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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第6章 ふたりぼっちステージ
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ふたりぼっちステージ 第1話

 そういえばこんな顔だったなぁ、という生徒会長と校長先生の話と共に開会式が終わっていよいよ学祭が始まった。

 わたしは体育館に残った生徒達と一緒にステージ上で始まったダンス部のダンスパフォーマンスを「凄いなー、あんなのどうやって踊ってるんだろう」と適当な感想を思い浮かべながらボーッと眺めていたけど───


(ひびく)?」


 突然右耳元で名前をささやかれ、びっくりしながら振り向くといつの間にか(こま)()ちゃんが隣にしゃがみ込んでいた。


「もう行こう」

「あー、そうだね」


 少し名残惜しかったから何度か振り向いてダンスを目に焼き付けながら、暗幕で仕切られた薄暗い体育館を後にして中庭に出ると生徒やその家族などが行き交い、早くも活気づいた雰囲気がしていた。

 



ウチの学校には体育館が二つあって、軽音楽等はさっきまで開会式をおこなっていた第一ではなく第二体育館のステージでやることになっていて、現にわたしが参加を断った軽音部の先輩方はそっちで演奏をする。

 だからてっきりわたしたちもそこを使うのかと思っていたのに、貰ったプログラムに名前が無いから驚きながら確認したら会場は体育館ではなくて剣道場になっていた。


 剣道場は演者、観客の人数が体育館を使うほどではないグループための舞台で、

高さ二十センチほどの教壇で申し訳程度のステージが作られ、そのすぐ目の前に椅子が並べて客席が作られている。


 体育館のステージで弾けないのは少し残念ではあったけど初舞台としてはちょうど良かったかもしれない。


 楽器は家から学校までは叉音ちゃんがお父さんにお願いしてくれたから車で早朝に運んで控え室になっている剣道部の部室に既に置いてきていてわたしと叉音ちゃんの出番は一番目、つまりトップバッターなのでさっさと向かわないといけない。


 それと、実は叉音ちゃんのお父さんには何日か前にわたし達のステージを見ていくのかを聞いたら『自分がいると叉音ちゃんが嫌がるだろうから代わりに動画で撮ってきて欲しい』と頼まれてしまった。それも本人には内緒で。

 動画自体は元々()(まり)()(れい)ちゃんに撮ってもらう約束をしていてそれをそのまま渡せばいいからオッケーをしたけど、喧嘩したとは言えやっぱり娘の初舞台が気になるんだなぁと少し感傷に浸ってしまった。



 中学の時のステージは二回とも二日目午後だったけど、今回は初日の初っぱな。


 なので朝からせわしなく動かないといけないのは大変だけど、裏を返せばここさえ乗り切れば後は憂いなく学祭を満喫できることになる、盛大に滑ってダメージを負わなければ……


「いきなり最初とはねぇ」

「ふたりだし、曲も曲だからね」


 愚痴ってるわたしに対して冷静に分析してくれるのはさすが叉音ちゃん。


 たしかにこのステージの後は三年の先輩のギターの弾き語りでその後は二年生の琴、つまりよくわからない曲を弾く一年生のわたしたちは”前座”ということになる。

 しかも剣道場を出て目と鼻の先に軽音部なんかの”目玉のバンド”がステージをやる第二体育館があり、そこに吸われているのか席は四分の一も埋まっていないまばらな状況で、見てくれる人が少ないのは残念だけど「この分なら失敗してもそこまで落ち込まなくて大丈夫だろう」と後ろ前向きに考えることにした。


  叉音ちゃんも陽葵と海玲ちゃん相手に演奏したときよりはだいぶ落ち着いていて頼もしかったのだけど、その様子を見ていたら今度はわたしがミスって失敗しないか無いか心配になってきて緊張してきた。


 落ち着けわたし、中学でライブは二回もやったし小学校じゃピアノコンクールでここより何倍も大きい場所で弾いたんだからこんな所で緊張するな。


 しかし緊張してしまったが最後、気にしないように意識すればするほど気になるドツボにハマってしまう。

 手のひらに「人」の字を書いて飲むあまりに古典的な方法にすがってみようかと考えた矢先───


「ひゃい!?」


 突然肩に何かがスッと触れる感触がして、声にならないような悲鳴を上げながら前に飛び退いてしまった。


「そんなびっくりしないでよ」


 この声と、後ろから人を驚かせておいて責任をおっ被せてくる知り合いは一人しかいない。


「驚かせといてわたしが悪いみたいに言わないでよ」


 体操着姿で頭にメイドカチューシャを付けた陽葵がこちらの驚きように引いたような顔をしながら立っていた。


「せっかく手伝いに来てあげたのに」


 たしかに陽葵はバンジョーとフィドルを舞台袖から持ってきて叉音ちゃんに交換してもらうためにここにいる、でもそれはわたしを後ろからいきなり驚かす理由にはならない。


 ただ、驚かされ怒りを覚えさせられたおかげで、ついさっきまで頭の中をグチャグチャにしていた緊張がどこかへ飛んで行ってしまっていた。


「まあいいや、そっちもお願いね」

「任された!」


 いつもの調子のニッコリ笑顔で親指を立てる姿にはある種の頼もしさを覚えた。

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