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月の秘め事  作者: 桃井
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力になりたい

日向は何も言えず、その場で黙りこんだ。すると突然、クスクスと言う笑いが耳に入った。

「何をそんな心気臭い顔をしておるのだ」

「いや、普通そんなの聞いたらこう言う顔するって」

「そうか......。優しいのだな。そなたは」

そう言って御影はにっこりと微笑んだ。

不覚にも、可愛かった。

「別に、そんなんじゃねぇよ...」

「そうなのか?」

「あぁ。そうだよ」

「......だがわらわは、そなたはいいやつだと思うぞ?」

なおもそういうため、日向は照れ隠しのためにうつむうつむいた。

「そなたはいいやつだ。だって―――」

御影はにっこりと笑った。



「この時代の者でもないのに、わらわの話を聞いてくれたではないか」



その言葉に、日向は一瞬思考と動きが止まった。

「おい」

「なんだ?」

「お前、今何て言った?」

「......わらわの話を聞いてくれた」

「違う。その前だ」

今、すごく大事なことを忘れていた気がする。今の今まで、すごくすごく大事なことを、ずっと忘れていた気がする。

御影は少し考えて、やがてはっとしたようにい言った。

「この時代の者でもないのに!だ!」

「うおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!!」

日向はおもいっきり叫んだ。

「ど、どうした!?」

「そうだった!俺はこの時代の人間じゃねぇんだよ!すっかり忘れてたよ!話についていくのに精一杯で忘れてたよ!!そうだよ!帰らなきゃだよ!!あぁ!でもあの話聞いて放っておけるかよ!?どーすりゃあいんだよぉぉぉぉぉ!!!」

「落ち着かんか!馬鹿者!!」

御影の一喝により、やっと正気を取り戻した日向だが、どんよりとしたオーラは消えてなどいなかった。

「そーだよ。俺ここの時代の人間じゃねー...」

「今さら何を言っておるのだ。そう言ったのはそなただろう?その...た、タイリップ?」

「タイムスリップ。いい加減覚えような」

「無茶を言うな。そのような難しい言葉を覚えられるわけがなかろう」

何で威張ってそんなこといやれなきゃならねぇんだよ全く。

「とにかくまず俺は帰る方法探さなきゃいけねぇし...でもこのまま帰るわけにも...って他のことに首突っ込んでる場合じゃなしい...」

「ウジウジするでない。おい!そなた!」

御影に呼ばれ少しだけ顔をあげる。

すると、さっきまで窓の近くにいたはずの御影が、いつの間にか日向の眼科にくる。正面から日向と向き合い、御影は言った。

「そなた、結局どうしたいのだ」

その言葉に、日向は一瞬黙り混んだ。

どうしたいかなんて明白だ。

だけど――――。

やがてしばらく考えて、日向はこういった。


「帰りたいけど......このままお前を放っておきたくない」


「.........え?」

「そりゃ、俺に何ができるのかって...分かんねぇけど...でも、死ぬかもしれないとか言ってるやつ放っておいて、自分のことばっかできねぇだろ」

そう言った日向を、御影は驚いたように見つめた。大きく見開かれた瞳が少しだけわなないていた。

日向はポリポリと頬を掻く。

「俺も、正直帰りたいよ。でも…そんな、話聞いて…俺の事お前は助けてくれたのに、俺がもいないってのも、釈然としない話だかはな」

「そな、た……本気か?」

信じられないというように御影が言う。

こちらを見つめてくる大きな目を見つめ返し、日向は微笑んだ。



「本気じゃなきゃ、お前の話聞くわけないだろ?信じたいと思ったから、俺も力になりたいと思った。それ以外、なんかいるか?」


その言葉がはっきりと、御影の頭の中でこだました。



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