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第77章 凛の目覚め――自分で選ぶ一歩

久しぶりに、ゼフィーリアの夢を見た。


結界を調整している夢だった。


張り替えの作業。言われた通りに、言われた場所を補強している。あの頃の私は、綻びの場所が分からなかった。どこを張り替えればいいのか分からないまま、それでもちゃんと出来てるつもりだった。


夢の中の私は、少し離れたところからその様子を見ている。


ほころびは、はっきり見えている。あそこだ、と分かるのに、作業しているもう一人の私はそこに触れていない。


なんで、分かんないんだろう。

あそこが綻びてるのに、それじゃあ全然足りてないのに。


自分のつっこみの声で、目が覚めた。


天井が目に入る。心臓が速いし、変な汗がにじんでいる。


しばらく動けなかった。


でも、さっき夢の中で見えていた場所を、今もまだはっきり覚えている。


多分、次にあっちに行ったら、綻びの場所が分かる。


体の奥が、じわっと熱くなる。何かがゆっくり巡っている感じがする。


前みたいに、無理やり引っ張られるような感覚じゃない。私の中に、ちゃんとある。


なんで今まで、こんな簡単なことに気づかなかったんだろう。


あの頃の私は、覚悟なんてなかった。ただ時間を取られてるって不満だけがあった。


中学生だったし、って思う。でも、それを理由にしてただけだったのかもしれない。


凛は布団の上で、小さく息を吐く。


でも、今度は逃げないで考えよう。


桜ちゃんや、お母さんに言われたからじゃない。


あの世界と、ちゃんと向き合わなきゃ。


――――――――――


凜は桜の部屋に入り、鏡の前に立った。


金曜日の夕方。桜がゼフィーリアから戻ってくる時間だ。部屋は静かで、鏡の表面には自分の姿が映っているだけだった。


試しに鏡に触れてみる。まだ、通れない。手のひらは冷たいままで、何も起こらなかった。


「……だよね」


まだ、私の番じゃない。


そう感じて、少しほっとする。あの世界は、まだ桜ちゃんを選んでる。


でも、次に交代の時期が来たら、そのときは逃げない。


できるだけ先であってほしいとは思ってるけど。


そのことだけは、きちんと桜ちゃんに伝えたかった。


凜は椅子に腰を下ろし、鏡を見つめたまま帰還を待つ。


やがて鏡の奥が揺れ、次の瞬間、桜が姿を現した。


「……凜ちゃん?」


桜は少し驚いた顔をする。


「どうしたの?」


凜は立ち上がった。


「ごめんね、突然。ちょっと、話があって」


「うん。何?」


凜は一度だけ息を整える。


「今日、鏡に触ってみて。でも、通れなかった」


桜の目が、わずかに揺れる。


「やっぱり、まだなんだなって」


少し間を置き、凜は続けた。


「でもね、分かったんだ。前はさ、結界の綻びが全然分からなかったの。どこ直せばいいのか分かんなくて、とりあえず言われたとこ触ってるだけでね」


桜は黙って聞いている。


「でも、今なら分かる気がする。もし今、ゼフィーリアに行ったら、どこに綻びがあるか、ちゃんと分かる気がする」


声が少しだけ強くなる。


「だから、交代の時期が来たら、大丈夫……だと思う」


すぐに言い直す。


「今すぐ行きたいわけじゃないよ。できれば、もう少し先がいい。正直、怖いし…」


それでも目は逸らさない。


「でもね、今度はちゃんとできると思う」


一度息を吸ってから続ける。


「お母さんにも話したんだ。ちゃんと考えてから話しなさいって言われてさ。それで、ちゃんと考えたから」


凜は桜をまっすぐに見る。


「だから、それを伝えに来たの」


桜はすぐに頷いた。


「そっか」


「ちゃんと考えたんだね」


凜の目がわずかに揺れる。


「ありがとう、凜ちゃん」


桜はホッとしたような笑みを浮かべた。

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