~ 2話 ~
それからマニは練習を続けていた。
何度呪文を唱えても、蝋燭に火を灯す事はできず、蝋燭の形であったはずの蝋が溶けるだけだった。
他の魔法も試してみた。
母はまたそれも基本である、物を浮かせること、手のひらの上に少量の水を保たせること、解れた洋服を元に戻すことなどをマニに教えた。
でもそれも上手くはいかなかった。
物を浮かせようとしても空の彼方に飛んで行ってしまったし、手のひらの上の水は浴槽の水を全て持ち上げてしまって、重さに耐えきれなかったマニはびしょ濡れになってしまったし、洋服なんかは新品同様の糸になってしまった。
失敗ばかりだと思ったが、それでもマニは初めて使う魔法に心が踊った。
そんなマニを見て、どこかで困ったような顔をしていた。
その日の夕方。仕事から戻った父に母は日中の出来事を話した。
初めは信じなかった父に、マニは実際に呪文を唱えて見せた。
毛の伸びる魔法。
みるみるうちに父の口元から髭が伸び始め、床に付くほどになってしまった。
父は今の出来事を見れば驚いたように母をとマニを交互に見て、少し考えるとマニを側に呼び寄せ、約束をしよう、と言った。
「マニ、マニにはまだ難しいかもしれないが、魔法には魔力というものが必要なんだ」
「まりょく?」
初めて聞く言葉にマニは首を傾げた。父は言葉を続ける。
「そう、魔力だ。これは人それぞれ違うもので、魔力が平均値にある者は呪文を唱えても普通に魔法をかけられる。しかしマニの魔力は人並み以上…いや、きっと我々が思ってるより強いものだ。だから呪文の効力より強くなってしまう。だからね、人前で魔法を使ってはいけないよ」
マニの表情が曇る。
「どうして魔法をかけちゃいけないの?マニは魔女になれないの?」
今にも泣きそうなマニに、父は頭を大きな手で撫でて言った。
「魔法を使ってはいけないわけじゃない。マニはきっと立派な魔女になれるよ。でもマニの魔力は強過ぎるから、お父さんやお母さんと一緒に、コントロールする勉強を少しずつしなければいけない。」
「こんとろーる?」
「そうだ。今のまま人前で魔法を使っては、きっと迷惑をかけてしまうし、今の世の中、魔力を悪いことに使おうとしている奴らもいる。魔力の強い子どもは攫われてしまうらしい噂もある。そんなのは嫌だろう?」
マニは頷く。
「だから、魔法を上手に使えるまでは人前で魔法を使ってはいけない。もちろん魔力が強いことも言ってはいけない。魔法を使うのはお父さんかお母さんがいるときだけだ。」
わかったね、と付け足すと、父はマニをじっと見つめた。
マニは暫く考えているようだったが、今父に言われたことを思い出し、わかった、と微笑んだ。
そして父と母とマニは絶対に魔法を勝手に使わないことを約束した。
話が一区切りついた為、父は夕食にしようと言う。マニは毛むくじゃらになった父はいつ元に戻るのかな、なんて思いクスクス笑いながら、夕食の準備の手伝いをした。




