20 Let's have a party!
いつかは誤解も解けるだろうと甘く考え出口へと歩き始めた。帰りはだれも粉をかけてこなかったのですんなり出口まで行けた。世紀末覇者効果だろうか。
外に出ようとすると声を掛けられた。女性の二人組だ。
一人はとびっきりの美人。薄めの茶髪で肩より少し長め。しかも巨乳。彫りの深い北欧風の顔立ちで身長は170cm程だろうか、目線が俺と同じくらいだ。胸の割に細い体をしている。大きな青い瞳で目を逸らさず見つめて来る。童貞少年は思わず照れてしまう。
もう一人は160cm程の身長だろうか。顔は普通。残念なことに胸も残念で存在感が希薄だった。髪型も髪の色も顔立ちもなぜだか印象に残らない。認識阻害の魔法かアイテムでも使ってるんじゃないんだろうかと思わせる。
「先程登録なさっていたようですが、もし未だなら私達と一緒にパーティー組みませんか。」
丁寧な対応が心地よく、好感が持てた。そこで、話だけでも聞くことにした。現在の弱いレベルではパーティーは組まないとやっていけない。だから、願ったり叶ったりだ。でも、本当にこんなに弱い俺でも良いのだろうか。
「ギルド前のカフェで話を聞くけどどう?」
「オッケーよ。先に行ってて。未だ納品代金の受け取りが残ってるから。すぐに済むわ。」
ギルドを出て直ぐ東の交差点を渡ったところにカフェがある。来るときに帰りにお茶してから依頼を遂行しに行こうと考えていた。そう言えば、受付嬢のあまりのアレクシア振りにすっかり依頼を受けるのを忘れていた。
カフェは「森の妖精」と看板が出ていた。オープンカフェだ。入り口から一番遠い道路側の席に座った。
コーヒーを注文する。
二人が来る迄は手持無沙汰だ。することが無いから道行く人のステータスを見て時間を潰すことにした。
ほとんどの人はスキルを持っていない。時折通り過ぎる兵士を鑑定するとほぼ格闘系のスキルを持っている。
ただ、兵士とは確実に目が合う。髪が目立つせいだろうか。しかしとりわけ珍しい髪の色でもない。
そして必ず敬礼していく。
これはもう決まりだ。ターニャは軍部のお偉いさんか又はその娘かのどちらかだろう。
娘だったら仕事してなくても大丈夫だな。 お偉いさんだったら誰かが注意してくれてるだろう。
娘だったら貴族は確定だな。それなら嬉しいな。いい生活が出来る。家はどこにあるんだろうか。親は心配してないんだろうか。不思議だ。
入り口が開く音がする。見ると先程の女性が来たみたいだ。
「お待たせー、待った?」ようやく来たよ。しかし軽いなぁ。胸は重そうだけど。
「大丈夫。衛兵見てたから。」
「えー、イケメンの衛兵探してたんのかしら。」
誤解だから・・・
「じゃあ、自己紹介。ワタシから私の名前はアルベルティーヌ。長いからアルって呼んで。この娘はカテリーナ。キャスって呼んで。この娘とも今日初めて会ってパーティーに誘われたの。」
巨乳ちゃんは自己紹介を始めた。
「俺の名前はターニャ。」「「初めまして、ターニャ。」」
「ワタシはギルドランクFでレベルは8。キャスもFでレベルは7。あなたは?」
「俺はレベル1でギルドランクはGなんだけど大丈夫かな?」
「大丈夫。すぐにレベルは上がるわ。それで、明日から森へ狩りに行くんだけど予定は大丈夫?」
「問題ないよ、俺も明日から行くつもりだったから。これからでも良いよ。」
「今日はキャスがこれから予定があるらしいから。明日一緒に行動してパーティーとして上手く機能するようであれば正式にパーティー登録することにしましょう。では明日の九時にギルド集合という事で良いかしら。ところでターニャはどこに泊まってるの?」
「ホテルレハストンという所だよ。」
「えー、高いでしょ。いいとこ泊まってるんだ。」
「ちょっと色々あってね。あそこの会長と仲良くなったからタダで泊まらせてもらってるんだ。」
「いいわねぇ、遊びに行っていいかしら。」
「何時でも良いよ。大浴場もあるし。一緒に入ろうよ【大欲情だろ、この色魔!】うっ・・・」
「どしたの?」
「イエ、チョットミミナリガ・・・」
「じゃぁ、後で。キャスは明日ね。」
カフェを出て帰路に着く。辺りは既に夕方の自宅へと向かう人々や外食をしようとする人々でごった返している。それに加え、王都の城壁の外へと出ていた人々が夜の魔物を避けるために城壁の中に集まるお陰で人口密度を増加させる為、元の世界の大都会の喧騒を思わせる。
ホテルに着くと既にディナーの時間が始まっていた。ロビーはいつもの如く音楽が奏でられ暖かな雰囲気の中、緩やかな時間が流れていた。受付にはイサドさんの奥さんのアニックさんが立っていた。
「こんにちは、アニックさん。後で女性が尋ねて来ると思いますがよろしくお願いします。」
「はい。承知いたしました。お名前をお伺いいたしました後で内線で許可の確認を取ってお通しいたしますね。」
エレベーターで五階へ上がり部屋へ入る。部屋の中は掃除され綺麗に整えられていた。
窓を開け外を眺めると遠くまで良く見える。王城はここよりも高い位置にあるが真逆の北の方にあるので景色を遮るものが無い。既に日は沈み、街は暗闇が支配し始めていた。元の世界の夜景の様な光の渦は無くただ暗闇だけが渦巻いている。
そろそろご飯に行こうと考えた時にアルがやって来た。
「いらっしゃい、アル。仮初の我家へ。」
「何それ?」
「王都のどこかに俺のウチがあるみたいなんだよな。」
「何それ?記憶喪失?」
「みたいなもんかな」
「ねぇ、お腹空いたわ。ごはんに行きましょう。」
「そうだな。さっさと行ってさっさと食べよう。」
「さっさと?」
「だってほら、大浴場待ってるし。」
【待ってるのは大浴場だか大欲情だか分かったもんじゃない。】うるさい!
「じゃあ、ご飯行きましょう。勿論奢りよね。」
「えー、レベル1の駆け出し冒険者にたかるか?」
「だって、食事も会長持ちでしょ?」
「他の人の分は支払わないと。でもいいよ。今ちょっと潤ってるから、奢るよ。」
「じゃ、早く行こ。」アル、実はタカリ屋?
エレベーターで一階へ降りるとロビーへと出る。
ロビーは二台のバイオリンとビオラとチェロ、そしてコントラバスの演奏による音楽で溢れている。
ビバルディ―のウインターの様な吹雪を連想させるバイオリンの速いパッセージの音楽が演奏され始めた。ウインターは本当は歯ががちがちなる音を表現していると言う話もあるが俺には夏のストームの様に嵐を連想させるから寒くなる。
レストランに入ると今日はほぼ満席だった。
席に着くとドリンクの注文を聞きに来る。またお勧めのワインをお願いする。
「アルはどうする。」
「私はエールをおねがいするわ。」
ワインとエールが供された後はスープが供された。魚介類のスープでクラムチャウダーの様な味だ。元の世界と同じ味付けなのだろう違和感がなく、クリーミーで美味しい。
更に、魚介類のパスタが供される。種類が判らないキノコや香草、タコや、これも種類が判らないが貝が入っている。味はコンソメで付けた様な味だったがこれも元の世界と似た味付けで美味しく頂けた。
メインはまた巨大なホーンドレッドブルのステーキだ。ガーリックが乗りソースが掛けられていたが今日は塩と胡椒で食べてみたかった。
最後にはコーヒーが供される。いつものお楽しみだ。ただ、コーヒーは音楽聞きながらロビーで頂く事にした。
「音楽聞きながらコーヒー飲むって優雅だわ。タダだし。」
「アルってやっぱりケチ?」
「違うわ。ケチじゃないわ。それより早くお風呂に入って明日に備えないと。」
あー、夏休みが終わるまで後58日だよ。




