表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/95

転生者救済編 第七話

「……だめだ、やっぱり。この世界線では、あの三人がナオキさんの記憶を『思い出す』ことは、絶対にない」


アイリたちが騒ぐスイートルームから少し離れた、隣の控室。

 扉に背中を預け、トウヤは右目――【真実の魔眼】を覆うように強く手を当てて、ギリッと奥歯を噛み締めた。


「どういうことっすか、トウヤ? 」


ルカが不安げに尋ねるが、トウヤは重苦しく首を横に振った。


「俺の目で視た『真実』が、それを否定してるんだ。……これは記憶喪失や洗脳じゃない。この世界は、ナオキさんが消去されたことで生じた『パラレルワールド』なんだ。だから、アイリさんたちの今の記憶は、この世界においては『100%正しい本物』として固定されちゃってる」


トウヤは自分の胸の奥――ナオキの【オリジナル・データ(ログ)】が眠る場所をギュッと握りしめた。


「俺とルカが持ってるこの『過去のログ』は、いわば別のゲームのセーブデータみたいなもんだ。無理やり彼女たちの脳に上書きしようとしても、魂の器(世界線)そのものが違うから、システムが完全に拒絶してエラーを起こす。最悪、アイリさんたちの精神が崩壊する」

「そんな……っ。じゃあ、もう二度と、アイリさんたちは師匠のことを思い出せないってことっすか……!?」


ルカの瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。

 絶対の恩人であり、大切な家族。その繋がりが、システムという名の理不尽によって永遠に失われてしまった。チート能力の暴力よりも遥かに残酷な結末に、ルカは膝から崩れ落ちそうになった。


だが、トウヤは倒れかけたルカの肩をガシッと力強く支え、真っ直ぐに彼女の目を見つめ返した。


「ルカ、泣かないでくれ。……絶望するのは、まだ早い」

「トウヤ……?」


「俺の【魔眼】が出した答えは、『スキルの力では記憶を戻せない』っていうただの事実だ。でも……俺たちは、あの人から教わってきたじゃないか。そこからどうするか考えるのが、大事なんだ」


トウヤの脳裏に、知略と執念だけで世界を裏から支配していく、あの不敵な背中が蘇る。


トウヤの瞳に、かつてナオキが見せていたのと同じ、底知れない『タチの悪い光』が宿った。


「過去の記憶が戻らないなら、思い出す必要なんてない。俺たちがやるべきことは一つだ」

「やるべきこと……?」

「ああ。……今のナオキさんに、一から『再攻略』をしてもらうんだよ」


トウヤの口から出たあまりにも力技な、しかし最高にロマンのある作戦に、ルカは大きく目を見開いた。


「過去のセーブデータが使えないなら、今ここから、前よりもっとエグくて、深くて、絶対に消せない『新しい絆』を叩き込めばいい。……そのためなら、俺とルカは、悪役になってでもナオキさんを裏からサポートする」


「……っ!!」


ルカの顔から絶望が消え去り、パッと明るい希望と、勇者としての不屈の闘志が戻ってきた。


「トウヤ……! アタシ、やるっす! 師匠がもう一回頑張ればいいだけっすよね! アタシたちで、最高のシチュエーションをプロデュースしてやるっす!!」

「おう。とりあえず、今のアイリさんたちはナオキさんを『危険なマフィアのボス』として完全に敵視してる。まずはあのプライドの高い二人を、ナオキさんと対話させよう」


トウヤは控室の窓から、ゼファーの煌びやかな歓楽街――その地下で蠢くナオキの気配を見下ろし、ニヤリと笑った。


(待っててください、ナオキさん。俺が、最高にタチの悪い『共犯者キューピッド』になってやりますよ)


世界線を越えた、規格外の「強制ミッション」が、今ここに動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ