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誰にも邪魔させない、私たちの青春。  作者: 青木ユイ
第一章 2016年度 高校一年生
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じゅうご いちごパフェは青春の味がする

 自分で選んだペンをプレゼントされてからも、色んなお店を見てまわった。おかげでめちゃくちゃ足が疲れたよ!


「ねえ、ちょっと休憩しない?」

「え? あぁ、いいけど……」


 時計を確認すると、三時過ぎだった。ちょうどおやつを食べるには最適の時間だ。

 私たちは再びフードコートに向かった。


「混んでるねぇ……」

「だな」


 みんな、考えることは同じなようだ。なんとか空いている席を見つけ出して座ったはいいものの、お店自体も結構並んでるんだよね……。


「あ、そういえば渡辺さんはどこに行ったの?」


 私がそう尋ねると、高田くんは首を傾げながら答える。


「さあ? 呼んだら来るし、いちいち気にしなくていいんじゃねえの?」


 そんな適当な扱いでいいのかな。渡辺さん、こんなひどい人には負けないで大いに頑張ってね!


「なんか食べる?」


 高田くんは、気持ち悪いとしか評価できないような微妙な笑顔を浮かべながらそう言った。その顔やめてほしい。

 私が席のすぐ近くにあるクレープ屋さんのいちごパフェが食べたいとねだると、即決で買ってくれることになった。頼んだ方が気が引けてしまいそうなほどの彼の潔さ、超恐ろしい。さすが金持ち。さすが高田家。

 ていうか、油断させといてあとから代金請求してきたりしないよね。払わないよ、私。お金ないもん。


「高田くんは? 何か食べないの?」

「いや、いい」


 さくっと買ってきてくれたいちごパフェを机に置きながら、高田くんはそう言って椅子に座った。甘いの嫌いなんだったっけ?


「いただきまーす」


 私はスプーンを手に取り、たっぷりのクリームを頬張った。甘い! おいしい!

 甘党の私はどんどんパフェを食べすすめていった。そういえばカナくんは甘党なのかな? イメージ的にはすごい甘党な感じなんだけど。


「俺にも一口くらいくれたっていいだろ」


 一人で食べる私に、高田くんは不満げにつぶやいた。え、でも、これって……。


「ちょっ」


 クリームをすくったスプーンを、彼はくわえた。ああぁ!


「……甘ったる。よくこんなの食えるな」


 さらに文句。なら食べるな!

 ってか……これって、か、間接キスに、なるのかな……? な、なんでよりによって高田くんなの……。

 というか、高田くんは気にしなさすぎな気がする。それとも、これも計算のうち……? 怖っ。

 顔が少し赤くなった私を見て、高田くんは目を丸くした。そして、にやにやしだす。


「佐野、お前まさか、間接キスだとか考えてんのか?」

「うっ、か、考えてな……じ、事実をっ、か、考えてて何が悪いの!」


 もう開き直ることにした。嘘ついたって、どうせ高田くんにはバレるに違いない。もう諦めた。

 すると、高田くんは頬杖をついて私をじっと見た。


「口元、クリームついてる」

「えっ、どこ!」


 私は慌てて闇雲に手の甲で口の周りをこする。顔が熱い。というか、もうなんか体全体が熱い! 恥ずかしい!


「佐野、それたぶんのばしてるだけだと思うけど」

「ち、近づかないで!」


 ティッシュを渡そうとして来る高田くんを、私は全力で避けた。多分、というか絶対顔赤いし、それに恥ずかしいし、見られたくない!

 必死で顔を腕で隠すけど、高田くんに捕まれてしまった。


「や、やだやだ。ちょ」

「ちょっとこっち来いって」


 腕を引っ張られて、私は抵抗する間もなく元の位置に戻った。椅子ごと、かなり移動していたらしい。こっちの方が恥ずかしいじゃん……。


「佐野って、中学の時から変わらないよな。テンパるとすぐ顔赤くなるし、必死になるし」


 高田くんは呆れているのか大きなため息をついた。た、たしかにそうかも。

 すると突然、彼がこっちに手を伸ばしてきた。え、なになに? 怖い怖い。

 そのまま、ひんやりとした高田くんの手がおでこに当たる。うわっ、えっ、冷たい!


「高田くん、すごい手がつめた――――」

「佐野、熱ない?」

「え?」


 熱かと言われても困る。今朝熱を測ってきたわけでもないし、体温計なんて持ち歩いていない。

 すると、高田くんはパーカーのポケットからスマホを取り出し通話を始めた。多分、渡辺さんを呼びだしているんだろう。食べかけのいちごパフェの甘酸っぱいのが、口の中にまだ残ったままだった。あ、クリームがとけてる。あ、あ、崩れちゃう。今のうちに食べておこう。


 しばらくすると、体温計を手にした渡辺さんが走ってきた。体温計、どこにあったんだろう。

 渡辺さんは汗ばんでいる。走って来なくてもよかったのに……。あ、でも、涼しい顔で歩いてこられても腹立つかも。うーん、でもやっぱり私のせいで走らせちゃったんだから悪いなあ。


「優樹菜さん、大丈夫ですか? 熱があるとお聞きしたのですが……!」

「うわ、だ、大丈夫です、多分」


 びくびくしながら答える。さりげなく優樹菜さんって呼ばれたのはちょっと動揺した。やばい、なに私ちょっとどきっとしてるの? 自分怖い。自分怖い。

 その体温計で熱を測ってみたところ、37.5℃だった。うーん、微妙だなあ……。私は別に全然大丈夫なんだけど、これから上がってくるかもしれないし……。


「帰るか」


 高田くんはあっさりとそう言った。何の迷いもなく。逆に私が焦った。


「そ、そんなの悪いよ!」

「そもそも、俺が無理やり連れてきただけだし。帰って休んどけよ」

「え、で、でも……」


 37.5℃で帰るのはちょっと、何かやっぱり悪い気がする。いい子ぶっているとかそんなんじゃなくて、ほんとに。

 たしかに強引に連れてこられたけど、全部お金出してくれたし。私ばっかりいろいろされて、何も返せないなんて、そんなのやだよ。なんか責任感じる。


「でもとかいーからさっさと帰るぞ」

「ちょ、ちょっと」


 私は引きずられるようにして、というか引きずられてアリアスモールをあとにした。

 帰りも、もちろん車。しんどいわけじゃないのに帰るなんて、やっぱりなんか悪い気がする。でも、高田くんが帰ると言って聞かないから、仕方なくそれに従った。

 まあ、逆に高田くんが今突然熱を出したらどんなに高田くんが大丈夫だって言っても帰ろうとするだろうけどね。

 そう考えたら、仕方ないことなのかもしれない。当たり前のことなのかもしれない。でも、私は散々おごってもらったわけだし……。


 五十分後、私の家の前に到着した。大きめのマンション。でも、入口の電球が壊れているから、少し暗い。道が混んでいたから、帰るのが少し遅くなってしまった。

 私の家の前まで行くと、渡辺さんが出てきたお兄ちゃんに事情を説明する。私は高田くんに謝って、そして「ありがとう」と告げた。


 部屋に入って時計を確認すると、もう四時を過ぎていた。わざわざ私のために帰ってきてくれたんだから、寝ておかないといけない。

 おやつに食べるはずだったいちごパフェ、まだ残ってたのにおいてきちゃったけど、大丈夫かな? 多分、もうクリームとかがどろどろになっちゃっていると思う。誰かが捨ててくれたかな?

 おいしかったし、最後まで食べたかったんだけどなあ。まあ、仕方ないか。ちょっともったいない気もするけど。

 私はベットに寝ころがって、目を閉じた。睡魔はしばらくするとやってきて、いつの間にか私は眠りについていた。



 しばらくして、目が覚めた。結構寝ていたみたいで、なんだか気分がすっきりしている。窓の外はすっかり暗くなっていた。

 私は、一応熱をもう一度測っておくことにした。全然しんどくないから、多分大丈夫だと思うんだけど……。

 待つこと数十秒。体温計の音が鳴った。見てみると、36.6℃と、いたって普通の数字だった。

 安心したので、そのままベッドの端に座ってみた。別に全然しんどくない。疲れもない。暇だし漫画でも読もうと思ったけど、それはやめておいた。これで体調が悪くなったりしたら、笑いごとじゃない。そんなことにでもなったら、私はアホだと思う。


「優樹菜、調子どう?」

「あ、お兄ちゃん」


 お兄ちゃんはいつも、ノックもなしに部屋に入ってくるから驚く。まあ、別に何も隠したいことはないからいいんだけど、驚くからノックはしてほしい。いきなりだから、やましいことがなくてもビビる。


「うん、全然大丈夫だよ。熱ももうないし、しんどくもないし」


 というか、しんどさなんて一度も感じてないんだけどね。ちょっと熱があったから、高田くんが大袈裟に考えて帰ることになっただけだし。まあ、早く帰らせてもらって、悪いとか考えなければ別に良かったんだけど。


「ならいいけど……。あ、そうだ。高田くんがさっきまでリビングにいたんだけど、謝ってたよ」

「え、さっきまでいたの!?」


 でも、レアの鳴き声聞こえなかったよ? あのレアが吠えないなんて、高田くん何者なの? 犬好き? 手なずけれちゃう感じ?

 って、そうじゃないよね。なんで高田くんがわざわざ謝ってたんだろう? 彼が謝る必要なんてないし、悪いこともしてないよね?


「なんて言ってたの?」


 私が訊くと、お兄ちゃんはしばらく考えてから口を開いた。


「えっとね、たしか『無理やり連れて行った上にこんなことになってしまって、ご迷惑おかけしました』とかそんなのだったかな? 別に謝らなくてもいいのにねー高田くんって、礼儀正しい人だね」

「う、うん……」


 嘘だ。絶対猫かぶってる。高田くん、お兄ちゃんの好感度上げたって無駄だよ? でも、お兄ちゃんって結構信じやすいタイプだし、ちょっと心配かも……。大丈夫かな?


「そういえば優樹菜、前に連れてきた……えっと、桧原奏音くんとはどうなったの?」

「ど、どうなったって……」


 私はぎこちなく視線を逸らしながらつぶやいた。カラオケの時のことを思い出す。私、あの時、だ、抱きしめられた……ん、だよね。は、恥ずかしい!

 というか、お兄ちゃん、ちゃんとカナくんのフルネームを覚えていたんだね。


 私のお兄ちゃんは、自慢じゃないけれど結構頭がいい。高校でも上位の成績を修めている。

 特に数学と理科が得意で、私にもたまに教えてくれたりする。だからってわけでもないけど、私はお兄ちゃんのことが好き。

 優しいし、頭もいいし、かっこいい。頼りないところもあるからちょっと心配だけど、なんだかんだ言って私もお兄ちゃんのことは頼りにしている。あ、でも、できれば知らない人を疑いもせずに家に入れるのはやめてほしい。危険だからね。


 一回、私が家に帰ると私の友だちだと偽った女の子が家にいたことがあった。あんな思い、二度としたくない。すごい怖かったんだから。

 しかもその女の子、こんな子知らないって言う私を記憶を失ったんじゃないかとか意味不明なこと言ってきたんだからね。無茶ぶりにもほどがあるよ。

 もう、本当にあれはホラーだった。女の子がなぜか私の名前を知っていたっていうのもあったし。騙されたりはしなかったけどね。

 それがあったっていうのもあって、お兄ちゃんにはちゃんと言ったんだけど、いまいち解決していない。高田くんのことも普通に入れちゃうし。男子だからいいってわけじゃないんだからね。むしろ、男子の方が怖い。ほんと困るよ……。


 私、佐野優樹菜。兄の菜樹優がとても心配です。……玄関をすぐに開けないようにって、何度も言っているんだけどなあ。

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