第十七章 無音の襲撃
日が暮れ、夜になった。
盗賊たちは焚き火を囲んで酒を飲み、騒いでいる。
俺は透視で外にいる盗賊たちの位置を確認する。
小屋の周辺に二十人、見張りが十人。合計三十人が外にいる。
まずは彼らを全員無力化する。
俺は闇に紛れて空中を移動し、鉱山の上空に到達した。
そして、魔力を集中させる。
通常のマスク魔法は一人ずつだが、今回は範囲魔法として使う。
複数の対象に同時にマスク魔法を発動する。
「多重高圧ウォーターマスク!」
俺の魔力が広範囲に展開される。
外にいる盗賊たち三十人全員の顔に、水の膜が密着した。
「な、何だ!?」
「ぐぇっ!息が……!」
「助け――」
盗賊たちが一斉に苦しみ始める。
だが、声はすぐに途切れる。呼吸ができないのだ。
俺は念動力で彼らの体を押さえつける。暴れても逃げられないように。
十秒……二十秒……三十秒……
次々と盗賊たちが地面に倒れていく。
そして、俺は水を消さない。
一分……二分……三分……
完全に呼吸が止まるまで、俺は魔法を維持し続けた。
五分後、外にいた三十人全員が死亡した。
俺は水を消し、盗賊たちの状態を確認する。
全員、息をしていない。
「悪党には容赦しない。これがお前たちへの裁きだ」
俺は彼らの死体を念動力で一箇所に集めた。後で処理する。
次は鉱山内部だ。
俺は透視で内部の様子を確認する。
鉱山内部には三十人の盗賊がいる。
そして、労働者たちが鎖に繋がれて休んでいる……いや、倒れている。
彼らは休憩すら許されず、その場で眠らされているようだ。
俺は慎重に鉱山の入口に降り立った。
入口には松明が灯っている。
内部から盗賊たちの話し声が聞こえる。
「おい、外が静かだな」
「あいつら、また酒飲んで寝てんだろ」
「まったく、見張りもまともにできねぇのかよ」
俺は瞬間移動で入口を通過し、内部に侵入した。
そして、再び透視で盗賊たちの位置を確認する。
通路に五人、採掘場に十五人、休憩所に十人。
俺はまず通路にいる五人を狙う。
瞬間移動で背後に回り込み、一人ずつ高圧ウォーターマスクで窒息させていく。
一人目。音もなく倒れ、五分後に息が止まる。
二人目。同じく無音で窒息死。
三人目、四人目、五人目……
全員を確実に殺した。死体を通路の隅に移動させる。
次は採掘場だ。
俺は慎重に近づく。
採掘場には二十五人の盗賊がいる。労働者たちを監視しながら、自分たちは座って休んでいる。
俺は天井近くまで飛行し、上から全体を見渡す。
そして、再び多重マスク魔法を発動する。
「多重高圧ウォーターマスク!」
二十五人全員の顔に水の膜が密着した。
「うぐっ!」
「なん――」
盗賊たちが一斉に苦しみ始める。
だが、労働者たちは鎖に繋がれて眠っているので気づかない。
俺は念動力で盗賊たちを押さえつけ、音を立てないようにする。
そして、五分間魔法を維持し続けた。
五分後、二十五人全員が窒息死した。
俺は彼らの死体を念動力で労働者たちの近くから離れた場所に移動させる。
労働者たちはまだ眠っている。気づいていない。
よし、彼らは後で救出する。
まずは残りの盗賊を全員殺さなければ。
休憩所に十人、奥の部屋に二十人、最奥の部屋にボスと幹部十人。
俺は奥へ進んだ。
だが、今度は別の方法を使う。
マスク魔法は時間がかかる。もっと速く、確実に殺す方法。
念動力だ。
俺は透視で休憩所にいる十人の位置を確認する。
全員が横になって休んでいる。
俺は魔力を集中させ、念動力で十人全員の首を掴む。
そして、一気にねじる。
ゴキッ……ゴキッ……ゴキッ……
十人の首が同時に折れた。
悲鳴を上げる暇もなく、全員即死。
「十人……完了」
次は奥の部屋だ。
俺は慎重に近づく。
扉の向こうに二十人の盗賊がいる。酒を飲みながら騒いでいる声が聞こえる。
俺は透視で全員の位置を把握する。
そして、念動力を発動。
二十人全員の首を同時に掴み、一気にねじり切る。
ゴキゴキゴキゴキッ!
骨が砕ける音が連続で響く。
部屋の中から騒ぎ声が止まった。
全員が死んだ。
「二十人……完了」
残るは最奥の部屋。ボスと幹部十人だ。
俺は最奥の部屋の扉の前に立つ。
透視で中を確認する。
大柄な男がボスだろう。椅子に座って酒を飲んでいる。その周囲に幹部らしき九人が立っている。
「ボス、今日も大量に鉱石が採れましたぜ」
「へへ、このペースなら来月には大金持ちだな」
「労働者どもをもっと働かせましょう。死んだら新しいのを捕まえりゃいい」
俺の怒りが頂点に達した。
俺は扉を蹴破る。
ガンッ!
「な、何だ!?」
盗賊たちが一斉に俺を見る。
だが、次の瞬間。
俺は念動力で十人全員の首を掴み、一気にねじり切った。
ゴキゴキゴキゴキゴキゴキゴキゴキゴキゴキッ!
ボスも幹部も、反応する暇もなく首が折れた。
全員が地面に倒れる。
即死だ。
「これで……百人全員、殲滅完了」
俺は深呼吸をした。
盗賊団は全滅した。
だが、その前にやるべきことがある。
ギルドに報告するためには証拠が必要だ。
俺はゴーレム創造を発動した。
「ゴーレム創造、五体召喚」
地面から五体のゴーレムが現れる。
「お前たちに命令する。盗賊全員の首を切り落とし、ここに集めろ」
ゴーレムたちが動き出す。
外の三十人、通路の五人、採掘場の二十五人、休憩所の十人、奥の部屋の二十人、最奥の部屋の十人。
ゴーレムたちは効率的に作業を進める。
俺はアイテムボックスから大きな袋を取り出し、ゴーレムたちが集めた首を全て収納していく。
百個の首。これがギルドへの証拠だ。
残った死体は鉱山の奥深くに投げ込み、土魔法で崩落させて埋めた。
これで死体の処理は完了だ。
次は労働者たちの救出だ。
俺は採掘場に戻り、眠っている労働者たちを起こし始めた。
「大丈夫だ。もう安全だ。盗賊たちは全員死んだ」
労働者たちがゆっくりと目を覚ます。
「え……本当ですか……?」
「ああ。お前たちは自由だ」
俺は念動力で鎖を引きちぎり、全員を解放した。
五十人の労働者たち。男も女も子供も、皆がボロボロの姿で立ち上がる。
だが、彼らの体は汚れ、傷だらけだ。
「まずは体をきれいにしよう」
俺は新しい魔法を試すことにした。
水魔法と風魔法、そして治癒魔法を組み合わせた浄化の魔法。
「ピュリファイ!」
俺の手から淡い光が広がり、労働者たち全員を包み込む。
汚れが消え、傷が癒え、体が清潔になっていく。
ボロボロだった服も、ある程度きれいになった。
「これは……」
労働者たちが自分の体を見て驚く。
「魔法だ。少しは楽になっただろう」
「ありがとうございます……!」
次は食事だ。
俺はアイテムボックスから食料を大量に取り出す。
パン、干し肉、果物、水……街で買い溜めしていたものだ。
「食べろ。お前たちは長い間まともな食事を取っていないだろう」
労働者たちが涙を流しながら食べ始める。
子供たちは必死にパンにかぶりつき、女性たちは水を飲みながら泣いている。
男性たちは震える手で食料を受け取り、家族に分け与えている。
「ゆっくり食べろ。急ぐ必要はない」
俺は彼らが食事を終えるまで待った。
三十分後、全員が少し元気を取り戻した。
「さあ、街に帰ろう。もう二度と、こんな目に遭うことはない」
俺は労働者たちを鉱山の外に案内した。
外は夜明けが近づき、東の空が明るくなり始めていた。
「あなたは……一体……」
一人の男性が俺に尋ねる。
「俺はレオン。冒険者だ。ギルドの依頼でお前たちを救出に来た」
「レオンさん……本当にありがとうございます!」
労働者たち全員が頭を下げる。
「礼はいい。だが、お前たちの体では街まで歩くのは大変だろう」
俺はゴーレムを十体召喚した。
「ゴーレム創造、十体召喚!」
地面から十体のゴーレムが現れる。
だが、今回は人型ではない。
俺は魔力を込めて、ゴーレムの形を変化させる。
人型から四足歩行の獣型へ。そして背中に平らな荷台を形成する。
「ゴーレムトランスフォーム!」
十体のゴーレムが変形していく。
四本の太い足、頑丈な胴体、そして広い荷台。まるで前世で見たトラックのようだ。
ゴーレムトラックだ。
「すごい……これは……」
労働者たちが驚きの表情を浮かべる。
「これに乗れ。女性と子供を優先だ。全員乗れるはずだ」
十体のゴーレムトラック。一体につき五人は乗れる。
女性と子供、そして体の弱った男性たちが荷台に乗り込む。
全員が乗り終わるのを確認する。
「ゴーレムたちに命令する。街のギルドまで向かえ。速度はゆっくり、揺れないように慎重に」
十体のゴーレムトラックが動き出す。
四本足で安定して歩き、荷台に乗った労働者たちを優しく運んでいく。
俺は空を飛びながら、彼らを護衛した。
ゴーレムトラックは思った以上に優秀だ。凸凹の道でも揺れが少なく、労働者たちは安心して乗っている。
子供たちは初めての経験に目を輝かせ、女性たちは安堵の表情を浮かべている。
三時間後、街が見えてきた。
そして、俺は直接ギルドに向かうことにした。
街の人々が驚きの表情でゴーレムトラックの行列を見る。
「な、何だあれは!?」
「土でできた獣が人を運んでいる!」
「冒険者の魔法か!?」
ゴーレムトラックたちはギルドの前に到着し、停止した。
俺も降り立つ。
労働者たちがゴーレムトラックから降りる。
ギルドの前には既に人だかりができていた。
リリアが驚いた表情で飛び出してくる。
「レ、レオンさん!?これは……」
「北の鉱山から救出した労働者たちだ。五十人全員、無事だ」
「信じられない……本当に全員を……」
労働者たちがリリアに説明を始める。
「この人が……レオンさんが、盗賊たちを全員倒して、私たちを救ってくれたんです!」
「百人以上いた盗賊を、たった一人で!」
リリアが俺を見る。
「レオンさん……本当に……」
「依頼の証拠だ」
俺はアイテムボックスから袋を取り出し、ギルドマスターの部屋に向かった。
百個の首。これが盗賊討伐の証拠だ。
ギルドマスターが袋の中を確認し、驚愕の表情を浮かべる。
「百個……本当に全員を……」
「ああ。依頼完了だ」
ギルドマスターは頷いた。
「信じられん……だが、確かに百人分の首がある。そして五十人の労働者も無事に救出された。完璧な依頼達成だ」
ギルドマスターが金貨の入った袋を渡す。
「報酬は金貨二百枚だ。そして……特別ボーナスとして、さらに金貨百枚を追加する。合計金貨三百枚だ」
俺は金貨を受け取った。
「ありがとう」
「いや、こちらこそ感謝する。お前のような冒険者がいてくれて、この街は救われた」
俺はギルドを出た。
外では労働者たちが家族と再会し、涙を流していた。
俺はその光景を見て、満足した。
悪党を裁き、弱者を守る。
それが俺の正義だ。
力のない正義は戯言だ。正義無き力はただの暴力だ。
俺は両方を持つ者として、この世界で戦い続ける。




