ふたりぼっちステージ 第7話
教室内には向かい合わせの机が二卓一島で計六島並べられ、そこでバレー部員に指導を受けながら各々ビーズアクセサリーを作っていた。
「ブレスレットと指輪とストラップがあるけど、どれにする?」
そう言いながら差し出された見本はたしかに海玲ちゃんが付けているのよりはシンプルだけど、どれもかわいくて目移りする。
「叉音ちゃんはどれがいいと思う?」
「指輪とかは学校に持って行けないからストラップにしようかな」
たしかに、ブレスレットと指輪だと学校に付けていけないか。
「そうだね、じゃあわたしもストラップにしよっかな」
「ねぇ、ふたりともストラップにするなら作ったのを最後に交換したら?」
わたしが叉音ちゃんのを作って叉音ちゃんはわたしのを作る、たしかに面白そう。
「わたしはそれでもいいけど叉音ちゃんはどう?」
参考のストラップを手に取って見ていた叉音ちゃんは視線をわたし、海玲ちゃんの順でゆっくり移してからうなずき「いいよ」と小さな声で答えてくれた。
海玲ちゃんは実にうれしそうな表情をしながら教室の奥に下がっていき、各種ビーズが入ったタッパーとビーズを入れる小皿にストラップの紐、はさみ等の道具をお盆に載せて持ってきてくれ、とりあえず好きなビーズを適当な長さになるまで紐に通して出来たらまた呼んで、と言って去って行った。
さて、あとは好きに作ってもいいんだろうけど、渡すんだから何に使うかを聞いておこう。
「ストラップってスマホに付けるの?」
「うーん……ギターバッグに付けようかな」
「いいねそれ、わたしもそうする」
何に付けるかも決まり、いよいよ製作に取りかかる。
叉音ちゃんには落ち着いた寒色系の色合いが似合いそうだからその色のビーズを使おうと思った所まではよかったけど、寒色系といっても色も形も大きさも種類がありすぎて目移りして全然選べないし、そもそもどんなのを作ればいいかのイメージすら浮かんでいなかった。
お母さんはこういうのが出来て、小さい頃に編み物だとかをやらされたけど全然身につかなかったんだよなぁ。
出来てのお楽しみにするためになるべく見ないようにしていたけど「参考程度にチラッとだけならいいか」と自分に言い聞かせて、何となくボヤッと視界に入る程度に目玉だけを動かして隣にいる叉音ちゃんの手元を見ると、小皿に一生懸命アルファベットのビーズを集めていた。
そういうのもあるのか。
「名前入れてくれるの?」
「バッグに付けるならその方がいいかなと思って」
「わたしも真似していい?」
「いいよ、お願い」
叉音ちゃんはビーズの入ったタッパーをわたしとの中間の位置に置いてくれ、一緒にアルファベットを探す。
えーとコマネだからKOMANEか、アルファベットビーズは白だから何にでも合いそうだ。
名前に必要な文字が集まったら次は飾りのビーズの色、寒色なら青系もいいけど今回は深緑色にすることにしよう。
こんな具合に色が決まったら使うビーズもすんなり決まって、宝石みたいにカットされたビーズを大小組み合わせる、ちょっと地味すぎる気もしたけど叉音ちゃんに使ってもらうなら派手派手しくするよりはこっちのほうがいいよね。
紐にビーズを通すのに失敗したり何回か飛ばしたり、普段やらない細かい作業のせいで目と肩が凝ったけど、どうにか形になった。
「わたしは大体出来たよー、叉音ちゃんはどんな感じ?」
「……ちょっと派手過ぎたかも」
少しばつが悪そう見せてくれたストップは赤緑黄色の淡い蛍光色をしたこんぺいとうみたいな星が”HIBIKU”の文字の両端に並んでいて、わたしのに比べれば派手かもしれないけど普段使いできるかわいいデザインだと思う。
「大丈夫だよ、逆にわたしのって地味すぎ?」
「ううん、ちょうどいいよ…なんでこの色なの?」
「あー……ほら、叉音ちゃんの目ってこんな感じの緑色だからそれに合わせよっかなーって」
「えっ!?……そ、そうなんだ」
何気なく言ったつもりだったのにすごく驚かれて、恥ずかしがられた。
「いや、そんなに驚かなくても」
「そんなの言われたの初めてだったから……」
たしかにほとんど黒に近い緑色だからよく見ないと気がつかないかもしれない、現にわたしもソファーで隣に座られてようやく気がついた訳だし。
恥ずかしそうにしている姿は正直かわいかったけど、おっかなびっくりさせたままなのもかわいそうだからなにか言いつくろった方がいいかと悩んでいたら、作り終えたのに気がついた海玲ちゃんがやって来て仕上げのやりかたを教えてくれた。
仕上げと言っても紐にビーズを通した状態だったのを輪っかにして、そこにビーズを通して固定するだけだったからあっという間に完成してしまった。
海玲ちゃんはもう少しわたしたちと話したそうにしていたけど、結構人気があるみたいで待っているお客さんが出始めていて、長居しても悪いから教室を後にした。




