第一部 異世界転生 第一章 覚醒
男は二十六歳のある日、原因不明の高熱を出して寝込んだ。
寝ながら夢を見た。見たこともない鉄の塊が超高速で走ってきたり、大型の何かを運搬しているような鉄の塊が超高速で走り去っていく。跳ね飛ばされれば即死は間違いない。そんな訳の分からない夢だった。
目を覚ますと熱が引いていることが分かった。
男は全て思い出した。
異世界からの転生者だった。どうやら俺は死んだらしい。夢に出てきた大型トラックに轢かれて即死だったようだ。とはいえ今の世界の記憶もある。どうやら前世と今世の記憶・知識があるようだ。
俺は貧しい村で生まれて小さいときに両親も盗賊に襲われて死んだ。村の大人たちに育てられ十五歳で村を出た。十五歳で冒険者ギルドに行き冒険者になった。今のランクはD。すごく強いわけでもなく弱いわけでもない。しかし経験が十一年ある。中堅の普通の冒険者だ。
改めて前世の記憶を思い出してみる。
中小企業のサラリーマンだった俺は、体力も知力もなく一般的な成人男性だった。ただ子供の頃からヒーローには強い憧れがあった。大人になった男がいつまでもヒーローに憧れて良い訳でもなく、専ら趣味と空想・妄想の世界に終始していた。ただ悪党には絶対の嫌悪を抱いていた。
前世では悪に対する力は無かったが今世ではあるような気がする。冒険者は自己責任だ。ここは剣と魔法のファンタジー世界。せっかく転生して異世界に来たのだ。悪党を成敗する人生をやってみてもいいかもしれない。
俺は窓の外を見つめた。朝日が昇り始めている。
俺は正義感が強く、博愛の精神を持っている。だが、悪党には容赦なく殺す。理不尽な暴力に虐げられる者たちの力になれればと考えている。魔物だろうが、盗賊だろうが、貴族だろうが、王族だろうが関係ない。
力のない正義は戯言だし、正義無き力はただの暴力だ。
俺は両方を持つ。




