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譜めくりの恋  作者: ゆぶ
59/95

第59小節



 わたしは部屋に帰って、シャワーを浴びて、髪を乾かして、スキンケアをして、トリャ~とベッドにからだをあずけた。


 クレアに電話した。


「もしもし」

 とわたしはいった。

「美風」

「何?」

「明日ね」

「うん」

「わたし家にもどるから」

「そう」

「うん」

「えっ、ずっとってこと?」

「ううん。2、3日」

「2、3日」

「そう」

「わかった」

「アルバムだすのよ」

「誰が?」

「わたしが」

「はい?」

「あのね、わたしこと柊クレアがデビューアルバムをだすことになって、その打ち合わせにね、帰るの」

「はっ?」

「だから。ちょっとやめてそのパターン」

「いやいやいや」

「わかるけど」

「何のアルバムだすの?」

「もちろんピアノに決まってるじゃない」

「まさかオリジナル?」

「まあ一部そうね」

「それって、弾いてたあの曲?」

「Yes,it is」

「もうプロじゃん」

「デビューしたらそうなるのかな」

「プロじゃんクレア」

「まあ、何てゆうのかな、そうなっちゃうのかな」

「すごいじゃん、プロじゃんか」

「まあまあまあまあ」

「いいなあ」

「まああれよ、ちゃんとレコード会社からのオファーだからね」

「系列のでしょ?」

「うん」

「それオファーってゆうの?」

「いわないといろいろややこしいことになるじゃない」

「自覚はあるのね」

「要は恥ずかしくないアルバムをだせばいいのよ」

「えらい!」

「サンキュー!」

「何かおめでとう」

「何かありがとう。でね」

「うん」

「あなたも参加してもらいたいのよ」

「発売記念パーティーに?」

「違う。アルバムに。ていうか、もちろんパーティーには招待するけどね」

「いま何て?」

「だからアルバムに参加してほしいって」

「わたしに?」

「あなたに」

「何で?」

「何でって、そのほうがひとつの売りになるからでしょ」

「どんなカタチで?」

「連弾がいいかなって思ってるのね」

「あなたも?」

「あなたもって?」

「いや何でもない」

「そう」

「ねえ、それってわたしにもあれ入るの?」

「あれって?」

「印税っていうのかな」

「そうね、契約すれば入るんじゃない? そのへんはわたしもよくわからないけど」

「やります」

「よかった」

「えっ、じゃあさ、売らなきゃじゃない」

「売るためのアルバムだからね」

「そうよね」

「そうそう」

「何なら握手会とかやってさ、売らなきゃじゃない」

「そこまでピアノのアルバムでやるのかな」

「やるのよ」

「ほんとにやるの?」

「ものすごく売って何もいわせなくすべきよ」

「わたしのためなのか印税のためなのかわからないわね」

「両方にきまってるじゃない」

「そっか」

「よーし、ミリオンめざすぞ!」

「やっぱり印税のためでしょ」

「ちゃう」

「うそ」

「あなたのためが九割よ」

「ぜったいうそ」

「ピアノでお金のことなんか考えないって。わたしはそういう姿勢でピアノやってきたわけじゃないもの」

「確かに」

「よっしゃ、やってやるぞ!」

「でも一割は印税のためなのよね」

「100パーあなたのためなんて信じられる? そうでしょ?」

「それもそうね」

「そんなこという人のことこそ信じられないわよ」

「おっしゃる通り」

「いまに見てろよ!」

「誰に向かっていってるの」

「じぶんに向かってよ」

「けっこう複雑みたいね」

「これでもいろいろ思うことはあるの」

「これっぽっちもそう見えないところがベビーフェイスの魅力よね」

「また何か考えさせるようなこといわないで」

「失敬失敬」

「アイドルなっちゃうぞ」

「誰がさせるか」

「ぬわんだと」

「ぜったい阻止する」

「ぜったい勝つ」

「そうでなくっちゃ」

「さあて、な~に買おうかな~」

「おいおいおいおいおい」

「あははははは」


 わたしたちはそれから深夜2時まで、どうやったらもっと売れるか、売れたらどんな未来が待っているか、あれやこれやと話つづけていた。

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