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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第5章 祭りの前が一番楽しい!
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祭りの前が一番楽しい! 最終話

「じゃあ……」


 隣に聞こえるか聞こえないか、ボソリとつぶやいたので叉音ちゃんに顔をのぞき込まれる。

 なので今度はにらみつけるようにしっかりと視線を合わせ、大声で宣言した。


「じゃあわたしと学祭のステージに出て、出ないなら絶交、友達やめる!」

「えっ!?」


 大声で言い放たれた叉音ちゃんは驚愕しているけど、この驚きはわたしの声量ではなく”脅迫”に対してだろう。

 でもしばらくそのまま固まっているとハッとした顔をして、今度はあきれたような顔をしてくれた。


「やっぱり響はやさしいね」

「えー、脅してるのに?」


 叉音ちゃんが出るか出ないかを決められないなら最初の時のようにわたしの方から無理言って出て貰ったことにすればいい、そうすれば叉音ちゃんは仕方なく出てくれるし、選択を迫った訳じゃ無いからわたしの方もつけ込んだ後悔を感じなくて済む、かなり無理矢理だけどこれなら自分でもどうにか納得できる。


「わかった、じゃあ出る。脅されちゃったから」


 叉音ちゃんの笑顔を久しぶりに見た気がして、安心感からソファーにドサッと座り込んで大きいため息が出た。


 最近は一緒にいると肩肘張るというか気を使うというか、どうしても気が休まらなかったからフッと肩の荷が降りて気が抜けた。


 特に再び出るのを断られたここ数日が疲れたけど、その前もなんだか様子が変で、そういえばいつからだったんだろうと記憶をたどってみると、たしか叉音ちゃんはわたしの中学の文化祭ステージの動画を見て「出たくない」と言っていたのを思い出した。


「叉音ちゃん、なんで出たくないって思っちゃったの?」

「響の中学校の時の動画を見て、いっぱい人がいて、地味とか知らない曲だって思われたらどうしようって思って……」


 その言葉にはなんだか妙にリアリティがあるように感じた。


 そういえば前は動画投稿をしていてコメントで荒らされたようなことを言っていたからその実体験なのかもしれない。


「陽葵と海玲ちゃんも上手だって褒めてくれてたし大丈夫、そんなこと思われないよ」

「そう…だね、そういえばあのふたりにお礼言い忘れちゃった」

「そうだった、わたしもお礼と学祭出るの言っとかないと」


 気を使って足早に帰って行ったからお礼どころか会話らしい会話も出来ずに帰ってしまったんだった。


 スマホでふたりに叉音ちゃんもお礼を言っている事と、無事一緒にステージに出ることになった事を伝えると、双方すぐに返信をくれた。


「おっ『よかったね、なんか手伝えることあったら言ってね』だって」

「私も学校でお礼、言っておくね」




 ようやくちゃんと叉音ちゃんときちんと和解でき、自分のアコギでキャノンボールラグの練習をして、その隣で叉音ちゃんが聴いてくれているいつもの時間が戻ってきたことにすっかり安心し、居心地の良さに浸っていた。

 だけど、なにか忘れている気がしていた。


 思い出せないなら大したことじゃないだろうと言い聞かせつつ、気になってしょうがないから思い出そうとしていると───


「あっ、そうだった!」


 その思い出した事柄はとんでもなく”大したこと”で、大急ぎでギターケースの中から用紙を取り出し、叉音ちゃんの眼前に突きつける。


「用紙用紙、申込用紙!」

「あぁ、そっか」


 危ない危ない、これの提出期限って今週中までなんだった。


「これってバンド名……じゃなくてグループ名書かないといけないんだよ」

「響は付けたいのある?」

「いやー全然思い浮かばなくて、そもそもこういうの苦手なんだよね、わたし」


 だから叉音ちゃん頼りで、是非になにかいいのを考え出してもらいたい。


「じゃ、じゃあ……『ブルーグラス・ブルーム』は?」

「えっ、すごくいいじゃん! 今考えたの?」

「ううん……前に動画投稿してた時のチャンネルの名前」

「そうなんだ、でもかわいくていいよ」


 叉音ちゃんってそういうセンスもあるんだ。うらやましいなぁ。


 と、それはともかく名前も決まった、それもとびきりいいのに。


「よーし、じゃあ名前も決まったし学祭までがんばろう!」

「うん」

「じゃあ気合い入れようよ、ほら『おー!』っていうのやろうよ」

「えー…」


 ちょっと嫌そうな顔をされたけど、これくらいは無理を言ってやってもらってもいいんじゃないかと思った。なにしろお祭り前なんだから


「ほらほらじゃあやるよ、せーの、おー!」

「おー…」


 弱々しく上げられた右腕と声だけど、本番でもこの腕でさっきみたいな演奏をしてくれると信じてるし、わたしも形式上とは言え脅迫して出てもらう以上はしっかりしないと、と責任感が芽生えてきた気がした。


 そしていよいよ学祭が迫って来る、その実感がいてもたってもいられないようなワクワク感と共に今さら湧き起こっていた。

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