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第25小節
部屋にもどるとベッドメイクされていた。
洗濯に出していたものはクリーニングされてメイクされたベッドの上に置かれてあった。
新たにリクエストしていた品物もデスクの上に置いてあった。
冷蔵庫をあけるときっちり補充されていた。
ピアノを思いっきり弾けて、部屋はきれいで、欲しかったものがちゃんとそこにあった。
気持ちがよどむようなことがどこにもなかった。
じぶんの家にいたらけっして味わえない気分だった。
わたしは窓辺に立って、窓をあけた。
ほんのりと、潮の香りがした。
夕陽が海に光のラインをつくっていた。
桟橋のベンチには、あの日の老婦人が座っていた。
すると、老婦人に近づいてゆく制服姿の中学生くらいの少年がいた。
少年にうながれて、老婦人は立ちあがった。
少年は老婦人の手をとって歩いている。
その光景がまるで絵画のような色彩でわたしの目に映った。
思わずわたしは、目を閉じた。
それからもういちど見たら、ふたりはもうそこにはいなかった。
色彩はいつも見ているカラーに、もどっていた。




