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番外編2 レイスの人生 下

レイスさんの葛藤です。

その言葉を聞いて、娘が言った言葉を思い出した。



「私は父上が騎士だから騎士になりたいんじゃないんです!自分で決めました。貴族令嬢だからっておしとやかにしていたくはない!!私は自由に生きます!!」



何で騎士になりたいのかと聞いた時に確か、こう言っていた。

自由、か…。

わしは娘を自由に生きさせてあげていただろうか。

もしかしたら、窮屈だったのかもしれない。

だとしたら、その女の子も…。

しばらく考えていたが、

「お前の気持ちは分かった。だが、最後に質問させてくれ。答えようによってはお前に剣術を教えてやる。」

徐ろにそう言った。

女の子はびっくりしたように、それでも嬉しそうに顔を上げ、

「本当ですか!?」

と聞いてきた。わしの言葉が意外だったのか、目は見開いている。

そんな女の子を諭すように、

「まだ、教えるとは言っていない。」

と言うと、

女の子は分かりやすく、しゅんとした。

あまりにも分かりやすすぎて笑いそうになったが、表情を固くして、

「お前はこの店で一番良い剣はどれだと思う?」

と聞いた。

この店には一つだけ、現役時代にわしが使っていた剣がある。

少し古いが、一番良い剣だという自信があった。

常識的に考えれば、答えるのは不可能だろう。しかし、剣に詳しければ答えれる。

それに、この子ならば…。

と、希望を込めてそう聞いた。

女の子は少し間を開け、あっけらかんと

「分からない。」

と答えた。

その答えを聞いて、がっかりした。娘はすぐに気づいてくれたのに、と。

分かってはいる。娘とこの子が全く違う事を。

でも、どこかで期待していたんだろう。娘と同じように答えてくれる事を。

「そうか。」

わしはそう答え、あからさまに目を逸らすと、

女の子はある言葉を口にした。



「だって、一番良い剣なんて人それぞれだもの。」



わしは、思わず目を見開いた。

予想外の言葉だったからだ。

そんなわしの様子は気にも留めず、さらに女の子は続けた。

「人によって扱いやすい剣が違うのにどうして良い剣なんて決められるの?私には絶対分からない。」

女の子はさも当たり前のように言い切った。

確かに、そうだ。

わしにとっての一番の剣はこの女の子にとっての一番じゃない。

重すぎて持てないはずだ。

だから、この女の子にとっての一番はもっと小さい剣になる。だが、それだとわしには扱いにくい。

それにどう戦うかによっても使う剣は違うのだ。



そんな簡単な事に何で気づかなかったのか。

そして、それを10才そこらの子供に気づかされるなんて。

わしは恥ずかしいと思いながらも、面白いという気持ちが大きくなっていた。

大人のような考え方を持っているその子に対して。

さっきまでは、この子を娘と重ねていた。

でも、違うだろう。そんなもんじゃない。

この子は娘より大物になる。かなり強い騎士になれるだろう。そんな予感がした。

これから起こることを予想してしまい、思わず笑みが溢れる。

こんな気持ちは久しぶりだった。

思わず、

「やられた。そう来るとは思わなかった。」

と呟いた。

そして、

「毎朝、午前7時。この時間を守るなら教えてやろう。」

と言った。



その瞬間、女の子は破顔して嬉しくてたまらないという顔をした。

その顔は年相応のもので、大人びた印象が微かに揺らいだ。

その大人びだ態度に、どんな事情があるかは知らない。ただ、詮索はしないでおこうと思った。

わしも今までの過去を聞かれたら、困る。思い出したくない。

それはこの子も同じだろう。

そんな事を考えていると、ある事に気がついた。

「ところでお前、名前は?」

名前を聞いていなかったと思い、そう聞くと、

女の子の体はピクッと揺れ、そのあとも少し躊躇った様子を見せながらも、

「…セリス。私の名前はセリスです!」

決意したように大きくそう言った。



俺は考えた。

こんなに聡明な子がただの平民であるわけがない、と。

にもかかわらず、家名を名乗らなかった。

家名を名乗るのが嫌だったのか、

はたまた、本当に平民なのか。

この子の場合、前者だろう。でも、それにだって事情があるはずだ。掘り下げるつもりはない。

俺は別にセリスが貴族でも何でもいい。セリスという存在自体に惹かれたのだから。



と、まあこれがわしのセリスとの出会い。

今では、いろいろな困難を乗り越えて体術は、ほぼ一流と言ってもいいほどになっている。

後は、剣さばきだ。体に合った剣術を教えてやらないといけない。



セリスはこのまま死んでいくと思っていたわしに、生きる気力を与えてくれた。

恩人と言ってもいい。

だから、わしにもできることは精一杯やるつもりだ。

恩を返すべきだと思うし、セリスの成長は見ていて楽しい。

そう考えながら、亡き妻に想いを馳せる。



出来のいい弟子ができた。リアよりも優秀なんだ。

びっくりだろう。わしもびっくりだ。

本当は早くそっちに行きたかったが、もう少しここで粘る事にする。

優秀だが、あいつは危なっかしい上にトラブルを持ち込みやすい体質だからな。

だから、もう少し待っていて欲しい。

と。

次は本編です!!

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