作戦会議2
77 作戦会議2
昨夜、ギルバートの報告だけで話し合いを終了し、眠ってしまった二人は、朝起きて、エリーの作った朝食を平らげると、今日も冒険者ギルドへは行かず、寝室に集まった。
もちろん、ケルもエリーの作った朝食を食べ、一緒に寝室へ舞い戻る。目的はもちろん昨日の続き、作戦会議だ。
作戦会議の議題は、今回もやはり「今後の方針」だ。
ギルバートは自分の魔法が狙われているせいで、他領の貴族から目をつけられただけでなく、エリーが如何わしい犯罪組織に狙われた事に大きな衝撃を受けた。
だが、むしろそれは元々、予め想定し、対応策を用意しておくべき事だったのだ。
事ここに至っては、最早グズグズしてはいられない。
「ダンジョンを巡りたい。……手持ちの魔法石だけでは防衛にせよ攻撃にせよ、まだまだ心細いと思うんだ」
ギルバートはそう口火を切ると、前々から提案されていた「魔法石集め」を再開しようと提案した。
「何の魔法石が欲しいの?」
「ゼクストフィール王国で手に入る、有用な魔法石は全部欲しいと思ってる」
エリーが質問し、ギルバートがそれに答える。その応えにエリーが目を丸くする。
「魔法石ってそんなに簡単に手に入るもの?……って言うかそもそも、何で魔法石って売ってる人がいないの?安くはないだろうけど、売ってればもっと簡単に集まるかもしれないのに」
エリーは不思議そうにそう言ったが、ギルバートは、「たとえ売ってたとしても、自分達には一つとして買う事は出来ないだろう」と思った。
実際、もし売っていたとしても、おそらく屋敷どころではないほどの高額な値が付けられるだろう。だが、問題はそれだけではない。
『エリーよ。つまりそれが、魔法使いが出ない理由でもあるのだ』
ギルバートに代わり、ケルが応えてくれるようだ。エリーは可愛く首を傾げている。こういった動作が無意識に出るあたり、エリーのおおらかな性格がよく表れている。
そして、ギルバートはいまだに、エリーのそんな仕草にドキッとして顔を赤くしてしまうのだった。
『魔法を使えない者にとって、魔法石と魔石の区別をつけることはほぼ不可能と言って良い。当然、鑑定書をつける事も出来ない。鑑定できないのだからな。真っ当な商人であればそんなものを商うことは無いだろう』
「なるほどー」
エリーがふんふんと頷いている。
『それは魔法使いにとっても同じなのだ。適性の無い魔法石には魔力が入らない。その反応は普通の魔石と同じであり、仮令、他の何れかの魔法石を使える魔法使いであったとしても、自分に適正がない魔法石と、ただの魔石との区別はつかないのだ』
『……そして、今、どの魔獣が何の魔法を持っているか、知っている者はそうおらんだろう。それを知るには、戦っている魔獣が魔法を使うのを目撃し、生還する必要があるからだ。そして当然、強い魔法石を持つ魔獣は強い。その知識は魔法使いにとっても宝と言えるだろう』
『さらに言えば、戦闘ではない用途の魔法石などはさらに発見が難しい。魔法を行使する魔獣を目撃するのがより困難だからだ。その上、万が一魔法石を持ち帰る事が出来ても、本物である証明がまた難しい』
ケルが一呼吸おいて、回答を〆る。
『要するに、「一人で多くの魔法を使いこなせる魔法使い」の協力なしに、魔法石の販売など不可能だということだな』
ギルバートも成る程、と納得した。当然、ケルやギルバートが販売に協力することなどあり得ないからだ。
「……にしても、オレは今までの魔法石は全部、適正も相性も大丈夫だったけど……本当にそんなに確率低いのか?」
『そこは前々から、某も不思議だった。通常、ほぼ有り得ない事だ』
「……つまり、ギルは天才ってこと?」
「え?いやぁ、そんな事は……」
エリーがキラキラした笑顔で自分を見たので、ギルバートは面映ゆくなり頬を染めた。
『魔法に関しては間違いなく、ギルは超天才と言えるだろう。だが、話が逸れているぞ、二人とも。作戦会議はどうした?』
ギルバートとエリーがイチャつこうとした瞬間、ケルの待ったが掛かった。ギルバートはちょっとバツが悪くなり、軽く咳払いをして話を戻す。
「んんっ!……要するに、魔獣肉の仕入れのついでにダンジョンを巡り、どんどん魔法石を獲ろうってことだな。エリーにも魔法石を試してもらいたいし」
「そ、そうね♪ほかの魔法も使ってみたいわ!」
それに関しては異議なしとして、全員の了承を得たので、今後の方針となった。
「次に、庭が欲しいって話をした時から思ってたんだけど、この屋敷以外に隠れ家が欲しいと思ったんだ。……こうも、度々襲われたり、招かざる客や便りが来ると安心して生活できないからな」
「隠れ家!良いわね、素敵な響きだわ♪」
ケルに軽く叱られて、気まずそうな顔をしていたエリーのテンションが爆上がりし、グイッと顔を上げた。
「エリー、落ち着いて。これは確認しただけだよ。魔法石集めの目的の一つとして覚えておいてくれたらいいから」
「分かったわ!それにしても、隠れ家!良いわ~。心が躍るわね♪」
……気持ちは分かる。ていうかオレも同じ気持ちだ。ただ、目的はあくまで緊急時の避難所づくりだからな。あまり楽しい目的じゃない
そうは思ったが、楽しそうにしているエリーにはあえて言う必要もないと、ギルバートは判断した。
「……で、最後だけど、リンドヴァーン伯爵からの手紙をどうするか、ってことなんだ」
そう言うと、ギルバートは手紙をエリーに渡す。その頭越しにケルが覗き込んだ。
「ああ、これかー。そう言えばこんなのもあったねぇ」
などと、エリーが呑気な声を出す。だが、大貴族からの招待だし、内容も気になる。ギルバートはいまだに決断できないでいた。
「『家宝の魔法石がある』みたいなこと書いてあるけど、ギルはこの魔法石、見てみたいの?」
「多少、見てみたくはある。けど行きたくはない、ってところかな」
ギルバートは苦笑し、迷っていることを明らかにした。
『某は見ておきたい』
ところが意外にも、ケルからの意思表示があった。
『おそらく大貴族が所有している魔法石は、素性確かなものだろう。となれば、ほぼ間違いなく、以前、某が持っていた物だと思われる。どの魔法石であるか、ぜひ確認しておきたい』
「確認してどうするの?」
エリーが、不思議そうな顔で合いの手を入れる。そして、それはギルバートも同じ思いだった。
大貴族が持っている魔法石が何であれ、自分達には関係ないのでは?と思うのだ。
『現状、どうする気もない。ただ、確認さえしておけば、イザという時にはどうとでもなると思ってな』
「えっ」
普段、品行方正なケルらしからぬ返答を受け、エリーが目を丸くする。
「……なるほど。ケルの考えは分かった。ただ、やっぱりあまり行きたくは無いんだよなぁ」
『だが、魔法石探しで当然、リンドヴァーン方面のダンジョンにも行くのであろう?』
ケルにそう言われ、結局、三人はリンドヴァーンに行くことに決めたのだった。
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月~土曜日は毎日1話ずつ、日曜日に3話のペースで更新予定です。
楽しんでもらえると嬉しいです。ありがとうございました。
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次回予定「リンドヴァーン」
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