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魔法使い2

97 魔法使い2






 魔法使いクルエルダードはある命令を受けてアドリアーノ公の元へ送り込まれた。

 

 その命令とは、アドリアーノ公の反逆の証拠を掴むことだった。

 

 アドリアーノ公は執務も碌に行わないほどの放蕩者だが、手下や考えを同じくする者達への連絡などは異常なほど気を付けていた。

 

 おまけに、金と女と権力の亡者と言われるだけの堕落ぶりを見せつつも、代々の譜代の臣しか傍に置かなかった。

 

 おかげで普通の間者は、女であろうと商人であろうとなかなか懐に入れず、少しでも睨まれればすぐに処分されるとあって、調査は難航していた。

 

 だが、ある時、グレイヴァルという田舎領地で魔法使いが誕生したという噂がゼクストフィール王国中を駆け巡った。

 

 そして、意外にもアドリアーノ公がこれに強い興味を示したのだ。

 

 クルエルダードがアドリアーノ公に魔法の腕を売り込むと、あっという間に直言を許されるほど気に入られ、常にアドリアーノ公の傍近くに侍ることを許された。

 

 もちろん、近くに侍るだけで、迂闊に調査めいたことをするとすぐに目的が露見すると思われたため、ほとんど動けなかったが、クルエルダードは、アドリアーノ公がよく会う貴族や商人などの情報を地道に集めて行った。

 

 クルエルダードの魔法はアドリアーノ公の欲望を刺激した。

 

 元々、アドリアーノ公は魔法使いの噂など歯牙にもかけていなかった。ちょっと変わったことが出来るだけの者だと思っていたようだ。

 

 だが、情報を集めるうち、魔法使いの力に強い興味を持った。そして、クルエルダードを手に入れ、魔法を実際にその目で見ると、考えを変えた。 

 

 とは言え、行動を起こさせるには足りなかったようで、アドリアーノ公はもっと魔法使いを集めたいと言い始めた。

 

 まずは、件の魔法使いを。そして、二人いたならもっといるだろう、と言い、手駒としてシルバートゥースという犯罪組織を使い始めた。

 

 クルエルダードはアドリアーノ公の為に働くことで信頼を得ていった。そして、ついにアドリアーノ公は、ぽつぽつと兄王に対する不満や、野望めいた事を語るようになってきた。

 

 もう少しで、証拠を得ることが出来る、と思っていた矢先、シルバートゥースの連中が件の魔法使いと揉めた。あろうことか、魔法使いの妻に手を出して支部を壊滅させられた。

 

 どうやら、「魔法使いとて男には違いなく、妻を薬漬けの男漬けにしてしまえば、どうとでも操れる」と考えたようで、その計画を実行しようとして反撃されたという。

 

 魔法使い以外に対してなら、それなりに有効な手段だったかもしれない。シルバートゥースの組織暴力をもってすれば、おそらく簡単で無駄のない一石二鳥の方法だ、とでも思ったのだろう。

 

 だが、件の魔法使いに対しては最も最悪な方法だった。

 

 結果、シルバートゥースは壊滅した。

 

 おまけに、情報がどう伝わったのか、魔法使いはアドリアーノ公を黒幕とみなし、反撃してきた。

 

 件の魔法使いの妻に危害を加えたのはシルバートゥースの一存だが、アドリアーノ公が黒幕なのは事実な為、今更、懐柔も交渉も難しい。第一、居所を掴むことすら不可能なのだ。懐柔しようがない。

 

 だが、王弟で、公爵でもあり、この国で、国王を除けばほぼ頂点の大貴族であるアドリアーノ公に楯突くなど、正気の沙汰ではない。

 

 魔法使いも、魔法が使えるというだけで、普通の人間と変わらないのだ。疲れもすれば眠りもする。

 

 シルバートゥースのような犯罪組織の厄介なところは数の力で休みなく攻め続けられることだ。一般人や力の弱い個人、組織ではとても太刀打ちできない。

 

 そして、脅威と言う視点で見れば、「国家」とはそんな犯罪組織の上位互換なのだ。

 

 

 にも拘らず、件の魔法使いはついに、公爵邸にまで攻め入った。確実に狂っている。妻一人のためにそこまでするなど、聞いた事もないし、考えられないことだった。

 

 クルエルダードとしては、逃げるという選択肢もあったが、最終的にはその選択肢を選べなかった。

 

 アドリアーノ公は、自分の獲物であり、自分が捕まえた後で公に裁かれなければ、クルエルダードの手柄にならない。殺すだけなら、自分がいつでも殺せたのだ。

 

 結局、件の魔法使いとの戦いになり、相手の力を読み間違えた。

 

 おまけに最後通告をハッタリだと思った。相手も苦しい筈だと考えた。一度仕切りなおすことさえ出来れば勝てる、と。

 

 そして、気づけばクルエルダードは、自分の胸の真ん中から土の槍が生えているのを目撃していた。

 

「結界」と「重力視」の魔法が切れていないのに「土」系の魔法まで同時に使用するなど、前代未聞だった。

 

 

「ぐはっ!?……な、んだと……三つの……魔法の……同時使用……だと……?」 

 

 

 クルエルダードは、その事実に驚愕したが、すぐに意識に靄がかかり始めた。

 

 その時、クルエルダードの頭に聞いた事のない声が響いた。

 

 

『四つ、だがな』



 その声と事実を、クルエルダードは既に理解できなかった。

 

 

 

 まさか、こんなところで終わるとは、クルエルダードは、夢にも思わなかったのだった。



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本日、1話目。2話更新予定です。

楽しんでもらえると嬉しいです。


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次回予定「魔法使い3」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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