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tea break  作者: 龍門 
6/9

≪ 存在 ≫

あなたは・・・どこ?




 コンクリート。何度来ても、屋上への階段は壁で閉ざされていた。


 喜央が存在している事は分かった。けれども、どうやって会えば・・・。







「あっ、飛行機雲・・・・」

 空を見上げ、人が作り出した雲を見て子供みたいに呟いてしまった。


 虚無感・・・なのだろうか・・・?

 あまりにも早過ぎたのがいけなけなかったのか?


 でも、遅過ぎる方かもしれない。


 元々、咲隼秀里は頭の切れる奴だ。


 しょうがないと割り切る事も出来てしまう、自分が悲しい。


 壊れる。あの時俺が言った言葉は適切だっただろうか?

壊れるのではない・・・元に戻るだけなのだけれど・・・。


 また、空を見上げる。さっきの飛行機雲は消えてしまっており、青空が広がっている。


「こんなに、ここは・・・悲しい場所だったか・・・な?」







「会長さん。さようなら」


「さようなら」


 生徒会長にもなると、知らない生徒からも挨拶をされる。


 放課後。


 ふと、窓越しに、空を見た。


「あ・・・飛行機雲・・・」


 何だろう、この気持ちは・・・。


「屋上からは、もっと綺麗に見えるのだろうな・・・」


 目の奥が熱くなる。涙が溢れ出しそうだ。

 何でだろうか。会えないなら会えないで良いではないか。今までと変わらないではないか。


 その・・・筈なのに。何んでこんなに悲しいのだ。


「ぐっ・・・ひっぐ・・・」


 涙が・・・。


「屋上からの景色も・・・ここと大差変わらない」


 えっ?


「何で・・・泣いてるんだ?」


 私は振り返った。


「何んで・・・ここに?」


 立っていたのは・・・。


「喜央・・・京助・・・」


 唐突過ぎたのかもしれない。涙が、溢れる。


「な、なんで・・・ここに?」


 私が、涙混じりに言ったのが面白かったのか、喜央は笑った。


「笑うな・・・」


 私は急いで涙を拭い、目を擦った。


「泣いてる姿は初めてみたな」


 そう言いながら、喜央は黒板の前へ行った。


「最近・・・授業出てないから黒板が懐かしいか?」


 少し強張ったが、笑顔は作れた筈だ。

 けれど、喜央の顔は、笑ってなかった。


「・・・どうした?」


「懐かしい・・・・か」


 そう言い、喜央はこちらに振り返った。


「俺は、授業に何か・・・出た事ないよ」


 悲しそうに、そう言った。


「えっ?」


 私は言葉の意味を理解出来なかった。

 何かの冗談を言っていると思った。


「どう言う・・・意味・・・」


「俺は、あの屋上から出た事がないんだ」


 意味が・・・解らない。


「何だ・・・それ?面白くない冗談だぞ?」


 喜央は、悲しそうな顔をしている。


「でも!今お前、ここに居るではないか!?この・・・教室に・・・」


「まさか・・・出れるとは思わなかったけどな。試してみるものだな」


 笑顔を作っていたが、ぎこちなくて、直ぐ偽物だと判る。


「意味が解らない!だって、他の生徒はお前の事を知っていた!出た事がないのなら、知らない筈だ!」


 叫んだ。否定する様に。意味を知ってしまったら、喜央までも消えてしまう様で・・・。


「生徒や教師が知っているのは・・・俺が『喜央京助』で『不良もどき』で『サボりの常習犯』ってだけだ」


「だって・・・」


「他の生徒・・・教師には、俺の顔、声、住んで居る家なんか・・・知らない。いや、解らないんだ」


 意味が・・・解らない。


「俺は・・・」


 言うな!!!


 やめてくれ!!!


「俺は・・・存ざ・・・」


「やめろ!!!」


 叫んだ。言葉を遮る為に。言って欲しくない。知りたくない。認めない。


「咲隼・・・」


「言うな!何も言うな!言わなければ・・・言わなければ・・・」


 私が何を言おうとしているのか、喜央は気付いた様だ。


「もう・・・手遅れだ」


「手遅れなものか!まだ・・・まだ・・・遅く何か・・・ない・・」


 涙が・・・。私の全てが流れ出ている様だ。


「俺は・・・」


「やめろ!!!」


 遮ろうとした。けれども・・・。


「俺は存在しないんだ」


「いやああああああああ!!!!」





 消えた・・・。喜央が・・・私の目の前で・・・。


 簡単に、凄く簡単に。あっという間に、消えた。


「き・・・き・・きおぅ・・」


 私は、誰もいない夕暮れに包まれた教室で、泣いた。


 私の全てが・・・流れ出ている様な、もう全てが・・・悲しい・・・。


まとまってきた。やっと一息。


次ぐらいから話の核心がつかめると思うのですが・・・作者自身終わり方に悩んでいます。


どうしよう・・・。



えぇー次もよろしくおねがいします。

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