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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第5章 祭りの前が一番楽しい!
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祭りの前が一番楽しい! 第8話

 気まずさを振り払いながら叉音ちゃんに相談するとやっぱり最初はかなり渋られたけど「今回限りでやってみてそれでもダメそうなら学祭に出なくていい、とにかくわたしの気を晴らしたいから」と一生懸命伝えたら二回キャンセルした後ろ暗さも手伝ってくれたのかどうにか了承してくれた。


 ただ、条件があって学祭で練習していたのとは違う曲を演奏することになった。


 理由は教えてくれなかったけど、もしかしたら学祭を本番と考えていて、今回はその曲を聴かせたくないと考えてくれているのかもしれない、そう考えたらもしかしたら学祭も出てくれるような気がして少しうれしかった。




「うわでっか!!」


 陽葵への相談から四日が経った演奏披露当日のお昼過ぎ、水城家の門に対してひっくり返りそうなほど驚いている陽葵と、そこまでではないけど驚いている()(れい)

ちゃん。


「百合川さん、水城さんとそんなに仲良かったんだね」

「そうだよー、あたしにもちゃんと言ってくれればいいのに」


 陽葵に「もう一人くらい口が堅そうな知り合いを連れてきて欲しい」と頼んだら来たのが海玲ちゃんで、同じクラスとは言え典型的な優等生タイプだからいかにも陽キャ的な陽葵とは水と油だと思っていたから意外だった。


「私達バレー部仲間だから」

「そうそう、ウチのクラスだとバレー部海玲とあたしだけだから」

「そういえばそうだっけ」


 言われてみればそんな気がするけど、誰がどの部活をやってるかなんていちいち覚えてない。


「それよりも、水城さんがギター弾ける方が意外なんだけど!」


 鼻息荒く、わたしに近づいてくる陽葵と隣で力強くうなずく海玲ちゃん。

 わたし自身も最初はしっかり驚いたから当然の反応だろう、まあ演奏を聴いたらもっと驚くんだろうけど。


 ふたりが驚く様を想像しながらいつまでも虚空に笑みを浮かべていると気味悪がられるだろうから表情を切り替え、いつもの納屋へと案内する。

 ただ、防音室では四人が入るには狭いので、今日は扉を開けてすぐの土間の方で演奏することにしていたから昨日のうちに叉音ちゃんと綺麗に片付けておいた。




 重い木戸を陽葵と一緒に開けると既に叉音ちゃんが準備をしてくれていて、あとは演奏するだけの状態になっていた。


 叉音ちゃんとチューニングをして、その正面ではふたりが折りたたみ式のキャンプ用のベンチに座っている。


 わたしも中学の文化祭で弾いた経験はあるけど、聞き手とここまで近いのは初めてで、アコギの練習曲と簡単な伴奏を弾くとはいえ、期間が四日しかなかったから不安だった。


 でも、隣の叉音ちゃんは顔色がいつも以上に青白くて目も上下左右に泳いでいて、わたしの比じゃ無いくらいにテンパっている様子だった。

 よくお化け屋敷なんかに行ったときに「隣の人が怖がっているとかえって自分は冷静になる」と聞くけどそれと同じなのか、叉音ちゃんを見ていたら不安な気持ちが無くなっていって「助けてあげなきゃ」と思えてきた。


「叉音ちゃん、叉音ちゃん」


 小声で呼びかけながら人差し指で腰のあたりをつついたたけど気がつかれず、もう一度ぐりぐりと脇腹を突くとようやく青白い顔をこちらに向けてくれた。


 そのまま服の裾を引っ張って、陽葵と海玲ちゃんに背を向けてこっそりと手を繋いだ。

 いつも以上に青白い手はひんやり冷え切っていて驚いたけど、より一層力強く握りしめた。


「叉音ちゃんは上手なんだからいつも通りやれば大丈夫だよ、ふたりを驚かせよう」


 耳元でささやいたわたしの言葉を聞いた叉音ちゃんの顔がパッと明るくなったように感じ、手を握り返しながらうなずいてくれた。

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