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クルーウェル・ワーカーズ  作者: 七篠敏明
7/16

[奇襲] : 白霧の咆哮

◆◆◆◆◆

馬車の到着まであと100秒。雪の積もった地面から、馬車が走る振動が足の裏に伝わる。おそらく誤差は±3秒未満だろう。上出来だ。


10...9...8...7...6...


馬車が角を曲がって姿を現す。馬は二頭、比較的小さめの馬車ながら、力強く疾走している。

獲物を前にした高揚感が腹の奥底からこみ上げてきた。


5...4...3...2...1...


馬車が目的地に近づき、減速を始めたその時だった。馬車の真下に閃光が走り、強烈な風圧を感じた。


バフッ!


轟音とともに白い煙が巻き起こった。俺が仕掛けておいた魔術因子(ジェム)(注1)が起動し、馬車の下にあった雪を全て気体に変えたのだ。結果、下からの水蒸気爆発で馬車は吹き飛ばされた。バランスを失った馬の悲痛な嘶きとともに馬車は横転した。


もくもくと蒸気が立ち込める。スプリッターを取り出し、生暖かい霧に包まれた馬車に近づく。この魔撃で搭乗者は死んだかもしれないが、確認しなくては。こいつだけは、こいつだけは確実に仕留めなければならない。


馬車に近づくと、うっすらと車の輪郭が見え、車輪がカラカラと虚しく空回りするのが聞こえてきた。歩を進めるうち、不意に足に伝わる雪の感触が消え、濡れた石畳が剥き出しになっていた。雪は円形に消滅し、馬車を持ち上げるほどの高圧ガスに変わったのだ。


血液を連想させる生暖かい白霧の中、横転した車の上で動く影を見つけた。なんとか車内から這い出そうとしている。おそらく排除対象。こちらには背を向けており、白霧が俺の姿を隠している。しくじりようのないチャンスだが、気が急く。今を逃せば一生復讐が果たせない、両親の無念を晴らせないような気がしてならないのだ。


俺は音もなく二歩で間合いを詰め、次の一歩で横転した車に足をかける。無防備な男の首筋が必殺の間合いに入っていた。


己の行いを悔いながら・・・死ね!


一直線にスプリッターを標的の首目掛けて突き立てた。

(注1): 魔力を封じ込めた人工宝石。特定の術式を発動させる固定魔術因子と、術者に魔力を上乗せする補助魔術因子が存在する。本文中で使われたのは前者。錬金術士が手作りで精製するのが本式だが、細かい因子を核とした大量生産の粗悪品も出回っている。

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