第三章 盗賊討伐
魔法の修行を始めて二週間が経った頃、俺は冒険者ギルドへ向かった。
ギルドの掲示板には様々な依頼が張り出されている。魔物討伐、採取依頼、護衛任務……その中で、俺の目を引いたのは一枚の依頼書だった。
『盗賊団討伐 緊急』
依頼内容を読む。東の街道沿いで大規模な盗賊団が商人や旅人を襲っている。すでに十数人の犠牲者が出ており、早急な対応が求められている。盗賊の数は三十人以上。報酬は金貨五枚。
かなりの大所帯だ。普通なら複数の冒険者パーティーで挑むべき依頼だろう。
だが、実戦で魔法を試す良い機会だ。
俺は依頼書を手に取り、受付カウンターへ向かった。
「この依頼を受けたい」
受付嬢のリリアが顔を上げた。
「レオンさん!?この依頼は危険度が非常に高いですよ。盗賊団は三十人以上いるという情報で、しかも元傭兵も混じっているとか……一人では無理です!」
「大丈夫だ。俺に任せてくれ」
「でも……」
「リリア、俺を信じてくれ。必ず帰ってくる」
リリアは不安そうな表情を浮かべたが、最終的には依頼を受理してくれた。
「……分かりました。でも、本当に無理はしないでください。逃げることも勇気ですから」
「ああ、ありがとう」
俺はギルドを後にした。
情報によれば、盗賊団のアジトは街から東へ半日ほどの場所にある森の中だという。
俺は装備を整え、街を出発した。剣、防具、回復薬。そして、この二週間で覚えた魔法。必要最低限の装備だが、十一年の経験と新たに得た力があれば十分だ。
半日の道のりを経て、俺は目的の森に到着した。深く入っていくと、やがて人の気配を感じた。
木々の陰に隠れ、慎重に進む。すると、開けた場所に大きな砦のような建物が見えた。盗賊たちのアジトだ。
見張りが五人。巡回している者も何人かいる。アジトの中には更に多くの盗賊がいるはずだ。
三十人以上か……正面から行けば確実に囲まれる。
俺は夜を待つことにした。
日が暮れ、辺りが闇に包まれる。盗賊たちは中庭で焚き火を囲んで酒を飲み、大声で笑っている。ざっと数えて二十人以上。残りは建物の中か、見張りに立っているようだ。
「おい、明日はどこを襲う?」
「北の街道がいいな。大きな商隊が通るって情報があるぜ」
「へへ、今度こそ大金だ。抵抗する奴は全員殺しちまえばいい」
「女や子供もいるらしいぜ。楽しみだなぁ」
盗賊たちの会話が耳に入る。俺の中で何かが切れた。
静かに屋根に登り、全体を見渡す。三十人以上……確かに多い。だが、一人ずつ確実に倒していけばいい。
まずは見張りから。音を立てずに背後から近づき、気絶させる。二人目、三人目と順番に無力化していく。
そして、中庭の焚き火の前に姿を現した。
「誰だ貴様!」
盗賊たちが一斉に立ち上がる。二十人以上が武器を構える。
俺は冷たく言い放った。
「お前たちを討伐に来た冒険者だ」
「たった一人で?馬鹿が!殺せ!」
盗賊たちが一斉に襲いかかってくる。
だが、俺は準備ができていた。
手のひらに魔力を集中させ、イメージする。炎の球。
「火球!」
拳大の火球が飛び出し、先頭の盗賊の胸に命中する。男は悲鳴を上げて倒れた。
「な、何だ!?魔法使いか!」
盗賊たちが動揺する。その隙を突いて俺は剣を抜き、突進した。
最初の一人を剣で斬り倒す。二人目の攻撃をかわし、カウンターで喉を突く。三人目が背後から迫るが、振り向きざまに火球を放つ。
十一年の冒険者経験と前世の知識、そして新たに得た魔法。それらが融合した今の俺は、数の不利を覆すだけの力を持っていた。
剣と魔法を駆使し、次々と盗賊を倒していく。建物から飛び出してきた増援も、炎の魔法で牽制しながら対処する。
十分後、中庭には倒れた盗賊たちが転がっていた。
だが、まだ終わりではない。建物の中からリーダーらしき大柄な男が現れた。その後ろには十人ほどの盗賊がいる。
「てめぇ……よくも俺の部下を!」
男は大剣を構える。元傭兵だと言っていたのはこいつのことか。他の盗賊とは明らかに雰囲気が違う。
「お前たちが殺した人々の仇だ」
「うるせぇ!全員でかかれ!」
残りの十数人が一斉に襲いかかってくる。
俺は大きく息を吸い、両手に魔力を集中させた。この二週間で覚えた最大の魔法。
「炎の嵐!」
両手から放たれた炎が渦を巻き、襲いかかってくる盗賊たちを包み込む。悲鳴が上がり、半数以上が倒れた。
残りの数人とリーダーだけが立っている。
「化け物め……!」
だが、俺は容赦しなかった。剣を構え、一人ずつ確実に倒していく。
最後に残ったリーダーが大剣を振り下ろす。俺はそれを受け流し、懐に飛び込んで腹部に剣を突き立てた。
「ぐ……ぁ……」
男は膝をつき、そのまま倒れた。
静寂が戻る。三十人以上の盗賊団を、俺は一人で壊滅させた。
俺は倒れた盗賊たちを見渡した。
「悪党に情けは無用だ。お前たちが殺してきた人々の分、地獄で償え」




