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第9話 ゴブリンテイマー、鑑定する

「それではエイルくん、この中に手を入れていただけますか?」


 ルーリさんがどこからか取り出してきたのは、真っ黒な箱だった。

 どうやら、これが噂に聞く鑑定魔道具らしい。


「この中には、一体何が入っているんですか?」


 僕の頭ほどの大きさのその真っ黒な箱には、左右にちょうど手を突っ込めるくらいの穴が開いている。

 そこに手を差し込むことで鑑定ができるらしいのだが……。


 不思議なことに、その穴を覗き込んでも中は真っ暗で何も見えない。

 反対側にも穴が開いているのだから、本来であればそちらから差し込む光が見えても良いはずなのだが。


「さあ……? 私にもよくわからないのです。この魔道具については詳しい仕組みなどはあまり公開されていないんですよ」

「そうなんですか……。なんだかちょっと怖いですね」

「大丈夫ですよ。別に中に蛇とかが入っているわけじゃありませんから」

「そりゃそうでしょうけど……」


 僕は、恐る恐る左右の穴から手を差し込んでいく。

 不思議なことに、箱を抱きかかえるほど腕を深く突っ込んでも反対側から入れた手に触れることすらない。

 中はほんのりと暖かいのだが、手を動かしてみても何かに触れる感触はなかった。


「それではいきますね。少し、チクッとするかもしれませんが我慢してください」

「えっ、それ、聞いてな――」


 僕は、慌ててルーリさんの言葉の意味を尋ねようとした。

 しかしルーリさんは、そんな僕の言葉には構わず箱の上に付いていたボタンを、細く綺麗な指でカチリと押し込んだ。


「うっ……」


 軽い音と同時に、僕の差し込んだ腕全体に不思議な感覚が走る。

 チクッとする、というよりも弱い電気が腕全体に流れるような……。

 痛みというより、むしろ妙な気持ち悪さを感じた。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい……。大丈夫、です。でも、できれば先に教えて欲しかった、です」


 僕は、少し涙目になりながら箱から腕を引き抜く。

 電気が走った腕をまじまじと見つめるが、幸い特に外傷はないようだ。


「それでは、少しだけお待ちくださいね」


 ルーリさんは僕の様子を確認してから、鑑定魔道具を何やら操作し始めた。


「ここを見ておれ」


 いつの間にかギルドマスターが椅子から立ち上がり、僕のすぐ横まで来ていた。

 そして鑑定魔道具の側面を指差す。

 すると真っ黒だったはずの測定魔道具の側面に、何やら文字が浮かび上がってくるではないか。


「ほほう……こいつは……」

「これが、僕の今のステータス……ということなんでしょうか?」

「この鑑定魔道具で調べられる範囲内では、な。本職の【鑑定スキル】持ちの冒険者ならもっと細かい部分まで分かるらしいのだが」


 鑑定魔道具の側面に表示された内容は、以下の通りだった。


 ================


 名前:エイル

 種族:人種

 年齢:15


 体力:30/30

 魔力:128/128


 スキル:ゴブリン・テイマー

 使役魔力 LV23:単位消費魔力 0.4


<<派生能力>>


 成長補助 LV3

 付与魔法 LV2 : 加速 剛力

 基本身体強化 LV2

 号令伝達 LV2 : 近距離念波

 気配察知 LV2 : 動態察知


 ================


「これって……一体、どういう意味なんですか?」

「どうもこうも……お前さん、魔力だけならBランクの冒険者並みにあるじゃないか」


 Bランクといえばかなりの上位冒険者だ。

 駆け出しの僕が、そのBランク冒険者と同等の魔力量を持っているなどとは、何かの間違いではないだろうか。


 仮に間違いでなかったとしても、体力との差があまりにも大きすぎる。

 確かに、自分でも体力はゴブハルトたち以下である、という自覚はあるのだが……。


「そうなんですか? でも僕が使える魔法は、ゴブリンたちへの弱い付与魔法くらいですよ」

「それはお前さんがまともに魔法について学んでいないからだろう」

「じゃあ、勉強すれば僕も炎を出したりとかできるようになるんでしょうか?」

「魔力だけ見れば出来る、と言いたいところだが……断言はできん。何せお前のスキルは、今まで見たことも聞いたこともない特殊なものだからな」


 僕は、改めて鑑定魔道具の表示に目を落とす。

 この派生能力の欄にある【付与魔法】のおかげで、僕はゴブリンたちを強化することができるのだろう。


 しかし、普通の魔法が使えるというような表記はどこにも見当たらない。

 正直なところ【付与魔法】が使えると気づいたのも全くの偶然だった。

 あの時は本当に死ぬかと思ったが【付与魔法】のおかげで何とか皆、死なずに済んだのだ。


「でも魔法が使えるようになれば色々と便利ですよね」

「そりゃあ、な。初級魔法でも、特に火と水はあれば便利というレベルではないぞ」

「ギルドマスターも使えるんですか?」

「ああ、初級だけだがな。そもそも俺は魔法使いではなく戦士系のスキル持ちだから魔力は少ないんだ」


 ギルドマスターの言うように、どこかで魔法を学べば、僕も使えるようになるのか。

 それとも【ゴブリンテイマー】には普通の魔法は使えないのかも……。


「一般的な【テイマー】たちは、魔法って使えるんですか?」

「俺の知る限りでは、大抵は初級止まりだが使えるはずだ」

「そうなんですね」

「まあ強力な魔法が必要になったら、普通は使役している魔物に使わせるからな。何せ、人間よりも魔物の方が魔力は高いからな」


 通常の【テイマー】は、自らの魔力が上がるにつれて、それに見合ったより強力な魔物に乗り換えていくという。

 なぜなら一種類の魔物にこだわって育てても、普通は先が見えてしまうからだ、と。


「ゴブリンなんて、普通一生懸命死なないように育てたところで、魔法が使えるようになるまで進化する、なんて話は今まで聞いたこともないからな」

「それも【ゴブリンテイマー】の力なんでしょうか?」

「だろうな。多分この『成長補助』ってやつがそれを可能にしているんじゃないか、と睨んでいる」


 ギルドマスターはそう呟きながら腕組みをし、表示されたステータスをじっと見つめ、再度口を開いた。


「しかし、このステータスの一番肝心な部分はそこではない。使役魔力の消費量の異常な低さ、それだ」


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