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第1話:無職の最期と世界の選択

俺、佐倉悠斗さくら ゆうとは、三十歳を目前にしたしがない無職だった。大学を卒業して数年、就職氷河期を言い訳に、自室の椅子に根を張り、ひたすらネット小説を読む日々。特に「異世界転生」モノには目がなかった。


そんなある日、久々に外出した帰り道、交差点で大きなトラックが信号無視をして突っ込んでくるのを見た。反射的に体を動かそうとしたが、長年の怠惰で鈍った体は動かず、代わりに目に入ったのは、トラックの先に飛び出した小さな女の子の姿だった。


「――チッ」


咄嗟に体が動いたのは、女の子を守るため、というよりは、あまりにも「テンプレすぎる」状況に苛立ちを覚えたからかもしれない。俺は、まるでネット小説の主人公のように、女の子を突き飛ばし、次の瞬間、強烈な衝撃と熱に包まれた。


(ああ、俺の人生、本当に小説みたいに終わるんだな。トラックに轢かれて、死ぬ。特典は……あるのかな)


意識が遠のく中、俺の脳裏に、まるでゲームのステータスウィンドウのようなものが浮かび上がった。


【佐倉悠斗の魂にアクセスします。転生準備を開始します。】


【転生特典の選択肢:1つ選択可能です】


無限魔力マナ・リザーブ: 魔法を無制限に使用できる。


聖剣召喚ホーリー・ブレード: あらゆる敵を断つ伝説の剣を常時召喚できる。


万象改変ワールド・リライター: 存在の根本原理を改変し、あらゆる現象に干渉できる。ただし、発動には膨大な思考時間とエネルギーを要する。


(なんだ、これ?本当に転生するのか?しかもチート特典付き!やっぱり小説じゃん!)


思考は加速していた。悠斗はすぐに分かった。この三つの中で、最も強力なのは間違いなく三番目の**「万象改変ワールド・リライター」**だ。魔力無限も、最強の剣も魅力的だが、「存在の根本原理を改変できる」というこの能力は、すべてを凌駕する。


「選ぶなら……3番だ」


悠斗が心の中でそう決めた瞬間、ステータスウィンドウは光を放ち、選択肢3が確定した。


【特典『万象改変ワールド・リライター』を付与しました。】 【転生先の世界を選択してください。】


剣と魔法のファンタジー世界


機械と銃器のSF世界


現代に酷似した異世界


「もちろん、剣と魔法のファンタジー世界だ。どうせなら、思いっきり夢を見たい」


光が収束し、次に悠斗が意識を取り戻したとき、彼の体は全く別のものになっていた。


次に目覚めた時、悠斗はフカフカの苔の上に横たわっていた。


あたりは、鬱蒼とした大木が生い茂る森。太陽の光はわずかしか届かず、獣の鳴き声と小川のせせらぎだけが聞こえる、静寂に満ちた場所だった。


「…体が、軽い」


恐る恐る自分の体を確認する。手足は細く引き締まり、鏡はないが、触れた顔は十代前半のような滑らかな肌触りだった。元の世界の三十歳の怠惰な肉体は消え失せ、健康的な少年の体になっていた。服装は、着心地の良い粗末な麻のシャツとズボン。これといった武器もない。


(これが、剣と魔法の世界か……まず、チート能力の確認だ)


悠斗は集中した。『万象改変ワールド・リライター』。この能力が本当に使えるのかどうか。


「ステータス・オープン」


心の中で呟くと、再び半透明のウィンドウが現れた。


【名前:カイ・アスベル(転生時に設定されました)】 【種族:人間】 【年齢:15】 【スキル:万象改変ワールド・リライター】 【魔力:微弱】 【筋力:E】 【特記事項:ステータスは『万象改変』により上書き可能です。】


(カイ・アスベル……悪くない名前だ。そして、やっぱり魔力も筋力も低い。だが、特記事項!)


悠斗――改めカイは興奮した。彼はすぐに近くの小石を手に取った。


「よし、試しに、この石を……**『鋼よりも硬く、ダイヤモンドよりも美しい輝きを持つ宝玉』**に改変する」


念じた瞬間、頭の中に警告が出た。


【警告:改変の規模に対し、必要な思考エネルギーが不足しています。】 【改変を強行しますか?(成功率5%)】


「うわ、無理か。やっぱり『膨大な思考時間とエネルギーを要する』ってのは伊達じゃない。まずは規模を小さくする」


カイは宝玉の改変を諦め、能力の規模を最小に落とした。ターゲットは、彼が手に持つ小石だ。


「この石に、**『小さな光を放ち、魔力を感知する』**特性を付与する」


今度は警告は出なかった。代わりに、頭の中に世界を書き換えるような、わずかな負荷を感じた。


【改変完了。魔力感知石(試作)が誕生しました。】


手の中の小石は、淡く青い光を放ち始めた。カイは感動で体が震えるのを感じた。


「成功だ!これが俺のチート能力、『万象改変』!これで世界を変えられる!」


その瞬間、ガサガサと草の擦れる音が近づいてきた。そして、彼の目の前に現れたのは、弓と矢を持った、信じられないほど美しい女性だった。


長いプラチナブロンドの髪、透き通るような白い肌。耳は細く尖っており、身に纏う緑の革鎧は、彼女がこの森の住人であることを示していた。


エルフだ。


(ヒロイン登場のテンプレも抑えてるのか!この世界!)


彼女はカイを警戒するように弓を構え、美しい、だがどこか冷たい声で尋ねた。


「そこにいる者よ。貴様は森を荒らす獣か、それとも迷い人か。その手に持つ、不審な光は何だ?」


「あ、僕は……」


カイが言い訳を探す暇もなく、彼の頭の中で『万象改変』が勝手に発動しようとした。その理由は、彼女の放つ、**この森の何よりも強い、圧倒的な「魔力」**だった。


【緊急警告:極めて強力な魔力反応を検知しました。対象の原理を解析し、改変の機会を探しますか?】

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