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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第5章 祭りの前が一番楽しい!
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祭りの前が一番楽しい! 第11話

 見た目とは違ってわたしよりも体力がある叉音ちゃんでもさすがにあの往復は疲れたようで、身を投げるようにソファーに座り込んだので隣に座らせてもらった。


 そのせいで気まずそうな視線と雰囲気を送られているけど、わたしが先に座ったら絶対避けられると思ったからわざわざ後から隣に座った。

 それに学祭をどうするか決めるために今日こんなことをしたんだからそれを聞かずに帰ることはできない。


「……で、どうする?」

「……」


 沈黙───


 もう一度問いかけてみようかとも考えたけど、時間はまだあるんだし待つことにした。




 こうしてソファーにふたりで座っているのはいつものことだけど、さっきまでは陽葵と海玲ちゃんがいてにぎやかにしていたせいで余計に静けさが際立つ。


 もはや見慣れた景色だけど、ここに来るといつもワクワクしてしまう。


 陽葵が言ったように「秘密基地みたい」というのもあるけど、わたしにしてみればここは一緒におしゃべりをして、練習して、泊まったときは夜食をこっそり食べたりした叉音ちゃんとのふたりだけの空間で、まだ短いけどそんな楽しいことがたくさんあった場所だからだ。


 だからそこに陽葵と海玲ちゃんが少しの間でもいた方がなんだから不思議だった。


 そんな事を考えていたら叉音ちゃんが口を開いてくれた。


「響は出たいんだよね…」


 つぶやくように発せられた言葉はわたしへの問いかけだった。


「そうだけど、わたしは叉音ちゃんをみんなに自慢したいと思ってるだけだから」


 わたし自身は出たいけど、人前に出るのが苦手な叉音ちゃんを無理に自己満足に付き合わせたくないとも思っていた。


「それに学祭に出なくても一緒にギターは弾けるんだし、わたしの事は気にしないで叉音ちゃんがどうしたいかで決めて」


 かっこつけて言ってはいるけれども、本当は断られた時に自分が傷つかないようにするためにこんなことを言ったんだと思う。


「……言えない」


 イエスかノーか、二択の質問だと思っていたのに予想だにしていなかった第三の選択だった。それも灰色の。


「私のせいで響を振り回した。これじゃ中学校の時の先輩と一緒……ううん、それよりも酷いよ」


 そうだった、叉音ちゃんは中学の時に先輩に誘われてバンドメンバーになったのに向こうから一方的に「出なくていい」と言われて外されたんだった。


 学祭ステージに一緒に出たかったし、振り回されたのはたしかだし、断られたときにモヤモヤしたのは事実だ。

 それに、もっと大人数の前で演奏して、驚かせてやりたいという気持ちも残っているけど、二人の前で演奏をして驚かす事ができたからそれに関しては少しは晴れたと思う。


 叉音ちゃんは「一緒に出てちょうだい」とお願いすれば多分出てくれる、でもそれをやったらわたしはずっと叉音ちゃんの後ろめたさにつけ込んだ事を後悔することになる。

 かと言って「出なくてもいいよ」と言えば今度は叉音ちゃんが負い目を感じるだろう。


 ならわたしに出来ることはなんだろう?

 

 両膝の腕に握った拳を見ながら「叉音ちゃんを傷つけず、なるべくわたし自身も後悔しない」そんな方法をひたすら必死に考え続けた。

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