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わたしをブルーに染め上げて  作者: かつをどり
第1章 ブルーグラス・ブルーム
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ブルーグラス・ブルーム 第2話

「水城さん、ちょっといい?」


 陽葵に横から話しかけられた「水城サン」は卓上のスマホを裏返してから右耳の有線イヤホンを外し、藍色のブックカバーのかかった文庫本に栞を挟んでこちらを少し振り向き、それでも視界に入らなかったのかジトッとした目を動かして、下が淡い黄色で上が黒のツートンカラーの太縁メガネ越しに見つめてきた。


 髪をポニーテールと言うには緩く邪魔にならない程度に短く束ねていて、小柄な背丈と丸っこい童顔なせいで中二くらいに見えた。

 真面目そう…というか人畜無害を絵に描いてそのまま出したようなおとなしそうな雰囲気で、色白の顔立ちは割と整っているように思えるけれど、不思議な色合いのメガネの方に意識がいってそちらはあまり印象に残らなそうだった。


「……何?」


 こちらが何も言わないのに痺れを切らしたようで、問いかけられると同時に陽葵から脇腹を肘でどつかれる。


「あっ、そうだ」


 わたしが言うんだった。


「隣のクラスの百合川なんだけど数学の教科書忘れちゃって、悪いんだけど水城さんの教科書貸してもらえないでしょうか?」


 水城さんは顔を上げたまま頭を下げ手を合わせるわたしを(いち)(べつ)し、視線を隣の陽葵に向ける。

 その意味するところは「お前は何だよ」か「お前が貸せよ」のいずれかもしくは両方と思われ、どうやら視線を浴びている当人もその意図を察したようだ。


「いや、あたしは今日は授業ないから持ってきてなくて、水城さん置き勉してるって前に聞いたから」


 さっきと言っていることが違うのは、流石に「ロッカー開けてるのを覗いてた」と言うのははばかられたからなのだろう。


「そっか、誰に?」

「えっ!? ……っと、誰だったかなぁ…覚えて無いや」


 どうにも『ちょうど教科書持ってそうだし借りようか』と言っていたのを見透かされているような気がして居心地が悪い。


「まあいいよ、ロッカーにあるからここで待ってて」


 と、もう片耳に付けていたイヤホンを外しながら立ち上がったので、ついて行こうとしたのだけど───


「”ここ”で待ってて」


 立ち止まって念を押されたので、大人しく待つことにした。


「なんか愛想悪いね」


 本人がいなくなったのをいいことに陽葵が耳打ちをしてくる。


「せっかく貸してくれるんだからそんなこと言うもんじゃ無いよ」

「じゃあ愛想いいと思う?」


 その質問はズルい。が、確かに初対面ではあるけれど警戒していると言うか意図的に壁を作られていて、引っ込み思案というよりも人間嫌いな雰囲気がした。


「はい」


 戻ってきた水城さんは教科書を手渡すと、さっきまでの読書を再開するでなく回れ右してそそくさと教室から出ていった。


「あっ、ありがとう、授業終わったら返すからー!」


 姿が見えなくなったところで感謝の言葉を思い出し、声を張り上げて伝えておいた。

 やはり避けられている気がした。


「借りられてよかったじゃん」

「まあ、そうだね」


 背中を叩きながら陽葵にそう言われ、たしかに借りられたのはいいけど何だかあの態度にはモヤモヤしたものを感じた。

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