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6.Σ(゜ロ゜;)

ウェストパークの青石板が敷き詰められた街路を、アルファはびっこを引きながら歩いていた。地球のスーパーの大セールで買い物争奪戦を繰り広げた時の鋭い観察眼をフル稼働させ、街区の大半を物色し回った末、ついに軒先に「イノシシペッグ・三食付き・入浴無料」と書かれた木札が下がる、お手頃価格の宿屋を見つけた。


二枚の銀貨を「バシッ」と、顔中髭だらけの宿屋の親父の机に叩きつけると、アルファは百メートル走の勢いで二階の浴室へ駆け込んだ。


口を開けたガーゴイルのようなシャワーヘッドから温かい湯が噴き出すと、アルファはおっさん丸出しの溜め息を漏らした。ミントの香りのする石鹸で体の垢を狂ったように擦りながら、脱ぎ捨てた地球の普段着を眺め、脳みそがフル回転を始める。


「待て……」アルファは体を擦る手をピタリと止め、眉をひそめた。「さっき城門で、坊主頭の衛兵、『ここを地球のなぞなぞだと思うな』って言わなかったか?」


シャワーのザアアという水音の中で、アルファの目はどんどん見開かれていく。


「マジか!言ったよな!絶対に『地球』って単語を口にしただろ!しかもなぞなぞなんてネタまで完璧に知ってやがる!」


アルファは両手で頭を抱え、浴室の中で崩れ落ちるようにその場を二周回った。「なんだよこれ!この世界じゃ地球人の転生なんて珍しくもなんともないのか?俺だけが選ばれた天命の子なんかじゃなく、毎年大量生産される安売り転生者の一人ってことかよ!なんだそれ、『異世界に転生したら地球出身者が地元の犬より多かった件』かよ!道理であの適当な女神がチートを渡す時もあんなに雑だったわけだ。まるで八百屋で豚肉買ったおまけのネギみたいに!」


彼は自分のロゴ付きのダメージ服を見下ろす。


「ダメだ、郷に入っては郷に従え。転生者がこの世界で日常茶飯事なら、なおさらコスプレイヤーがコミケで迷子になったみたいな格好で街を練り歩くわけにはいかない。もし『地球転生者専門に狩る変態ハンター』なんて奴がいたらどうする?」


風呂を上がったアルファはタオルで髪を適当に拭き、ボロボロの普段着を丸めてリュックに押し込んだ。後で針と糸を買って繕い、記念に取っておくつもりだ。それからトランクスと洗い立てのビーチサンダル姿で、パタパタと階段を降り、宿屋の一階ロビーへと向かった。


宿屋の親父はカウンターに突っ伏して鼻くそをほじっていた。アルファが降りてくるのを見ると、やる気のない挨拶を投げかける。「おう、若いの。綺麗になったか?だいぶ人間らしい顔になったな。今日のおすすめ、ティラノサウルスの炒め肉、いくか?」


「遠慮しとく。俺の胃袋にもう数日生き延びてほしいんでな」アルファはハイスツールを引いて腰を下ろし、馴れ馴れしくカウンターに肘をついた。「親父さん、ちょっと聞きたいことがある。この街、結構賑やかだけど、どんな種族がいるんだ?」


親父はほじった鼻くそをポンと弾き、通りかかったハエに見事命中させた。「それを聞くなら俺にうってつけだ。ウェストパークは有名な自由貿易都市、ごちゃ混ぜの坩堝ってわけだ。オーク、ドワーフ、ふわふわ尻尾の獣娘、夜に血を吸うコウモリ魔物、サキュバスだって竜族だっている。街で目を閉じてレンガ投げりゃ、三種類の混血が当たるってもんよ」


アルファの目が一瞬で輝いた。地球オタクのDNAが激しく反応する。「じゃあ……エルフは?尖った耳で金髪碧眼、肌が白く輝いて、喋り方が歌みたいなエルフだ。ここにいるのか?」


「ほう?エルフに興味があるのか?」親父は男同士だけがわかるいやらしい笑みを浮かべ、屈んでカウンターの下を探り回す。「ちょうどいい、この街一番有名なエルフ様の絵がある。昨日刷り上がったばかりだ」


「早く早く!見せろ!」アルファは手を擦り合わせ、よだれが垂れそうな勢いだ。


親父は「バシッ」と一枚のポスターをテーブルに叩きつけた。


アルファが目を凝らした瞬間、次の一拍で、眼球が「ポン」と音を立てて飛び出す勢いだった。顎がそのままカウンターにガシャンと落ちた。


ポスターに描かれていたのは、身長およそ二メートル五〇、全身の筋肉が小山のように盛り上がった生物だった。太い首の上には坊主頭が乗っており、確かに耳は尖っている。だが太ももに浮き出た血管はアルファの腕より太い。さらに恐ろしいことに、腰にはギリギリの草スカート一枚だけ。片手で狂暴な地竜の頭を鷲掴みにし、地竜は舌をだらりと出している。


ポスター下部には大きな文字が書かれていた。

【ウェストパーク健美大会三年連続王者:純血エルフ・翠花】


「なんだこれはぁぁぁ!!!!」


アルファはハイスツールから転げ落ち、ポスターを指差す指が激しく震える。「これをエルフって言うのかよ!この一発なら牛どころか地球の主力戦車だって凹ませられるだろ!この脚で挟まれたら、俺の頭はトラックに轢かれたスイカみたいに弾け飛ぶだろ!」


「見識が狭いな」親父は軽蔑した目で彼を一瞥する。「エルフは常に危険だらけの森で暮らしてるんだ。こうでもなきゃ魔物と肉弾戦できるわけないだろ。騎士小説みたいに華奢だと思ってるのか?そんなんとっくに絶滅してる」


アルファは両手で顔を覆い、価値観が砕け散る衝撃を受けた。「わからん……この異世界の生態系が本当にわからん……エルフへの甘い幻想が、俺の少年時代ごと死んでいった……」


「エルフマッチョ」という精神洗礼を受けたアルファは、すっかり大人しくなった。


宿屋の親父に教わった道順をたどり、しょんぼりと仕立て屋へ向かう。店主は老眼鏡をかけたゴブリンの老婆だった。八百屋のおばちゃん同士の最強バトル並みの厳しい値切り合戦を経て、アルファは数枚の銀貨と引き換えに、丈夫な異世界の庶民一式を手に入れた——耐摩耗のリネンシャツ、ポケットが複数ついた濃色のズボン、そして少し硬いがつま先を守ってくれる粗末な革靴だ。


この装いに着替え、アルファは仕立て屋の姿見の前に立った。極普通の底辺モブにしか見えないが、少なくとも奇抜な格好で街中の注目を集めることはなくなる。


「よし!新しい服に着替えたし、腹も黒パンでとりあえず満たした」アルファは頬をパチンと叩き、気を取り直す。「なら次は、転生者の伝統行事——冒険者ギルドへ登録だ!安全そうな、二メートル五〇のエルフと筋肉勝負しなくて済む依頼が引けるといいが」


アルファは仕立て屋の扉を押し開け、自信に満ちた足取りで賑わう街へ踏み出し、街の中心にある巨大な剣と盾の紋章が掲げられた建物へ向かった。


街は人声でざわめき、馬車や奇妙な乗り物がすれ違っていく。アルファは歩きながら好奇心にあちこちを眺め回し、まったく気づいていなかった。彼の背後二十メートルも離れていない場所で、黒ゴシックドレスを纏った銀髪の少女が、自分の顔より大きな串団子を手に持ち、無表情にカリカリと齧りながら、幽霊のようにぴったりと後をつけていたことに。

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