夏祭りと三つの響き 第3話
翌日、モールに浴衣を買いに行ったけどピンとくる物があまりない上に、なぜかわたしにちょうどいいサイズの在庫が無いかメチャクチャ高い。
何か一つくらいはピンと来るのがあるだろうと、ギブアップしたお母さんを一人ベンチに残して探し回ったけど結局見つからず、時間も無いし歩き疲れたしで「これでいいや」と妥協して赤い花柄の浴衣になってしまった。
お母さんは「似合ってるじゃない」と言っているけど子供っぽすぎる気がして「せめて足元だけでも」と落ちついた色合いの下駄を買ったら、かえってトンチンカンな組み合わせになった気がした。
家に帰るとお母さんはさっさとお兄ちゃんの所に行く準備を始め、着付けはそれが終わった夜に教えてくれると言うから部屋に戻って一人で落ち込んでいた。
浴衣と下駄が入った買い物袋を見ていると、あそこで妥協しなきゃよかったと後悔の念に押しつぶされそうになる、かと言って今更返品して別のを探す時間は無いからもうどうしようもない。
買い物袋を見ないようにベッドに丸まりながら「現実を直視して諦めろ」と自分に言い聞かせていると、枕元に放り投げたスマホの着信音が鳴る、叉音ちゃんからだった。
こんな落ち込みきった状態で話をしたく無かったけど、無視するわけには行かないから気乗りしないまま出てしまった。
「……もしもし」
〈こんにちわ、もしかして寝てた?〉
寝転んだまま、全く覇気の無い声で出てしまったせいで勘違いさせてしまったようだ。
「大丈夫だよ、起きてた」
〈そっか、あのね、響が良かったらなんだけど、お祭りの後でウチに泊まりに来ない?〉
「えっ、いいの!?」
〈うん、ウチは大丈夫〉
「泊まる、泊まりたい! ちょっと聞いてくるから待ってて!」
スマホを枕に置いて、リビングに飛んで行ってスーツケースに荷物を詰め込んでいるお母さんの元に駆けつける。
「お母さん、明後日お祭り行った後で友達の家に泊まりに行っていい?」
「えぇ、なんでそんな急に言うの?」
「向こうはいいって言ってくれてるからいいでしょ?」
「それならいいけど、どこの家の子なの?」
「叉音……ええと、前に玉子あげてお米もらった水城さんの所で……後で教える!」
説明がまどろっこしいし了承は貰ったからとりあえず部屋に再び駆け戻ってスマホを手に取る。
「いいって、じゃあ泊まる準備もしておくね!」
〈よかった、じゃあまた明後日〉
「うん、またねー」
多分親が泊まりでいないから気を利かせてくれたのだろうけど、その誘いは夏休みに入って一番嬉しい出来事で、浴衣のことなんかもうどうでも良くなった現金なわたしはこれを着て夏祭りに行くのが楽しみでしょうがなくなっていた。




