思い出す
ご覧いただきありがとうございます。
私の名前はローレッタ。
プラット男爵家の三女に生まれた。
私の家は広大な宙域を治めるテルース王国の中でも指折りのー。
それも辺境も辺境のさらに辺境地だった。
そんな王都からもすごく遠くて資源もなーんにもない田舎なものだから、ろくな産業があるはずがない。
プラット家の暮らしぶりはまるで貴族とは思えないくらい、超がつくほどとっても貧乏だった。
なにせあちこち壊れた屋敷を直すお金もなくて、半分くらい壊れていたくらいだから。
そんな家に生まれた私の上には年の近い二人の姉がいた。
姉達との仲はあまり良くなかった。きっと私の事を見下しているのだと思う。いつも虐められたから。
それに、親にもまったく期待されていなかった。見向きもされない。虐められていても助けてくれたことなんてない。そりゃそうだよね。
そんな私の存在価値?どうして生まれたのかって?
そんなのは決まってる。宇宙は危険がいっぱいだ。病気、放射線、その他もろもろ・・・。そして、戦争。
成人するまでは何があるか分からない。
もしも、大切な娘たちに何かあったらどうする?
そこで両親は考えた。
そう、スペアだ。身体の部品取りがあればいい。
そして生まれたのが私。それがローレッタがこの家で生きる意味。
だから、両親としては貴族としての勉強はとりあえずにという感じだった。私の幼少期は領地の友達と一緒に伸び伸びと育った。
あ、でも、読み書きと計算くらいはちゃんと勉強したよ。もちろん友達と一緒にね。
でもね。それも今となってはもう用済み。つい最近、姉たちは無事に成人を迎えたから。
そんな超貧乏貴族の三女だけど、私も一応は貴族の令嬢。
生まれた理由はそうだったとしても。その役割がなくなれば、また違う役割が与えられる。
だから、私は処分されなかった。
だから、私の存在価値はこう変化した。
よくあるパターンだよ。
家のため、親が見繕った相手と結婚して家を出て行く。
嫁ぎ先が決まらなければ、家のため、どこかに身売りされる。
そう理解していた。それが当然だと受け入れていた。
でもね。どうやらそれは違っていたみたい。
私が前世の記憶を思い出したのは13歳の時。
古くなった階段を踏み抜いて、あげく階下に転げ落ちてしまった。
それはもう盛大に、傍にいた当家唯一の侍女は私が間違いなく死んだと思ったって。
失礼しちゃう!ちゃんと生きてるよ!
そして。
「えぇぇぇ~~~!!」
気がついた私は自室のベッドから飛び起きた。
(急に動いたから痛いよ…。)
そして思い出した、私の前世を。
私が、かつて王国を恐怖のどん底に叩き込んだ撃墜女王。
今は亡きガイア帝国の人形使いマーリン=ロイスの生まれ変わりであることをね。
ここまでお読みいただき有り難うございました。
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