ふたりぼっちステージ 第8話
せっかく作ってギターも持ってきてるんだから早速付けてみようということで音楽室に向かって歩いているんだけど、早々に自分が作ったストラップが気になってきた。
「やっぱり叉音ちゃんってこういうセンスいいよねー」
「そう? 響のもいいと思うけど」
教室を出て交換してもらった叉音ちゃん製ストップは違う色を使っているのにまとまりがよくてオシャレだよなぁ、それに比べてわたしは同じ色でまとめるのばっかりに気を取られて全体のバランスとかそういうのを考えられなかった……
「響がわたしのこと考えて作ってくれたからうれしいよ、それに……」
「それに?」
「私、自分の目の色が好きで……ちゃんと見てくれてたのもうれしい」
ストラップを持った両手ではにかんだ口元を隠しながら感謝してくれた。
本人は意識していないんだろうけど、仕草も表情も今まで見てきた中で一番かわいらしくて、全身が熱くなると同時に胸がギューッと締め付けられるような感覚がした。
「大丈夫、顔赤いよ?」
「あっ、うん平気だよ」
まずい、顔まで赤くなってる。
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるから先行ってていいよ」
「ううん、待ってる」
急いでトイレに逃げ込んで鏡で自分の顔を確認したら完全に赤面しているほどではないけど頬が赤く染まっていた。
こりゃ心配されるよなぁ…
とりあえず個室にこもって赤みが引くのを待つ。
瞳の色は叉音ちゃんのことをちゃんと見ていたというよりも、たまたま気がついてなんとなくいいなと思っていただけなのに本人も好きだったなんて……
それにあんなかわいい喜びかたをされたら───
ここまで考えたところでまた顔が熱くなってきたから無理矢理考えるのをやめて、適当にスマホをいじりながら引くのを待ってから、カメラで確認して外に出た。
叉音ちゃんになんて言おう、心配してくれそうだけど「ただトイレに行きたかっただけ」で納得してもらえるかな?
浅知恵の言い訳を考えながらトイレを出ると、何やら数人の体操着姿の女子生徒が立っていて、叉音ちゃんは壁際に追い詰められるような形で取り囲まれていた。
上履きの色からすると二年生、ちょっと怖いけどこのまま遠巻きに見ている訳にもいかないから戦々恐々と様子を伺いに近づくと向こうも気がつき、振り向かれて目が合う。
「おっ、百合川」
見知った顔、わたしが参加を断って剣道場で呆然と見つめていた先輩たちとそのバンドメンバーだった。
道場と体育館のステージでは制服だったのを体操着に着替えているから後ろ姿で気がつかなかった。
「あの、どうしたんですか?」
「いやーこの子のギター凄かったじゃん、だからあたしらとバンドやらないかって誘ってたの」
それでこんな囲まれていたのか。
「あっ、ちゃんと百合川も誘おうと思ったからね」
そんな必死に”言い訳”みたいに言わなくてもいいのに……いや、そんなことよりもこの状況をどうにか乗り切らないと、と考えながら怯えた表情をしている叉音ちゃん目配せをすると首を横に振られた。
わたしをバンドに誘った時も先輩は結構強引で断るのに勇気が必要だった。それを叉音ちゃんがやるなんて難しいだろう、だからわたしがなんとかしないと…
「さっきからなにも喋ってくれなくてさ、百合川から──」
「あの、先輩」
「ん、なに?」
「水城さんもわたしも時間とか無いんでバンドは難しいと思うんです」
「いや、ほかにやることあるならそっちを優先していいよ。で、空いた時間でいいから一緒にやってくれたら助かるからさ、これなら大丈夫そうでしょ?」
ああ、ダメだ。
このままだとなし崩し的に参加させられる、バンドなんかわたしはともかく叉音ちゃんには絶対無理だ。
「あの!」
さっきよりも大きな声量で怒鳴るように答えてしまったせいで、ヘラヘラしていた先輩もその取り巻きも驚き、黙ってしまった。
「叉音ちゃん、わたし以外とはギター弾かないんです。だからえっと……バンドには入らないし、これから用事あるんで失礼します!」
目を合わせないようにしながら囲まれている叉音ちゃんの右手を掴んで引っ張り出し、一目散に音楽室を目指した。




