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才能
右を見ても左を見ても幸せそうな人ばかり。
この場にいる誰よりも、私が不幸であることは明らかだった。
誰がなんと言おうと、私はどこの誰よりも不幸せだと、確信をもって言える。
自分が悲劇のヒロインでないことも、幸福なヒロインでないことも、はっきりと理解できる。私は誰かの何かになれない人間なのだ。何にも、なれない人間なのだ。
人の心にはきっと、特別になりたいという気持ちがある。
何かで、誰かの、特別に。
私の心にもあった。
そんな風に誰かに思われる、なにかを大事に思える、そんな自分の未来が。
見たことのあるそんな夢を、私はもう見ない。
夢から覚めたわけではなく、自分が現実のなかで夢を見るにあたう存在でないことを知った。ただそれだけのことだった。
夢を見られるのはそれ相応の人間だけなのだと、見てきた現実が、心揺さぶる情景が、私に強くささやいたのだ。
『足元を見てみろ』
と。




