは決して良い音なんかじゃないことだ。

 どうしてこんな事になったんだろう。

 少し前までみんなとワイワイしゃべりながらスマホゲーム、"ユノ"をしていたのに。

 周りを見渡してみる。

 さっきまで大きな声で叫んでいた女の子は、前の席に頭が強くぶつかって血だらけになっている。

 前の席では土砂が入り混んで、律儀にシートベルトをしていた同級生たちを飲み込んでいる。

 理解出来なかった、僕は夢でも見ているのだろうか?

 僕が目の前の現実を受け入れる事が出来ないまま硬直している間にも、バスの中には勢い良く土砂が流れ続け、やがてバスの後ろに居た僕に向って流れて来た。


 「あ"っ!」

 『グシャ』


 僕は死んだ。




 「……ぃ」


 ぅん?


 「…ぉい」


 んんん?


 「おーい?」

 「!?ハッ!」

 「うわぁ!?びっくりしたっ!」

 「お前はだれだ!?」

 「お前だなんて失礼だなぁ、僕は……まー君たちの世界で言うところの"神様"だよ!」

 「え?」


 目の前に居たのは顔に無精ヒゲを生やし、一枚の布を腰に巻いた半裸のオッサンだった。

 

 「神…様?」

 「そーだよっ!天地創造から世界の終焉までなんでもできちゃう神様だよっ!」

 「僕は…死んだんですか?」

 「……あー、うん……そうだよ…」


 ヤケにしらけて言われたけど、やっぱり僕は死んだらしい。


 「僕は……これからどうなるんですか?」

 「んーとねぇ、ふつーは生前の得によって天国か地獄に行って貰うんだけどぉ、君達はなんかやり残した事がありそうだから別の世界、異世界に行って貰うよっ!」

 「異世界!?」


 僕は、突然神の口から放たれた『異世界』と言う言葉に心を踊らせた。

 『異世界に行って貰う』……それはつまり最近マンガ小説や、アニメなどで大流行している異世界転生では無いだろうか?

 

 「あっ、あの!異世界ってどう言うことですか!?」

 「ん?異世界は異世界だよっ!、魔法があって人が居て争い合ってる世界だけど……そーれがどしたの?」

 「いやぁ…なんでも無いっス!」

 「あーそうなの、まっ、頑張ってねー!」

 「はい!」


 それは先程の悲惨な事故の記憶を吹き飛ばす衝撃だった。

 まさか僕が異世界に転生するなんて夢じゃないだろうか?


 「あっ、そういえば僕の他に異世界転生する人って居ないんですか?」

 「さっき『君達』って言ったでしょ?、もちろん居るよっ!あの土砂崩れに巻き込まれた人達は全員異世界に行って貰うよっ!」


 どうやら僕は土砂崩れに巻き込まれて死んだらしい、いやっ!、それより異世界転生するのは僕だけじゃ無いらしい。

 来世でも友達に会えるかもしれないのは少し嬉しいな。


 「ん?、なーんかウキウキしてるね、君?」

 「そうでしょうか?」

 「いや、絶対ウキウキしてるでしょ、君?」

 「そんな事無いですよ」

 「うーん、本当にぃ?」

 「正直ウキウキしてます、すみません」

 「やっぱりね、神の目は誤魔化せないよっ!はーぁ、なんだか君らってつまらないなぁ、昔の人ってさぁ、人生やり直しって言われたら滅茶苦茶嫌がったんだよ?」

 「そうなんですか?」

 「その様子だと全く嫌がってないね」

 

 「………あっ、そうだ!じゃあこうすればいいじゃん!」

 「?」


 「君の体をオオカミにしてあげよう!」


 『えっ?』という疑問の声すら出せないまま、僕は神の左手から放たれた光に包まれていた。


 「あはははは、まるで神の様な発想だと思わない?あ、自分が神だったねっ!ハハハ!」


 気が付いた時には目の前の神が腹を抱えて大爆笑していた。

 いや、それより驚いた事がある…

 そう、自分の体はふさふさと毛に覆われて、よつん這いになった手からは鋭い爪が生えていた……

 

 「ヴァン!ヴァン!」

 「えー、なになに?『どうしてこんな事をするのか』だって?」

 「グルルル…」

 「まぁまぁ、落ち着いてよっ!よく君たちは言うじゃないか、神の気まぐれとか、あっ、その格好結構似合ってるよ!」

 「ヴァウ!ヴァウ!」

 「ん?『冗談はよしてくれ、早く元に戻してくれ』だって?嫌だよ、僕は今まで自分の作った物に自分から修正を入れた事は無いんだ、君だけ特別って訳にはいかないねっ!まぁオオカミ生活も楽しいよ、きっと!」

 「ヴァウヴァウ!グルルル…」

 「こらこら、あんまり神様に向かってそんな事言っちゃあめっ!だよ?僕は慈悲深いから怒らないけど他の人ならどうなるか分からないよ?」

 「グルルル…」

 「はい、良くできたね!それじゃあ異世界に行って貰うよっ!オオカミの人生…じゃなくて狼生を楽しんでねっ!」

 「ヴァウ!ヴァオオオオオオ……」


 僕はオオカミに姿を変えられて突然地面に出来た大穴に落とされた。




 「ふぅ、もう異世界に飛んだかな?いやー久々に神様らしい事をしたなぁ〜思えば最近こういうのはずっと部下に任せっきりだったから、これからは自分も働かないといけないねっ!」

 「失礼します」

 「はぁい、死神ちゃんじゃない!どしたの?」

 「地球の魂の数が少し減ったのですが、何か心当たりは無いでしょうか?」

 「ん?ないよ!」

 「そうですか、他を探してみます…」

 「んじゃ、がんばってねー!」




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一方その頃


 ドサッ!


 うう、ここはどこだろう…

 辺りを見渡してみる、『木』『茂み』『山』……

 うん、全然知らない場所だった。

 とりあえず周りを歩いて見ようと足を動かした時、気が付いた。

 自分の足が4本ある事に。

 そう…あれは夢でも幻でも何でもなく、辛い現実そのものだったのだ。

 

 まじか、そう思って近くの水溜りを除いてみる。

 そこには立派な牙を生やし、大きな耳を持ち、全身に黒い毛を生やしたオオカミが映っていた。

 やっぱり現実だったか。

 あの神めっ、なぜよりにもよってオオカミなんかに変えたんだ!しかもこんな山の中に一人ぼっちとか僕を殺す気なのか!?

 ・・・・・

 とりあえず、今は神に体をオオカミにされて山に不法投棄された事より、今後どうやって生きていくかを考えよう。

 今後は人間では無くて狼として生きるのだから、まずはオオカミにされた事によるメリット、デメリットを考えよう。

 

 まず『四足歩行』

 これは今の所最も僕にデメリットを与えるだろう。

 手が足に変わってしまったので人間の時より物を多く運んだり木に登ったりするのは難しくなるだろう。

 一方で走る速度や持久力は人間の頃より強化されているのでは無いだろうか?


 次に『牙と爪』

 これは単純にメリットの方が大きいだろう。

 敵に襲われた時、身を守る武器になってくれそうだ。


 最後に『視力と知能』

 これは生前と全く変わってない。

 たしか犬は一部の色が見えないんだっけ?

 あと狼の方が強いとされる嗅覚や聴覚も今のところ生前とあまり変わらない感じだ。


とりあえず、ここが何処なのか分からない現状あまりブラブラ周りを歩くのは危険だろうか?

 ……しばらくここでうずくまってみる?

 いや、この先どうなるか分からない現状むしろ周りを探索して情報を集めた方が良いだろうか?

 うーん、どうしよう…

 うーん…

 うーん………

 うーあああああっ!

 ここで何もしないより何か行動したほうが良い!決定!

 少し周りを探索しよう!


 こうして、僕は神様によってオオカミに変えられ、何も知らないこの異世界で生活(サバイバル)していくことになってしまったのだ。

 トホホ…

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